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035 ざんてつけん~詰まらないモノを斬る

「やぁああああ!」


「どうだ!?」


「斬った……ように見えたけど」


「……ここで『やったか?』とは聞いちゃダメだよね?」


「フラグ的にはな。だが、見てみろ。どうやら上手くいったようだぞ?」


 それまでなんとか逃れようともがいていた鎧がまさに糸の切れた人形のように力なく崩れ落ち、ガラガラと音を立てて動かなくなっていた。


「凄い! 成功だ!!」


「ふぃ~。なんとかなってよかった~」


「やったのね! 凄いわ。大鳥さん!」


「……こりゃまた、なんとも言えねえな」


「まあ、上手くいきはしたんだけど、それでも一回で剣はダメにしちゃった……」


 照れくさそうに笑う大鳥さんはそう言って手元の剣をこちらに見せてくる。その剣は元からボロかったけど、今では刀身が役目を果たしたかのように輝きを失っていた。


「『残鉄剣』は上手くいくと思ったんだけどなぁ」


 そう語る表情はどこか悲しげだ。


「……おそらくその剣の質、それに鎧の材料が鉄だけじゃなかったこと。あとは込めた魔力が関係して耐え切れなかったんだろうな」


「対抗手段としては有効だけど、毎度毎度一体ずつを倒せるとは限らないから改良が必要かな?」


 試し斬りということで手足はレームたちが落とし、本体はドームが押さえつけてた。本来の戦闘ではそんな暇はないだろうから、一回で使用不能になるんだったら数を用意する必要がありそう。


「まあ、それについてはこいつのレベルが上がれば解決されるんじゃないか? あるいは、もっと質の良い剣だったらそもそもボロボロにならねえかもな」


「……なんでも一回じゃ上手くはいかないってことか」


「そういうこった」


「まあまあ、いいじゃない? とりあえず大鳥さんの力の検証という実験は成功したんだから」


「だよね! それは喜ぶべきところだよね!」


「すっげー花姉ちゃんすっげー! おれも花姉ちゃんの剣を使って強く成りてぇ!!」


「でしょ~。こりゃ私もそれなりの屋号を名乗ってもいいかもね。肩書きとしては鍛冶師の花ちゃんってところかな?」


「ただ鍛冶師っていうよりは鍛冶師スミスの方がカッコ良くない?」


「たしかに! ネムネム冴えてる~!」


「いやぁ……それほどだよ!」


 楽しい!

 こんなに楽しいのはこの世界に来てから初めてかも。なんだかんだで今、異世界を満喫してる気がする!


「ほいほい。楽しいのはわかったが浮かれるのは隠れ家に帰ってからにするぞ~」


「「「は~い、先生」」」


「誰が先生か! オレはお前らの引率を引き受けたつもりはねえ!!」


「キャハハハ!」


 たっのし~!



「『ざんてつけん』?」


 あの有名な? こんにゃく以外はなんでも斬っちゃうていう?


「そう。『残鉄剣』! そういう名前にしたら、上手くいきそうな気がする!」


 そりゃあ、なんでも斬っちゃうんだから上手くいくだろうけど、そんな凄い剣をすぐに作れるモノなのかな?

 この時の私は、聞いたことのある名称から勝手に斬鉄剣だと思ってた。まあ、よくよく聞いてみると鉄だけを残して斬る剣で『残鉄剣』だったわけだけど。


「ほら、地球のことわざで『名は体を表す』っていうのがあるでしょ? あれをヒントに私のスキル【名付け】について考えてみたの」


「それで斬鉄剣……?」


 たしかに色々と斬れそう!


「面白いアイデアだ。やってみる価値はあるかもしれん。ただ、成功するかどうかはおそらくお前の力次第だ。……今のレベルはいくつだっけか?」


「ええっとね、ちょっと待って……ステータス」


ハナ・オオトリ

ジョブ:巻き込まれし者・命名師・眷属

レベル:10

スキル:【名付け】


「今はレベル10だね」


「……それならいけそうだな。オレ……というよりはイカレ小僧とそのお仲間の見解だが、能力は五の倍数を境にして段階的に強くなっていると考えている」


「じゃあ、大鳥さんは二段階強くなった能力を使えるってこと?」


「そうじゃない。大体レベル5までが一段階と考えるんだ。レベルが上がることでステータスや肉体は強化されるが、それがスキルに当てはまるのがそれぐらいだと思えばいい。いわば一つの壁だ」


「ちなみにその壁を超える度にレベルが上がり難くなるようよ。この世界の住人にとってはレベルというのは元々上がり難いものだから実感がわき難いけど、私たちよりもレベルの上がりやすいあなたたちなら感じられるかもしれないわね」


「……ほほぅ。さすがは姐さん」


 旦那のフォローはバッチシだね!


「もうっ、姐さんは止めてって言ってるでしょ? 私を呼ぶならフェリシアか奥方って呼んで♪」


 はは……どんな時でもイチャつく姿勢を忘れないのは尊敬に値します。いや、マジで。


「まあ何はともあれ力は強くなっているんだ。今まで出来なかったことに挑戦してみるいい機会かもしれんぞ? お前たちもレベルの壁に到達したら何か出来ないか試してみるといい。ただし、常に新しいことが出来るようになっているとは限らないからな?」


「は~い」


「わかりました」


「よし! それじゃあ早速……そう言えば何か必要な物があったりするか? 剣はとりあえず戦場から拾って来たのがあるが……」


「……う~んと、どうだろう?」


「私たちの名前を変えた時はただ名前を言っただけだったわよね?」


「あの時は無意識だったし……。そう考えると私の能力っていまいち使い方がわからないんだよね」


 何はともあれ、実践あるのみ。

 とりあえずやれることをやってみよう!


「すーはー……あなたの名前は今日から『残鉄剣』だよ!」


「…………」


「…………」


「……どうだった?」


 成功?それとも失敗?


「……ダメっぽい~」


 大鳥さん曰く、私たちの名前を変えた時みたいに疲労感が襲って来ないのだとか。


「……おそらく、イメージの問題だろうな。こいつらの時はお前がこいつらだと確信できるあだ名だったからすんなり上手くいったんだろう」


「おっ、なんか師匠っぽい」


「茶化すな。そして、一応は師匠だ」


 自分でも一応とか言っちゃってるじゃん。


「お前にとってこの剣はどういうものか。それを明確にイメージ出来れば上手くいくんじゃないか?」


「うう~ん……イメージかぁ。言われてもピンとこない~」


「……剣なんて馴染みもないものだからねー」


 現代日本の平和ボケした日本人を舐めるなよ? ファンタジー世界に放り込まれてすぐに順応するのは小説やアニメのどっか頭のイカれた主人公たちだけだ!


「剣は剣だもん。『この剣は残鉄剣』って言い続けたら、いいのかな?」


「その場合、時間がかかりそうね……」


「う~ん、じゃあどうしよう?」


 悩む大鳥さんと委員長を尻目に私は難しく考え過ぎなんじゃないかと思っていた。

 なまじ異世界、それもステータスやら不可思議な現象がある中で突如芽生えた特殊能力。その先入観に引き摺られている気がしてならないのだ。


「そんなに悩まなくても、簡単でしょ?」


「「「えっ?」」」


 だから、私は皆が驚いたことの方に驚いたよ。



「ひぃ~あと何本作ればいいの~」


 隠れ家に戻った大鳥さんは悲鳴を上げながら、残鉄剣の使い製作を行っていた。

 手伝ってあげたいけど、私に【名付け】スキルはないの。だから応援することしか出来ないけど、頑張って!


「いやいや、剣を渡すとか出来ることはあるだろう!?」


「はぁっ!? 何言っちゃってんの、この鳥頭!」


 身体が鳥だと頭まで鳥になっちゃうの?


「私は今、幼女なの! 幼女が剣なんて重たいモノ持てるわけないでしょ!」


「常識に囚われるな! 今のお前のステータスなら、この世界の成人男性の平均ぐらいの力はあるわ!」


「……チッ」


 せっかく私なんにも出来ない小さな子供なの~でサボろうと思ってたのに!


「まあまあ、二人とも落ち着いて……。夢宮さんもこれはあなたのアイデアなんだから少しは手伝っても罰は当たらないわよ」


「委員長は真面目だなぁ」


 しょうがない。たしかに、私の画期的なアイデアのおかげで成功した作品だし、いっちょ、ひと肌脱ぎますか! ……幼女が脱ぐとかロリコンにはたまらん展開ですな!


「……それにしてもこんな単純な方法で上手くいくとは」


「シンプル・イズ・ベストってことさ!」


 アイデアと言ったって至って簡単なもの。剣に名前を書いただけだもん。

 小学校とか保育園とかで持ち物に名前を書いて自分の物ってわかるようにするじゃん? あれとおんなじで名前を言いながら、書けばすんなりいくんじゃないかなって思ったわけさ。

 そしてこれがもうドンピシャ!


「我ながら天才とは恐ろしい……!」


「……発想の転換をここまで鼻高々に自慢するのはお前ぐらいだよ」


「ふっ、その程度のことも思いつかなかった凡人が負け犬の遠吠えをしておるわ」


「てめっ……!」


「「はいはい、それまで」」


「あなたも――」


「夢宮さんも――」


「「いい加減にしなさい!」」


「「……はぃ」」


 怒られちゃった。

 やっぱり、どっちもおかん属性だから怖いわ。


「ほらほら、剣はまだまだあるぞ! 書けるだけ書いちまえ!」


「うわぁあああん!!」


「うわっ、八つ当たりだ!」


「そうじゃねえ! 一本目の時と比べて明らかに疲れが見えないだろう? おそらく、一度使った名前だったら、消費するエネルギーが少ないんだ。だったら、経験を積んで質を上げるためにも量をこなすに限る。幸いにもこの辺りには剣は腐るほどあるからな!」


「ほいほい。そういうことにしときましょうかね……おや?」


「どうかした?」


「大鳥さん、これ字が間違ってるよ?」


「嘘ぉ!?」


「いや、本当。ほら、『ざん』の字が斬るじゃなくて残るになってるよ?」


「な~んだ。なら、それであってるよ?」


「ええっ!? 斬鉄剣じゃなくて残鉄剣だったの!!」


「そだよ~。鎧の中身が空っぽの相手だから、鎧の中身を斬る剣ってことで鎧だけを残すようにしてんだよ~」


「……というか、一回目の時に説明しただろ?」


「聞いてなかったわね」


「……まったく」


 こいつぁ驚いた!

 一応次回でワキツ王国の依頼は完了予定です。任務達成のご褒美という形で名物の温泉に行きますので、幼女ネムネムの入浴シーンがありますよ!ロリコンの方は捕まらない程度に期待してください。

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