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033 ひと狩り行こうぜ~モンじゃないよ

久し振りの本編です。

「喜べ! お前ら向きのいい仕事を持ってきたぞ!」


「うぇぇ……」


 師匠こと私の先輩勇者からの提案に私は嫌そうな声を出す。

 なんて言ったってこの人……鳥?は思っていた以上にスパルタなのだ。それも夫婦揃ってね。

 弟子認定されてから数日、レベルが上がりやすいと言っても異常なほどにレベルが上がったのだ。


「ネムネム~、お、おれ、もう嫌だよ~!」


 見ろ!

 過酷な修業に付き合わされた憐れな一般人は涙目じゃないか!


「おいおい、泣き言を言うなよ! 結構レベルも上がったろ? そろそろステップアップするタイミングだと思ったわけだよ」


「さすがね。弟子思いの素晴らしいアイデアだわ」


「ネムネムだってさあ、お前の能力を生かすためにはもっと頑張んないと無理だろ?」


「うぐっ!」


 そう言われるとそりゃあ……。

 私自身には戦う力がない。つまり、私が強くなるためにはレームやドーム、それにキッドに頑張ってもらうしかない。委員長の力だって戦闘に向いていない。なので、大鳥さんにもスキルで経験値を渡してはいるから今では私のレベルが異世界人の中では一番低くなっている。

 そうなると多少は無茶でも実入りを多くするしかなくなる。


「……諦めなさい。文句を言っても無駄なことはこの数日で嫌というほどわかったでしょう?」


「泣き寝入りするのは嫌!」


「ひねくれ者だね~」


「もういいか?」


「いいわよっ!」


 もうっ、さっさと始めなさいよ!!


「ネムネムはぷりぷりしがちだな……」


 あんたがネムネムって呼ぶのもイライラの原因なんだよ!

 人が嫌がってんのを知ってて面白おかしく用もないのに呼んだりするんだから……。


「それにこれは必要なことだ。お前のスキルを把握するためにはな」


「……? どういうこと?」


 私のスキルなんて今更言わなくてもわかってるじゃん。


「……考えてなかったのか。いいか? 例えばだが、お前がもしも間違って敵に経験値を与えてしまったとする」


「そんなことせんわ!」


 失礼な。私はそこまでドジッ娘属性はない!


「……やりそう」


「うん、やりそう」


「ちょっ!?」


 酷くない!?


「……まあ聞け。相手がモンスターならばそのまま眷属に出来るかもしれん。だが、これが人間だったら? お前に好意的になっても、感情を優先するかもしれんだろう?」


「ぶっつけ本番になる前に試しておけってこと?」


「そういうこった」


 まったく。しょうがない乗せられてやるか。


「そうと決まったら、即時行動開始!」


 突撃ぃーー!


「待ちなさい」


「ぐえっ!?」


「……まったく。まだ目的地も聞いてないのに、どこに行こうっていうのよ」


「カッカッカ、丸っきり手のかかる娘と母親だな!」


「もう、ネムネムはしょうがないなぁ」


「いいわねぇ。そろそろ私たちも子どもを作っちゃおうかしら?」


 散々だ!

 あと、最後の一人は少しは気にして!


「……ごほん。まあ、やる気になったのはいいことだ」


「今更、恥ずかしがらなくてもいいよ」


 こっちがどれだけあんたらのイチャつきっぷりを見せつけられたと思ってんの?そんなことを考えていたら、ゴツンと硬い拳が頭に振り下された。


「~~~」


「余計なことを言うから……」


「コントはこれまでだ! そろそろ目的地について発表するぞ!」


「「は~い」」


「……はぃ」


 くっそ~覚えてろよ!


「目的地は勇者や魔王に狙われにくい場所を選んでおいた……地名を言ってもわからんだろうが、ワキツ王国という場所だ」


 勇者や魔王に狙われにくい場所というと、大国ではなく辺境過ぎもしない場所。

 言い換えれば大した特徴もなく、襲うメリットも守るメリットもない場所ということになる。そういう場所は観光名所も美味しい名物もないからあんまり行きたくはないんだけどなぁ。……別に観光に行くわけじゃないけど、モチベーションは大事!


「国の名産としては武器と温泉だ!」


「温泉!?」


「……へぇ、意外ね。温泉だったらある程度の観光名所になりそうじゃない?」


 委員長がどうして襲われないの?と疑問を呈するのも無理はない。修業という名目のモンスター退治で結構いろんなところに出かけたけど、どこも見応えなかったから。


「温泉にありがたみを感じるのは日本人だからだよ。この世界の人間は湯治なんて概念はあまりないし、外で熱い湯に浸かりたがるのは旅人ぐらいだ。地元じゃ何がいいのかわからんからほぼ放置されてるぐらいだぞ?」


「それって名産として成立してる?」


「どちらかというと名産なのは温泉を利用した食い物の方だからな……」


 そっちもどうやら物珍しさの方が勝つらしく、味はイマイチと。


「もう一つの名産である武器も職人が多い割に材料がなかなか手に入らないからな。ハッキリ言って質は悪い。大国の一般兵の方がそこらの武器屋で売ってる物より上等なのを持ってるさ」


「そのおかげで武器を作るのが許されてるんだからまあいいんじゃない?」


「……だが、武器を作れるのならと自衛を他国に頼れないのが痛いところだ」


「ああ~だから私たちが行くんだ」


「そういうこった。たまにこうして外に実力者を募るってわけだ」


「ちょっと待って! 地元の人が手に負えなくなったような敵がいるってことでしょ? そんなの私たちだけで大丈夫なの?」


「安心しろ。ちゃんとオレたちも一緒に行くし、手に負えないって言っても一般人が武器を振り回してるレベルだ。それならお前らの方が確実に強い」


「……ならいいけど」


「不安なのはわかるけど、なんとかなるって!」


 レームとドームも強くなったし、大船に乗ったつもりで行こうよ。実際に乗るのは大きな火の鳥だけどね!

 ……キッド? あれはまあ私たちと同じで足を引っ張らないように頑張りましょってことで。


「それで~どんなモンスターを退治するの?」


「そうだな……レームみたいなモンスターかな」


「終わったーーー!!」


 レームクラスの奴と戦って私たちが勝てるわけないじゃん!

 こっちは戦闘のせの字も知らないような美少女たちよ? そこんとこわかってる?


「落ち着けっ、レームみたいって言うのは種族が似てるってことだ!」


「な~んだ」


 ならよし。なんとかなる。


「こいつは……!」


「すいません! 夢宮さんにも悪気は……あるかもしれないですけど、無意識なんです!」


「……委員長、それフォローになってないよ?」


 私だって傷つくんだからねっ!


「……いや、もういいわ。とりあえず話を進めるぞ。お前たちに退治してもらいたいモンスターの名はリビングメイルだ」


「「「リビングメイル?」」」


「家の中にいるの?」


「……台所? ゴキブリみたいね」


「メイルってどういう意味だっけ?」


「……お前ら向こうでRPGとかやんなかったのか?」


「やったけど、そんなの出て来たっけ?」


「……男女格差か」


 そんな大層なもんじゃないと思う。

 そもそも一般常識のようにゲームの知識を語るのが間違ってんだと思う。


「簡単に言えば、生きた鎧よ。レームと違って、肉体を持たない魂だけの存在がそこら辺に転がっている鎧に定着しちゃったってことかしら」


「何それ」


 やる気があんのかないのかわからない生き物……モンスターか。


「どうしてそんな風に存在するのかはわからないわ。知能があるのか、ないのか……」


「そしてワキツ王国では無駄に武器を作っていて、さらに弱い一般人がモンスターなどの餌食になるからかリビングメイルが発生しやすいんだ」


 ……なんだそれ。そこまで困ってるなら、体面なんて考えずに大国に服従した方がいいんじゃない? 少なくとも今の生活の方がマシとは思えないんだけど。


「――ということで早速出発だ!」


 バカなの!?

 そんな説明で行くと!?


「さっさと乗れー!!」


「うっきゃあああっ!?」


 人攫い! 人攫い鳥~!


「……あっ、そうそう一つ言い忘れてた。リビングメイルは中身が空洞な鎧だからな。殴ったり蹴ったりしたんじゃ倒せないぞ」


「「「えぇ~~!?」」」


 もう嫌~降ろして~!!

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