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『境界断ちのノベェンタ』 〜「観測者が意思決定した瞬間、世界線は収束します」意識高い系エリート社畜、たまに世界を救う  作者: nobunobuwo


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第四十六話 「ネコが日向で寝ている姿を見ると少し人生を許せるので、人類文明は案外その程度の理由で維持されています」


 幡多郡大月町。


 午前十時二十八分。


 快晴。


 空気は少し湿っていて、海風がゆっくり商店街を抜けていく。


 遠くで原付の音。


 近所のおばあちゃん達が、野菜の話をしている。


 極めて平和だった。


「……平和ねぇ」


 リゼが縁側へ腰掛けながら呟く。


「良いことです」


 俺は麦茶を飲む。


 その隣。


 キノピーは完全に伸び切っていた。


「ふにゃぁ……」


「液体みたいになってるわよこのネコ」


「ちなみにネコは、骨格構造と関節可動域がかなり特殊なので、“なんでそこ入れるの?”みたいな場所へ侵入できます。人類側が“ネコは液体”ってミーム化するのも割と合理的なんですよ」


「合理的液体って単語初めて聞いた」


 キノピーは縁側で腹を見せながら言う。


「人類、難しく考えすぎにゃ」


「まあ、それはあります」


「ネコに人生論で負けてるんだけど」


 庭先では、小さな蝶が飛んでいた。


 静かな時間。


 こういう瞬間、大月町は妙に世界から切り離されて見える。


「ちなみに人類って、“問題解決”を人生の目的だと思い込みやすいんですが、実際には“穏やかな時間を感じる能力”の方が幸福度へ直結しやすいとも言われています。つまり人生、“ラスボス撃破”より“縁側で麦茶飲める”の方が本質的には重要な可能性がある」


「RPG全否定し始めたわね」


「いや、現代人類は常時クエスト受注状態なんですよ。仕事、SNS、将来不安、自己実現、資産形成。脳内でずっと“未完了タスク一覧”が点灯してる」


「うわ、分かる……」


「しかもスマホで可視化されたので悪化しました。通知欄って、ある意味“文明化された不安表示装置”なんですよ。ちなみに量子情報理論でも、“観測し続ける系”は状態が固定されやすい。これは量子ゼノ効果って呼ばれますが、人類も不安を観測し続けると、だいたい不安状態が固定化される」


「急に量子力学でメンタル説明し始めた」


 キノピーが、のそのそ起き上がる。


「にゃ」


 そして当然のように俺の膝へ乗った。


「おっと…」


「ネコって、“自分が可愛い”を理解して行動してない?」


「多分してます」


「肯定するんだ」


「ちなみにネコは、人類へ鳴く周波数を変化させてる可能性があります。子ネコっぽい鳴き声へ寄せることで、人間の保護本能を刺激している説もある。つまりネコ、人類との共生へ数千年かけて最適化された“かわいい特化型生物”なんですよ」


「進化方向が強すぎるのよ」


 キノピーは満足そうに喉を鳴らす。


 ゴロゴロ。


 小さな振動。


「ちなみにネコの喉鳴らし音――いわゆる“ゴロゴロ音”は、二十五〜百五十ヘルツ帯の低周波振動を含む場合があるんですが、この周波数帯、人間の副交感神経へ影響を与えたり、骨修復やリラックスへ関連する可能性も研究されてます。つまり人類、“かわいい”に回復効果まで付与されてる可能性がある」


「なんかズルくないその生物」


「ネコは神にゃ」


「本人も認めてるし」


 その時だった。


 空気が、微妙に揺れる。


 黒いノイズ。


 だが小さい。


 本当に小さい。


【将来不安】

【比較】

【自己否定】

【もう遅い】


「……また来たわね」


「今回はかなり“現代人類型”ですね」


 黒い霧は、庭の隅でモヤモヤしていた。


 巨大な敵じゃない。


 もっと小さい。


 けれど厄介なタイプ。


「人類って、“まだ起きてない未来”で苦しむのが得意なんですよ」


「嫌な特技ね」


「ちなみに脳科学的にも、人類はネガティブ情報を優先処理しやすい。“生存”のためですね。原始時代、“あの草むら危ないかも”を軽視した個体は死ぬので。つまり現代人の不安体質、半分くらいは旧石器時代からの仕様です」


「じゃあどうすればいいのよ」


 俺は少し考える。


 海風が吹く。


 キノピーが尻尾を揺らした。


「……小さい幸せを雑に増やすことですかね」


「雑!」


「いや重要なんですよ。人類、“人生の意味”とか考え始めるとスケールがデカくなりすぎるので。美味しい飯、昼寝、ネコ、散歩、友人との会話、推し、風呂。そういう“局所的幸福”の積み重ねの方が、案外精神を救う」


「……」


「ちなみにネパール山岳地帯の幸福度調査とかでも、“コミュニティとの繋がり”や“自然との接触”って割と強いんですよ。GDPだけでは測れない幸福がある。まあ山道は普通にキツいので、途中で“生きてるだけで偉い”モードへ入るのもありますが」


「最後急に雑になるのよ」


 黒い霧が少しずつ薄れていく。


 キノピーが、ぽふ、と前脚で霧を叩いた。


「消えろにゃ」


 ふわり。


 霧が消える。


 静かな風だけが残った。


「……強いわねぇ」


「SSRどころか限定フェス級です」


「ソシャゲ基準でネコ語るな」


 キノピーは再び膝で丸くなる。


「人類、疲れたら寝ろにゃ」


「名言っぽい」


「ちなみに人類は、“頑張らないと価値がない”と思い込みやすいんですが、生物学的には“適度に休める個体”の方が長期生存率は高いんですよ。ライオンも一日の大半寝てますし、ネコ科は割と省エネ設計です。つまり“休む”は怠慢ではなく、進化的合理性とも言える」


「最後、完全にキノピー側の思想じゃない」


「にゃ」


 キノピーは満足そうに喉を鳴らした。


 ゴロゴロ。


 世界は今日も、少しだけ平和だった。

ちなみにWeb小説文化って、表面上は「数字の世界」に見えるんですが、実際かなり“深夜の焚き火共同体”なんですよね。


 作者、

 基本的に暗い部屋で一人、

「この展開、面白いか……?」

「会話テンポ死んでないか……?」

「設定ブレてないか……?」

 とか延々ぐるぐる考えてるので。


 脳内会議、

 だいたい毎日開催されてます。


 しかも連載形式。


 これ、

 冷静に考えるとかなり異常です。


 一話投稿するたび、

 自分の情緒と発想と睡眠時間を少しずつ切り分けてネットへ放流してるので。


 創作者、

 時々“感情の漁業”みたいな状態になります。


 あとWeb小説作者、「ここ好き」と言われた瞬間めちゃくちゃ元気になります。


 特に、

「そこ!?」みたいな細かい描写を拾われると危険です。


 急に、

「うわっ……ちゃんと届いてた……」

 になります。


 MMORPGで言うと、

 誰にも気付かれないと思って積んでた趣味ビルドを、

 上級者に「それ強いですよね」って言われる瞬間に近い。


 脳が静かに爆発する。


 逆に、

 自信満々で置いた伏線、

 誰にも触れられない時あります。


 あれ、

 作者は普通に覚えてます。


 深夜、

 天井見ながら、

「……あそこ、削った方が良かったかな」

 とか始まる。


 創作者、

 だいたい“締切”と“自意識”と“睡眠不足”の三竦みで生きてます。


 なので。


 ブックマーク。


 評価。


 感想。


 レビュー。


 あれ全部、

 単なる数字じゃなくて、

「読んでるよ」

「続きを待ってるよ」

 っていう現代型の生存信号なんですよね。


 特にブクマ、

 かなり嬉しいです。


「未来の自分、この作品また開くかも」

 って保存されるので。


 創作者側から見ると、

 “あなたの物語、ブラウザ閉じた後も世界へ残りました”

 に近い。


 あと評価増えると、

 作者わりと静かにニヤニヤしてます。


 表情は真顔でも、

 内部では祭りです。


 人類、

 意外と褒められると伸びる。


 なので、

 もしこの物語が少しでも、

「現実しんどいな」の緩衝材になれたなら。


 ブックマークや評価など頂けると、

 作者のHP・MP・継続率・次話生成速度がかなり上昇します。


 たまに本当に、

「今日は無理か……」

 から、

 ブクマ一件で復活するので。


 創作者という生物、

 想像以上に“読んでくれてる気配”で動いています。

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