チャプター8:「ブルドーザー」
制刻は、グロンダー本拠地の敷地内への侵入成功から続ける形で。
その建物、巨大で趣味の悪い屋敷の内へと、また易々と踏み入り侵入。
目的である学園の娘と調査室の男を見つけるため、戦闘捜索行動を開始した。
正直、鳳藤はここまでは不安を抱いていた。
軍隊並みの武力を持つ裏組織であるグロンダーを相手にするなどという事になり。そして制刻等がどこまで戦い立ち回れるのかも不明であったことから、それも無理も無く当然のことではあったが。
だが。今となってはそんな心配に不安は、全てが吹っ飛んでいた。
制刻は、鳳藤が思っていたよりもその数百倍の域でメチャクチャ強かった。
いや、最早強いとかそういう表現ですら生温く。
超常的で、反則もいいトコな最凶っぷりであった。
「――ムダに広ェな」
今現在、制刻はそんな最凶っぷりにも程がある様子姿で、グロンダー本拠地の建物内を突き進んでいる。
広い廊下を進め、都度途中にある部屋に踏み入って調べ、また廊下を押し進み。
そしてその途中で幾度も遭遇し、襲って来たグロンダーの構成員たちを。しかし片手間程度に、千切って捨てるように片っ端から排除。
最早、その姿は怪物の進撃であった。
「……」
そんなように、「千切っては投げ千切っては投げ」で構成員たちを散らかし放り捨てながら。
ズッカズカと遠慮皆無の様で進んでいく制刻のその後ろを。
ブルドーザーが切り拓いたかの如きその進路を。
鳳藤は、だたポカンと唖然としっぱなしのまま、テクテクと歩き続いている状態。
当初は残酷な殺し合いの場に同行し、それを目の当たりにする事になるであろうと。その覚悟をしていた鳳藤であったが。
現状のあまりのぶっ飛び具合に、そんな覚悟の思いはとっくにどっかにすっ飛んでいた。
「手厚い歓迎だな」
そんなように、廊下をズカズカと押し進める制刻に対して。
集まり待ち構えるグロンダーの構成員たちからは、重軽数々の銃火器による容赦の無い銃撃攻撃が雨霰の如きで向けられ来ているが。
制刻はその纏う防弾仕様の白衣と、なにより自身のその肉体の反則なまでの強靭頑丈さで。
それらを容易いまでの様で、悉く跳ね除けている。
「ッ……!」
ちなみに、それに追従する鳳藤にも時折流れ弾が飛んで及ぶが。
見ればその全ては鳳藤の身に届く前に、その前で都度発生している「半透明の膜」に阻まれ止められ、床に儚い音を立てて落ちているではないか。
その秘密は、「個人用フィールドプロテクタ」の効果。
今も鳳藤がその身に、そのセーラー服の上から付けた、不釣り合いな武骨なベルト装備がその現象の理由正体。
それはまた制刻が自ら製作したものであり。
その装備が生み出すフィールドの効果が、鳳藤を銃弾から守っていたのだ。
しかしそれでも銃弾が襲い掠め、眼前まで及ぶ状況は心地の良いものではなく。
鳳藤はその顔をたびたび顰め、険しくしている。
「なんで……ッ、貴方は平気なんだ……ッ?」
そんな最中で同時に、鳳藤は前を進撃する制刻に尋ねる言葉を飛ばす。
それは自身と違って特殊な防御効果も無しに、その身体で容易く銃撃銃弾を跳ね除けて見せている、制刻のその姿の理由を尋ねるもの。
「一応、生まれつきだ」
そんな鳳藤からの尋ねる言葉に、制刻が戦いの片手間と言う様子で返したのは。
大変にシンプルな色でのそんな回答。
「あぁ、他には。前に自分の身体で薬学実験を試してな、そのオマケでちょいとブーストがあったか」
併せて補足するように、ちょうど思い出した様子のそんな事柄を答える制刻。
「……」
生来の、ナチュラルボーンの物だったのだとしても。その自分で自分に試したという薬学実験の効果だったのだとしても。
どちらにしても色々な意味で驚愕に尽きる、制刻の超常的身体の理由を知らされ。
鳳藤は最早その回答に驚きを通り越して、呆れ疲れた顔色で返すしかなかった。
「グォォッ!」
そんな流れ、やり取りの最中にも。次には通りかかった側の部屋の扉から、またグロンダーの構成員が出現襲撃。
オーク種族のその構成員は、その手に持った巨大な斧を振るい上げて制刻に襲い掛かる。
「おっと」
しかしそのオークの振るった斧は、正しくはそれを握るオークの太い腕は。
叩き降ろされるその軌道の途中で、制刻の片手にハッシと容易く掴まれ止められた。
「ナ!?こ、この……っ!」
制刻に掴み止められた斧は、オークの太い腕は。オークが藻掻き動かそうとしてもピクリともしない。
「ぐ、やろ……――ヒっ!?……ギャぎぇぁ!?」
そして制刻は、そのままオークのその太い腕をしかし容易く捻ったかと思えば。
次には連続する動作で、やはり片手でそのまま思いっきりぶん投げた。
そして廊下の反対向こうの壁に、オークの巨体はその頭から突っ込み激突。オークは濁った悲鳴を最後に意識を失い、無力化された。
「ビックリのサービスは、間に合ってる」
「……」
そんなオークに揶揄うように、しかし淡々とした口調のままでそんな言葉を向ける制刻。
一方の鳳藤は、最早リアクションをする気をも無くしていた。
《――自由、聞こえるか?》
そんな直後だ。
制刻が身に着け所持する携帯無線機から声が響き聞こえる。それは他ならぬ敢日の声で、こちらに呼び掛けるもの。
「!、解放さん?」
「追いついたか?――あぁ、聞こえる。こっちゃお先に、中に踏み込んで進めてる」
それに、各「手配」のために別行動中であった敢日の声が聞こえた事に、鳳藤は微かに驚く声を上げ。
制刻はその敢日の声が届いたことから、向こうが近くに来ていることを推察する言葉を零し。
次には通信に、こちらの簡単な状況説明を添えての返答を発する。
《遅れて悪い。こっちも今さっき着いて、裏手から敷地に侵入した。間もなく奴さんズを破って、建物に踏み込む》
その敢日からは到着が遅くなった事を詫びる言葉と併せて、向こうの状況を伝える言葉が寄越される。
その向こうも同じく戦闘に突入しているらしいことを証明するように。通信の背後には複数の銃声が混じり聞こえている。
「了解。んじゃ、適当なトコで合流しよう」
《オーケー、近づいたらまた呼びかける》
そしてしかし、互いを過度に心配するようなことはせず。
両者は合流の約束を大雑把なそれだけで交わすと、そこで通信を一旦終えた。
「よォし、そんじゃあ合流を目指そう」
「あ、あぁ……」
通信を終え、鳳藤に向けて端的に促すと、制刻は次には進行を再開。
また進む先より現れ襲い来るグロンダーの構成員たちを、しかし散らかし捨てる様相で排除し。
グロンダーの構成員たちにとっては阿鼻叫喚の光景を作りながら、ズッカズッカと押し進んで行く。
「うっわ……」
えげつないまでのその光景に、鳳藤は次には思わずのそんな声を漏らしてしまいながら。
そんな制刻の「ブルドーザー行動」を追いかけ続いた。




