013 眼鏡と書いて四ツ目と読む~きつ目、真面目、鷹の目ぴゅ~ろろ♪
サブタイトルを書いてから思いました。「ぴゅ~ろろ」はトンビじゃない!?
今回はクラスメートの分裂が起こります。
「――というわけでモンスターの前に盗賊を退治することになった!」
「……えっ?」
その声を上げたのはクラスメートの半数以上。もちろん私も上げてたよ。
一体全体何をどうすればそんなことを勝手に決めてくるのかな、このダメダメ勇者は!?
「ちょっと待って! モンスターとの戦闘経験もないのに、いきなり対人戦をやらせようっていうの!?」
これには委員長も大慌て。
そりゃあそうだよ。モンスター以前に動物だって現代日本の高校生には殺すのを躊躇させる存在なのに、いきなり人と戦えって言われてもってな話だよ!
モンスターはまだ見た目が向こうにいないモノだったら根性でイケるだろうけど、人と戦ってもしも殺しでもしちゃったら絶対にトラウマもんだよ!
「……何を慌ててんだよ委員長?」
なのに、この男は何にもわかっていない!
「どうせ戦うのは騎士の人たちだぜ? オレたちは見てるだけに決まってるじゃん?」
「そんなことわからないでしょ!? それとも、騎士の人たちがそう言ったのっ?」
「えっ、いや……言ってはないけど?」
ハァ~、結局ご都合主義解釈か。
どうせ手柄を立てた騎士と一緒にいれば自分の手柄になるとか思ったんでしょう? 当然、自分は一切手を余誤さずに。そんな都合のいい展開があるわけないのに……。
「もういいじゃない? どうせ言ったって無駄でしょ?」
「……小鳥遊さん」
『おっと、これは意外な展開!』
なんと勇者を援護する発言をしたのは、クラスでも委員長と並んで真面目ツートップと目されている眼鏡女子小鳥遊キリコさんじゃんないですか。
う~ん、だけど小鳥遊さんはどちらかというと委員長への対抗心で言っているだけのような気がするなぁ。キャラが被ってると考えてるのか地球にいた頃からよく衝突してたし……。
「わかってるの? 皆の命が危険に晒されてるのよ? それをそんな簡単に……!」
うんうん。委員長が怒るのはよ~くわかる!
ただ、小鳥遊さんとしては別の見解を持っているみたい。委員長が説得しようとしているのに、鼻で笑って見下してるから。
「……皆? 自分の身が危ないってだけでしょ? 一緒にしないでくれる?」
まるで自分だけは絶対に安全だと確信しているようなセリフ。その根拠ない自信の源は一体……?
「そうでしょ? あなたは守ってくれる人なんていないものね? ……だけど、私にはいるの。ねえ、キラーさん?」
「――もちろんですよ。キリコのことは私が守ります」
「っ!? ……いつからそこにいらしたのですか?」
おおっ!? 議論が白熱してたから気付かなかったけど、騎士が勇者たちの馬車の近くに……!
あれっ? よく見れば、この騎士って最近女子たちに近付いてた一人じゃない?
『ははぁん? そういうこと』
読めたわ。
ここに『名探偵ユメ現る!』って言っても過言じゃないぐらいに読めたわ!
つまり、この男に小鳥遊さんは堕とされたのね!? 攻略されちゃったのね、このビッチ!!
あぁ、だからかぁ。
そりゃあ、委員長には男は近付いてないよ? だって私が全力で妨害してたもん! だけど、それを委員長に魅力がないからって勘違いした挙句に、初めて異性に好かれて(予想)有頂天になっちゃったんだね。ついでに言うと、自分にはもしものことがあっても守ってくれる優しい王子様が居るってか?
かぁ~っ、ぺっ!
そんなに人生甘くないって! どう考えてもそいつは腹に一物ありって感じじゃん!
どうしてわっかんないかな~。
「キリコは私が守りますから、どうかご安心ください。……それはそうと、キリコの能力を借りたいのですがよろしいですか?」
「小鳥遊さん、あなた!?」
「何よ? 私のスキルを私がどう使おうと勝手でしょう? あんたと違って、同性と乳繰り合うような不毛で枯れた人生を送るなんて私は真っ平ごめんなのよ!」
『嘘でしょ? 小鳥遊さんってここまでバカだったっけ?』
明らかに自分のスキルを目の前の騎士に教えていると取られる発言をしたことに正直なところ驚きが隠せない。
スキルはいわば召喚者たちの生命線。もしもの時のために出来るだけ知られない方が良いに決まってるのに……。だからこそ、初日に委員長が言い含めたんじゃないの? 何を考えるの?
恋は盲目、それに委員長への対抗心……それらが上手い具合――この場合だと悪い具合に作用しあってこの結果になったんだとしたら。
『サイアクじゃん』
これは女子たちの中でスキルを公開した人の情報は王国側に渡ったと考えるべきだよ。
遠征もそれを踏まえた上での計画だとしたら、ますます嫌な予感しかしなくなってきた。
「皆も知ってると思うけど、私のスキルは【鷹の眼】。私を中心に直系十メートルの円で周囲を探索できる能力よ。小鳥遊の私が【鷹の眼】なんて皮肉だけどね?」
「……? どういう意味なんだいキリコ?」
「ふふっ、私たちのいた世界では小鳥遊っていうのは小鳥の天敵となる鷹がいない状況を現す言葉なの」
「あぁっ、それで本来いないはずの鷹が君自身ってことか!」
「そうよ! 小鳥だと思っていたら、敵だったってこと。キラーならこの皮肉めいた言葉遊びを理解してくれると思っていたわ!」
嬉しそうにイチャついてるけど、はしゃいでるのは二人……正確には一人だけだよ小鳥遊さん?
よく見れば、騎士の人は目が笑ってないって気付かない?
それに、クラスメートたちからすればさっきのは皮肉じゃなくて事実だよ。今や小鳥遊さんの評価はクラスメートを裏切った人にしか思えないよ。
「…………」
事実、委員長なんかは何か言いたそうだけどこれ以上情報を渡したくないからか、無言で堪えてるし。
「ま、まあなんにせよやることは決まってんだから張り切って行こうぜ!」
空気が重くなったのを感じたところまではよかったけど、空気を読め勇者(笑)。あんたがこの空気の元凶なんだからあんたが気分を変えようとしても乗れないっつーの。
「……そうね。過ぎたことはしょうがないわね」
「そうさ! それに困っている人を救うのはオレ達の目標だったんだから、別にいいだろ?」
オレたちじゃなくてあんたが勝手に盛り上がってんでしょ!
「よろしいですか? では、キリコは少し前の方に移動してもらえるかな? 君の能力は集団の先頭でこそ真価を発揮するものだ。大丈夫、もしものことなんて起こさせないから」
「もちろん、わかってるわ。あなたを信じてるもの。……それじゃあね」
「……ええ、気を付けて」
騎士に連れられて馬車から離れて行く小鳥遊さんを見送ることしか出来ない。そのことは委員長として心苦しいものがあるのは間違いない。
だけど、見知らぬ土地で不慣れな環境。そんな場所でリーダーシップを発揮できるだけのたしかな功績というものが存在しないという状況が委員長自身の引き留めたいという気持ちを押し殺させてしまったんじゃないかと思う。
結局、小鳥遊さんの離脱をきっかけに召喚者たちの輪が崩れ始めたのをきっかけに女子に対する騎士からのアプローチはより積極的なものになっていくのを委員長は止められなかった。
私も何組にも別れて行動されるとついて行けず、結局優先順位の高い委員長のところにいることになってしまう。どのみち、委員長のいるここが召喚者たちの最大グループであることに変わりはないのでここにいたと思うけど。
それでも離れて行った人たちの動向は気になった。
物語は大抵、勇者がきっかけで変化する・・・元凶は勇者だ!




