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036 湯気とチラ見と謎の女~事件は浴場で起きてるんだ

 予告通りの温泉回ですが、期待はしないでくださいね? お色気シーンはありませんよ?

「立ち込める白い湯気、ほんのり桜色に染まる肌――」


「ぐっへっへ、姉ちゃんええ身体しとるのぅ」


「でしょ? これで旦那も悩殺イチコロよ」


「……そして、変態と痴女」


「まさに温泉って感じだね~」


「どこがよ!?」


 委員長の叫び声が湯気とともに空へ消えて行く。そう、私たちは現在温泉にやって来ていた。


「……ぶ~」


「あら? ネムネムちゃんどうしたの?」


「だって、反応がつまんないんだもん」


 この温泉、混浴なので全員が一緒に浸かっている。

 とは言っても、今回の依頼主の厚意で貸し切り状態。なので本来なら憚られるレームやドームも一緒に入っている。ドームに至っては身体が液体なのに大丈夫なのかと思ったが、色が温泉に溶け込むこともなく問題はないようだ。本人は若干溶けているように見えるけど……。


「当たり前でしょう? 私のこの身体は結局のところ作り物なのよ?」


「それはわかってるんだけど……」


 せっかく、下世話なおっさん風に絡んだのだからもう少し乗って欲しいというか。


「……さすがに男にやられたらカチンと来て灰にするところだけど、秘密を知っているあなたに言われてもどうとも思わないのが正直なところなのよね。そんなに、このやり取りをしたいのなら、ダブタチちゃんたちにしてみれば?」


 やれやれ。まったくわかってないな。

 言われ、委員長と大鳥さんに目をやった私は欧米風に首を振ってみる。


「二人とも凹凸おうとつが少なすぎてつまんない」


「ちょっと、それどういう意味よ!?」


 どういうって……そりゃあね? 視線を下げてごらん? すぐに理由はわかるから。


「凹凸なら、ネムネムだってないじゃん~」


 そりゃあ、今の私は幼女だから。これで凹凸がハッキリしてる方が怖いわ。あと、元の身体だったら二人よりは凹凸のハッキリしている身体つきだからね?


「何よりも色気がまったくない!!」


 凹凸云々言って来たが、結局のところここに不満は集約される。

 そもそもここワキツ王国の温泉には変わったルールがあって……入浴時は鎧着用なのだ。

 名産だからかなんだか知らないけど、何が楽しくそんなことをしているのか……。基本的に男性は下半身が隠れるように腰巻タイプの鎧。女性は軽い革製の鎧が支給されている。ちなみに私とキッドについては子ども用の胴体がすっぽり入るタイプの鎧だ。


 そんな中、遊び心のない二人は露出が少なく、色気もまったくないタイプ。対してフェニックスの姐さんは漫画やアニメといった世界でしか見かけないビキニアーマーを着用しているのだ!

 誰がどう見ても絡むとしたら後者でしょ!

 鎧の貸出所でも係員が凄い喜んでたし。……まあ、師匠に睨まれてすぐに引き攣った営業スマイルになってたけど。


「まあまあ、そうカリカリしなさんなって。お前もキッドを見習ってみたらどうだ?」


「キッドを~?」


「キャハハハッハ! すっげーお湯がこんなに!!」


「……ほら見ろ。子どもらしく純真に遊んでいるじゃないか」


「私は子どもじゃない!」


 一緒にすんな!


「それにしても革鎧とはいえ、鎧を着た状態でよくもまあ泳げるものね……」


「……まあ感心するのもわかるぜ。だけど、これがこの世界では当たり前だ」


「はいはい。またステータスのおかげ、ね」


 地球では服を着て泳ぐっていうのはそれだけで通常の何倍もの体力を消耗するけど、ここではステータスのおかげで見た目よりも力がある。特に子どもなら遊んでいる間は疲れを感じることも少ないだろうから尚更だろう。

 まっ、温泉からあがったら一気に疲れが出そうだけど。


「それに何より、これは祝勝会みたいなもんだろう? つまらんことに気を取られるよりも今はゆったりと温泉を満喫すればいい」


「まあね」


 大鳥さんの活躍によって大量生産された『残鉄剣』。それを持ったレームとその配下のアンデットたちは怒涛の勢いでリビングメイルを狩り尽くした。

 元々、レベルはレームたちの方が勝っていたことと対抗手段を手に入れたことにより形勢は一気にこちらに傾いた結果だ。もはやこの辺りにリビングメイルは存在しないと言っても過言ではないだろう。……実際には逃げ延びた奴がいたり、またすぐに発生するらしいから過言なのだが細かいことは言いっこなし!


「……今回の最大の功労者はなんと言っても大鳥さんだからね。私は大人しくしてますよー」


 所詮私は戦闘では一切役に立ってないからねー。


「なんだわかってるじゃないか。まっ、今回はオレも大鳥のアイデアに脱帽って感じだったぜ」


「えへへへっ、そんなに褒められると照れちゃうよ」


「謙遜しなくてもいいと思うわ。それだけ凄いことをやってのけたんだから」


「そうそう。もう大鳥さんもすっかりこの世界に染まったって感じたよ~」


「夢宮さん、言い方っ! ……でも、私も本当に驚いたわ。スキルの使い方はずっと考えてたの?」


「一応ね~。上手くいくかはわからなかったし、本当にそんな風に出来るのかもわからなかったけど……」


「やれやれ。これは大鳥さんに一歩先を行かれてしまったようね」


「おっ、委員長もやる気だね~」


「ふふっ、当たり前じゃない。私だけ足手纏いなんてごめんだわ」


 おおっ、いつになく饒舌だね!

 温泉でテンションが上がってるのか、それとも元々プライドが高かったのか。学校やクラスメートがいる場面では委員長として責任感のある行動しか見てないからなんだかちょっと嬉しいな。


「私だって負けないよ~。ダブタチが頑張る以上にどんどん先に行っちゃうんだから!」


「その意気や良し! 互いに高め合うのがライバルってもんよ!!」


「……熱血鬱陶しい」


「ちょ、おまっ!? 相変わらず口が悪いな!」


「ただでさえ、温泉で熱いんだから空気を読んでほしいだけで~す」


 一応師匠ってことにしてあげてるけど、敬うかどうかは私が決める!


「……はぁ。その口の悪さとノリの良さもネムネムらしさといえば納得してしまうオレがいるよ」


「ふふっ、会って数日なのにもうすっかり馴染んじゃったわね」


「良くも悪くもこいつらに染まっていってる気がするぜ……」


「……夢宮さんは強烈だから」


「えっ!? こいつらってことは委員長も含まれてるんだよ!」


 何を私は関係ないみたいに!


「えっ!? 嘘でしょ……?」


「ダブタチとネムネムはセットだからしょうがないよ~」


「「いや、大鳥さんもだから!」」


 ツッコミを入れたら、なんだか楽しくなってきた。

 知らず知らず誰から始まったか笑いが起き、温泉は笑いで包まれていく。


「「「アハハハハッ!」」」


 ……んっ? あれ? 今、何か違和感が……。


「……ねえ、笑い声多くなかった?」


「……夢宮さんにもそう聞こえた? 私も多かった気がするわ……」


「……子どもの声が聞こえた気がするよ」


「女性の声も聞こえた気がするわ」


「たしかに、フェリシア以外に落ち着いた感じの笑い声がしたな」


 子どもといえば、キッドだが……大人の女?

 今のこの場所には私たち以外はいないはずだけど……。


「も、もしかして……」


「やめて! その先は言わないでっ!」


 思い付いたまま口にしようとすると委員長が悲鳴を上げて遮る。その顔色は温泉に浸かったままなのに、赤みが引き青白くなっているように感じられる。


「……で、でも」


 つい最近まで偽物をやってた私だけど、いざ本物の出現の可能性を考えるとちょっと怖い。それでも勇気を振り絞ろうとしたところで無邪気な声が真実を伝える。


「すっげー!! 今のってレームとドーム!? 二体とも喋れるようになったの!!」


「「「……へっ?」」」


 おそらく相当まぬけな声が重なる。

 そうとは知らずにキッドは純粋にレームたちを褒め称えていた。


『カカッ……カッ――』


 それまでのように顎を鳴らして感情を表現しようとするレームだったが、今までのように小刻みに動かそうとして上手くいかないのか何度か噛み合わせを修正し……。


「……ます、たー?」


 苦労の末出たのはキレイな女性の声だった。


「まっま、ママっ!」


 ドームの方は幼さが残るもののレームよりはハッキリとした子どもの声。

 なるほど。キッドの言うように先程のは二体の声だったのだろう。……だが、そんなことよりも重要なことがある。


「レームって女だったの!?」


 まさに衝撃の事実だよ!

 言っておくけど、骨格を見ただけで一般人が男か女かなんてわかるわけないからね! 普段から骨格標本を見比べてる人とかじゃないと絶対に判断は無理!


「……はい。その通りですマスター」


 先程よりは流暢だが、元が無口なのか言葉は少な目だ。あと、真面目さのせいで固く聞こえる。まあ、マスター呼び云々も含めて徐々に直していけばいいか。


「……こいつぁ驚いた。すでに【人化】スキルの第一段階が終了したか。よっぽどお前の能力と相性がよかったんだな」


 師匠は素直に驚いたらしく、そんな感想を漏らしていた。

 なんでも姐さんは人語を理解していたし、師匠に至っては元人間だ。言葉を話せるようになるなんていう段階はすっ飛ばしていた二人だし、モンスターにスキルを教えるのだって初めての経験だった。だから、実際どういう風になるのかは行き当たりばったりだったらしい。


「なんじゃそりゃ」


 人騒がせな。


「何はともあれ、あとは徐々に姿を誤魔化す術を身につけるだけだ。こうなれば完成は目前だと思ってもいい」


 誤魔化したな。

 まあいいや。これで心置きなくレームたちとコミュニケーションが取れるしね!


「委員長もよかったね! どうやらおばけじゃなかったみたいよ?」


「……ええ、ええ。本当によかったわ……」


 とりあえず一見落着。

 いや~よかったよかった。


「…………あなた、ちょっと」


 だが、それで済まない人物が一人。


「……えっ? お、おいどうした!? 何をそんなに怒ってるんだよっ?」


 腕を取られ、強引に私たちの目の届かないところへ連れて行かれる師匠。

 一体どうしたんだろう?


『随分、さっきからレームの方を見ていたみたいね?』


『えっ!? そ、そりゃあ弟子の成長は嬉しいもんだろう?』


『忘れたのかしら? ここは温泉よ?』


『そんなことはわかってるが……』


『そして、レームはアンデットだからと鎧を着けてなかったの? ……お分かり?』


『!? ま、待て! あれは裸には入らんだろう!! 骨だけで皮もないのに欲情するか! い、いやっそうじゃなくて……!』


 衝立の向こうから聞こえてくる詰問と言い訳の応酬。

 ……内容はまんま浮気を咎められる男女の図だ。


「はぁ~平和だなぁ」


 のんびり温泉に身を委ねているとどこからか男の悲鳴が聞こえた気がした。まあ、空耳だろうね。

 月曜日には8割方完成していたのですが、いろいろあって投稿が遅れました。

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