EP9
「うむ……だいたいの入り口の場所が分かるものは?」
ちょっと遠い目をしながら問いかける。
見渡すと、誰も知っていそうな人はいなさそうだ。
(まぁ、知らないもんは仕方ないよね。とりあえず、岩が邪魔だから片付けよう)
そうすれば見えてくるものもあるはずだと考える。
「では、まずは岩を除けるとしよう。昨日、説明した魔法で、地魔法を使える者はいるか?」
「俺です」「あっしです」
とワラワラ出てくる。
(多い多い多いって。えっと……1.2.3.4.5.6……8人……)
20人くらいいる中での約半数が地魔法使いだった。
まぁ、この作業は恐らく地魔法が活躍する場面なので、多いことは良いことだ。
「よし、では、まずは2人1組に分かれよ」
こういう現場の指揮はやったことないのだが、それとなく指揮してみる。
(慣れていないのを1人でやるよりは良いよね?こういう現場って、無能な指揮者こそいらねぇって話なんだけど……今は仕方ないから、危険などを避けて安全に行くしかない……)
ちょっと待つと、4組できあがる。
「これは魔法の訓練も兼ねてやろう。大きな岩はそのまま運ぶと大変だ。突起のある形のような破壊しやすい形にしてみよ。それ以外の者たちはそうなったものから破壊して運び出せ」
そう指示をする。
その後に分かる範囲で魔法の使い方を教えると、作業に入り始める
(ほんとは手伝いたいんだけどね、立場が上の者だからここで行くのはおかしいだろう。王国がこの状況で、ほんとは権力なんてどうでもいいんだけど……)
まぁ、これは流れに身を任せておくしかない。
(それに、僕にできることは火魔法で爆破させるか、空を飛んで運ぶくらい。前者は破片が飛び散ったら危ないし、後者はサイドベールは人が少なかったからパニックになっても伝染しないだろうけど、ここは人が多いから下手に翼生やしたり変身したりすると、パニックになってそれが伝染したら危険だからね……存在が危険人物は黙って見ておくしかないね)
そうして、分かる範囲で魔法のアドバイスをしつつ見ている。
皆初めての魔法なのに上手に使い、連携してすごい速度で岩は片付く。
「では、次に坑道の入り口の探索と、土砂の片付けだ。入り口は人2人分くらいの高さがあったはずだ。そのあたりを探してみよう。土砂がこれ以上降りてこないように少し上に軽い屋根のような仕切りを作って掘り進めよう」
そう指揮して作業を再開するが、すぐに問題が起こる。
「レオンハルト殿下!!ダメです!固まりますが、隙間が沢山空いてしまってすぐに壊れてしまいます!」
「ふむ……」
(そういえば、サイドベールの関所の壁の時もルークが似たようなことを言っていたな……今回の場合は小石とかが混じっちゃってか?)
理由はよく分からないが、探す作業には魔法は使えないということだろう。
「では、探すのは人の手で掘るしかないだろう。これは全員でやったほうが早い。なので、私も手伝おう。坑道の入り口を見つけ次第また指示する」
この世界ではダンジョン以外ならば、昼間と夜間のルールを守ってさえいれば魔法は使いたい放題だ。
だけれど、便利なものであって万能ではないのだ。
そして、ギセロスも僕も加わり、全員でシャベルなどで掘ると、すぐに硬いものにシャベルがカンッと当たる。
「……あった」
「殿下、こちらにもありました」
すぐ近くでほぼ同時に見つける。
少し掘り進めると、木の柱が見える。
坑道の入り口はこれだろう。
「よし。では次はこのあたりを重点的に固めよう」
「殿下、意見をするのを許して貰えますか?」
「許そう。なんだ?」
「このあたりを少し湿らせて、複数の層に分けて固めてみるのはいかがでしょう」
「ふむ……」
(何事も試してみるのはいいよね?それに、現地の人の意見だからね。やってみるのは全然良いと思う)
「よし、ではそうしてみよう。ギセロス殿、このあたりを水魔法で湿らせてくれないか?」
「承知しました。『ウォーター』」
そうして軽く水が流れていき、良い感じに湿っていく。
「では、あとはよろしく頼む」
そう言って離れると、作業が再開する。
良い感じに魔法でも土砂は固まり、固めたものも簡単に壊れることはなく、作業を進められ、坑道の入り口が姿を現す。
(すごいな……)
現地の民の経験に感動する。
「皆、これで坑道は開通した。皆の働きのおかげだ!助かったありがとう!」
そう言うと、一瞬シン……としたと思ったらうぉー!と全員が盛り上がる。
「では、ギセロス殿、兵士達を集めよう。中の安全を確認して、判断を下す」
「承知しました。呼びます。グレスト騎士団集結!!」
「「「はっ」」」
そう返事をして、集合する。
「坑道内の安全確認をする。各自、探索の準備をせよ」
「「「はっ!」」」
そう指示をすると、一度騎士団本部にもどり、安全装備を着てから坑道内に入っていく。
しばらく経つと、先頭の兵士が戻ってくる。
「殿下、中は安定していて崩壊の危険性はありません。危険生物などもおらず、ひとまずは安全と言えるでしょう」
「そうか。では、鉱石の類がまだ採掘できそうか判断してもらおう。炭鉱夫の方々をよび、念のため兵士も一緒に入っていってくれ」
「はっ」
それも、しばらく経つと、兵士が先頭に出てくる。
そして、数人の炭鉱夫が近寄ってくる。
「鉱石は何ら変わらず掘れそうでさぁ」
「そうか!」
「して、王太子殿下は武器を欲しているでんな?」
「そうだ」
「この鉱石から造れるんでな」
「そうなのか?では、お願いしてもいいか?」
「希望はありますかね?」
「うーん……普通のショートソードで頼む」
「承知でな!ただ今すぐとはいかん」
「なぜだ?素材が足りないのか?」
「そうでんな。ショートソードでもこの鉱石がもうちょっと必要さね」
「分かった。明日1日で足りるか?」
「十分でな!!」
「後、もう一つお願いしたいのがあるんだが……」
「なんでさ?」
「表面が鏡のような盾もお願いしたい」
「それはできるでさ……でもなんの為に作るんさね?」
「……色々あってな」
「深いところは分からねぇが承知したでな。それ含めて明日の夕暮れ時には渡せると思うでな!」
「助かる。分かった夕暮れ時にどこへ向えばいい?」
「領主館から近い工房さね!兵士に聞けば教えてもらえるとおもうでんな!ほな、儂はもう少し掘ってくるわ!」
そう言って数人の炭鉱夫を連れて再び採掘しにいった。
「すまない、彼らの護衛を頼んでもいいか?」
「分かりました。では行ってきます」
「あぁ。頼んだ」
近くにいた兵士に護衛を頼み、ギセロスに話しかける。
「ギセロス殿、というわけで、明日は道の復旧にも行こうか」
「いえ、殿下。十分助けてもらいました。道の復旧ならこの街にいる民で間に合うでしょう。殿下に苦労は掛けさせません」
「そうか。分かった」
「して、殿下、剣をしばらく握っていないのでは?私の宅にある、愚息が使っていた木刀と鍛錬場で久しぶりに感覚を思い出してはいかがでしょう?」
「良いのか?」
「はい。いくらでもお使いください」
「助かる。ではそうさせてもらおう」
「では、殿下、宅へ戻りましょう」
「あぁ」
ギセロスについていき、領主館にもどる。




