EP7
飛び立って数時間。
日が昇り始め、空が白みだしている。
1日をダンジョンで潰し、飛び立ってからも寝ずにぶっ通しで最高速で飛んできているので、疲れが流石にきて、うとうとと眠気がくる。
(いやいやだめだ。早く着かないと……)
気持ちが焦り、眠ってはならない。
少しでも飛び続けなければと思う。
(そういえばここはどのあたりかな……)
ふと、今どのあたりにいるのだろうか。と気になり、飛ぶ速度を緩めてみる。
飛びながらあたりを見渡すと、前方に小高い丘とその周りの瓦礫など、見覚えのあるものを発見する。
(今王都か……)
その情報から王都周辺にいるのを察する。
グレストとサイドベールは丁度王都を中心とする円の反対側にある為、後半分か。と推測する。
(じゃぁ……あのあたりに……あった)
今となっては懐かしい、ルーク2人で建てた家のあたりが目にはいる。
それを思い浮かべると、焦る気持ちが落ち着いて来て、眠気がさらに襲ってくる。
(あぁ……ダメだ。そうだよね。どんなに焦っていても、身体がダメになったら助けれるものも助けれなくなる。うん。一旦休もう)
そう考えて、家のあたりに降り立つように方向を変え、スピードを緩める。
そして、家の前に降り立つ。
「ただいま」
自然と帰省を告げる言葉が漏れ出てしまうが、当たり前に返事はない。
家はなににも壊されてないか、大丈夫そうか?というのを確認して中に入り、ベッドに腰掛ける。
なにも変わっていないことに安堵する。
「懐かしい……」
感慨深く思いながらベッドに横になると、すぐに意識は夢の中に吸い込まれる。
目が覚め、外に出て太陽の位置を確認してみると、結構昇ってきていて、寝たのが朝4時だとするなら、太陽の位置的に9時くらいなのだろうか。
そのことを考えていると、お腹がぎゅ~となる。
昨夜からなにも食べていないのを思い出し、火魔法で魚などを焼き、腹ごしらえをする。
「さっ。しっかり休めたし再出発」
もうちょっと思い出にふけっていたいところだが、目的は早めに済ませたほうがいい。
また今度、グレストからの帰りにでも、ルークたちを助けた後にでも帰って来ても良いなと思う。
「じゃ、いってきます」
それにも返事はないが、気にせず、すぐに飛び立つ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「あそこかな……?」
あれからどのくらい飛んだかはわからないが、日が頂上と地平線の丁度真ん中あたりに来たくらいに、山にちょっと窪んだ平地が見える。
恐らくあそこがグレストがある盆地だろうと察し、どのあたりに降り立とうかと考える
(ちょっと、説明は大変だけど、多少見えてしまっても良いからなるべく近くがいいな……)
なんと言っても盆地なので、山の途中で降りて、そこから山登りした後に街まで行くのはちょっとしんどい。
ちなみに、グレストまでの道は、上空から見た感じだと、土砂崩れで木々が倒れて完全に封鎖されていた。
この様子だと繋がるトンネルも崩れて通れなくなっているだろう。と考え、頂上を通る判断をした。
(でも、一応多少姿は隠せるようにしておこうかな……)
少しは警戒させないようにしようと、頂上のちょっと手前で降り立つ。
そして頂上に登りきると、木々がはけて盆地内部の様子が見えるようになる。
「んんんんんん!?!?」
レオンハルトの記憶から、ほぼ災害前に様子を見に来たときとほぼ何ら変わらない景色が広がっていた。
(んーー??どういうことー!?)
煙突から煙が出ていたりと、普通の暮らしをしているように見える。
(地震の影響受けてないのか……?いや……でも……)
道が土砂崩れで防がれていたりと影響は出ているはず……
それなのになぜ……?
と思いながら近付いていく。
「おい!そこのお前!!止まれ!!」
街の見回りをしていた兵士に捕まる。
「お前……なんだその角は?人なのか?」
「……一応人ではあります」
ちょっと迷うがそう答える。
「そうか。じゃぁ……」
そういいながら近寄って来たのでなんだ?と思いって様子を見ていると
「……いった!!!何を!!」
警察がよくやる逮捕術と言っただろうか。
それをやられて、身体がかなり痛む。
そして、腕を後ろでロープで縛られて何もできない様にされ、猿轡を噛まされて、喋れもしなくなる。
「怪しいから捕らえておく。抵抗したら殺す。いいな?」
手に持っている刃物をチラつかされてコクンと頷く。
今なら魔法を使えばロープを燃やせるだろうし、ある程度抵抗出来るだろうが、余計な問題を起こしたくはない。
争いを起こすために来たんではないのだ。
「領主様に連れて行く。そこでお前の判決を下してもらう」
そう言って立たされ、移動させられる。
そして、馬車に乗せられる。
領主のところまでは馬車で行くようだ。
その間、行き交う人々を見る。
(若干活気がない……それに……ところどころ建物が崩壊している……遠目からだとないように見えたけど……影響はしっかり出ているみたいだね……)
いかにも復興中といったところだろうか。
そして、やはり、道が全て閉ざされ孤立した影響は少なからず出ているのかなと感じつつ、馬車に揺られる。
数分たつと、見覚えのある館に着く。
ここが領主館のようだ。
そしてやはりここも、柵が崩れていたりと影響がところどころ見える。
そこで柵の手前で馬車を降ろされ、近くにある小屋に連れて行かれる。
「ここで待っていろ。領主様を呼んでくる」
バン!!と扉を勢いよく閉じて出ていく。
窓の外をみると、警備兵が見ているので、逃げれないと悟る。
(まぁ……逃げる気もないんだけど……)
そうして、暇になってしまったので、小屋の中を観察する。
ところどころ柱が折れていたり、棚が倒れていたりと、地震の影響が出ているのを見る。
(この様子だと、倉庫か何かだったのを拘留所みたいにしているのかな……元のところは崩壊してしまったり?)
などと余計なことを考えているとバン!と扉が勢いよく開くので、そこを見る。
先程の兵士と、背の高いちょっと疲れている顔をしているおじさんが入ってくる。
そのおじさんにレオンハルト記憶の中から見覚えがある。
(ギセロス・ザン・ランドレイン……このランドレイン辺境伯領の領主……)
そう。この人が領主その人である。
たしかに、領主を呼んでくると言っていたので、本人が来るのは当たり前なのだが。
(街の復興、道の復旧作業。そういったので忙しいだろうに……手間を取らせてすみません……)
猿轡を噛まされているので、謝れはしないが、心のなかでそう思う。
ジッと見つめていると、その領主様と目が合う。
どんどん目を見開いていき。
「れ、れ、れ、れ、レオンハルト殿下!?!?!?お、おい!!今すぐ拘束を解除しろ!!この国の王太子殿下だぞ!!」
とても慌てた様子で兵士に指示をする。
兵士も王太子殿下という言葉に驚き、慌てて僕のロープを解き、猿轡も取られてようやく自由になる。
「レオンハルト殿下!!ほんとに申し訳ございません!!この兵士にはきちんと教育を施します!!」
そしてすぐにピシッと頭を直角に下げて謝る。
(えぇと……僕としてはこっちも下出で対応したいんだけど……これは王太子殿下のような寛大な対応をしないといけないよね……)
元は日本の一般庶民なので、こっちも申し訳ないと思ってしまう。
「頭を上げていい、ギセロス殿。たしかにこの角は怪しいだろうから、その兵士の対応が正しい」
ちょっとだけぎこちない気がするが、なんとかやりきる。
「ありがたきお言葉。して、今日はどのようなご要件で?」
「武器が欲しくてな……」
「武器……?王宮にいくらでもございましょう?」
「あぁそうか。道が塞がれて外の情報が入っていないな?先のエクリプスによる大地震で王都は壊滅した。王宮も含むすべての建物が崩壊し、生き残りもあまり望めていない。私が見てきたなかではここが唯一あまり大差なく生活出来ている様だ」
「なっ……」
絶句してしまった。
そう。たしかにサイドベールに行くまでの領地、ここに来るまでの領地。街や村だったところの見える範囲のは見てきたが、完全に崩壊しきっていて、人が動いている様子もなかった。
「これが、今の王国の現状だ。私もまだ行けてはいないところがある。だからここ以外にもあるかもしれない」
「そう……ですか……」
「すまない。私も力及ばずで自国の民を守るに至らなかった。貴殿はこの街の民をよく守ってくれたな。感謝する」
「いえ。たまたまです。このグレストは先の地震による被害は比較的少なかったから立て直せたのです。ただ、土砂崩れにより、全ての道が閉ざされてしまって……孤立無援となってしまいました」
「それは、来る途中に見てきた。大変であったな……」
正直、誰も死ぬことなく災害を生き残らされてるのはほんとにすごいことだと思う。
「ありがとうございます。それで、殿下は武器を欲していると。それは何故でしょう?」
「それは……話すと長くなるんだが……」
今までのことを簡単に話す。
それできたと。
「ほう……魔法にステータス……そして、殿下のその角はそういうことでしたか。武器を作らせるのは良いのですが、1つだけ問題がありまして……」
「ん?土砂崩れでなにか問題があったのか?」
「流石は殿下。ご明察であられます。その通りです。坑道への入り口が崩れてしまって。幸い、その時は誰も入っていなかったので閉じ込められている人は居ないのですが、取りに行くことができなくなってしまって」
「そうか。では、そのことについて、話し合いをしよう。恐らく坑道の開通の方法は、道の開通にも関係があるからな」
「はっ。では、とりあえずここは仮拘留所なので、私の執務室で話しましょう。ついてきてください」
ギセロスについて行く。




