チャプター9:「GONG」
「ん?」
「?」
そんな形にて、引き続き建物内を推し進めていた制刻と鳳藤。
その二人は進む廊下のすぐ先。間もなく当たって出ようとしていた、いくつかの廊下通路が集まるホール空間にその光景を見る。
グロンダーの構成員、黒服からチンピラ風までが見えるその者たちが。その集まる廊下の一つ、側方のその影から慌て飛び出てくる姿が見えたのだ。
鳳藤は一瞬身構え、制刻はまた戦闘のための予備動作を見せるが。
しかしすぐにそのグロンダーの構成員たちの動きが、こちらへの襲撃のそれでは無い事に。
何か慌て、「何か」に追われ逃げている様子であることに気づく。
《――自由。そっちの現在位置を確認してる、こっちもすぐ近くに居る。そっちの右手の廊下から出るぞ》
そんな所へ再び通信に上がり聞こえた、敢日からの声。
補足すると、制刻等は互いの所在と状態を、ビーコン装置や携帯端末などを利用して認識共有している。
通信はその共有情報から。向こうがこちらのすぐ近くまで来ていて、そしてこれより出現する詳細な位置方向を教え伝えるもの。
そして――ヌゥッ、と。
その示された方向、今にグロンダーの構成員たちが慌て飛び出して来た廊下から出現したのは。
――異質な物体。機械でできた巨体であった。
「うわっ」
出現した「それ」に、思わずの声を上げたのは鳳藤。
「それ」の全高は3m近い、ここまで見て来た亜人たちをも越える巨体。
その姿は四肢を持ちながらも二足歩行の形態を取る、人を模したと思しき形をしているが。
その身体を構成するのは、金属、プラスチック、樹脂等。
そして頭部らしき部分にはモノアイが備わり、人工的な発光が瞬いている。
端的に表現すれば、それは〝ロボット〟であった。
そしてだ。
そのロボットは出現と同時に、這い逃げていたグロンダーの構成員の獣人を、その機械の脚で踏みつけて圧し無力化する動きを見せ。
さらにその機械の腕、アームには。グロンダー構成員のオークや人間の巨漢がしかし気絶して泡を吹き、まるで絞められた鶏のようにまとめ束ねる形で捕まえられぶら下がっている。
恐ろしく、そして機械が故の冷酷さを感じさせるまでの姿。
「!」
次には、そのロボットのモノアイがこっちを向き。不気味な発光を見せるその「目」が制刻と鳳藤を捉え。
思わず鳳藤は、警戒し身構える。
――キュィィンッ!ビピッ!
だが。次にその巨大なロボットが見せたのは。
少し高めの電子音を上げての、まるで驚き喜ぶような「リアクション」のような動きだ。
そして次にはそのロボットは、そのアームに捕まえていたグロンダーの構成員たちを放り捨てると。
まるでゴリラの半四足歩行にも似た動きで、ドシンドシンと迫って来る。
そして制刻の手前で急停止して屈み立つと。そのモノアイを備える頭部を、まるで動物が懐き寄って来たかのように、制刻に突き込み近づけて来た。
インパクト満点だが、そこに害意らしき物は感じられない。
そして感情でも持っているかのようにその姿は、制刻を見つけた事を、何か嬉しそうにしているように感じられた。
「GONG、来てくれてありがてェぜ」
そんなロボットの登場から動き様子に、目を剥いていた鳳藤の一方で。
制刻はまるで驚く様子は無く、次にはそのロボットの名と思しきものを呼びながら。
ロボットが寄せて来たモノアイ頭部を、、まるで動物でもかわいがるように撫でてやる。
「ゴ、ご……?」
そんな様子に、また戸惑いを覚える鳳藤。
「――自由、剱ちゃん。待たせたな」
そんな所へ、聞き慣れた声が掛けられ寄越される。
見れば、今にロボット改めGONGが現れた廊下口の方から、敢日がその姿を見せて歩いて来る様子が見えた。
「あ、あの……解放さん、このロボットは……?」
そんな現れ合流した敢日に、鳳藤は開口一番にその事柄を、GONGについてを尋ねる。
「あぁ、剱ちゃんにはまだ「紹介」してなかったな――」
そんな鳳藤からの質問に。敢日はまるで、いやその通りGONGも身内の一人であるのだという認識での、そんな言葉を零し。
次には簡単な説明を鳳藤に紡ぐ。
GONGは、敢日がその手で作り上げた自立型のロボットだ。
「荒事」の補助のために作り出し、多くの機能機構を備え。
また、学習から自我の初期段階を宿すに至り。制刻に敢日等の「身内」の一人なのだとのことであった。
「カワイイだろ?」
そんなGONGを紹介と併せて、敢日はイタズラっぽい笑みで伺いながら、GONGの巨体をポンと触れ叩く。
そしてそれに合わせるかのように。GONGは独特の電子音を鳴らしながら、その頭部モノアイで鳳藤へと向いた。
「あ、えぇ……」
しかしその物々しい巨体と。何よりつい今程に、グロンダーの構成員たちをえげつなく屠った姿を見た後では、同意し辛く。
困惑で、濁した声を返しすしか無かった。
「ところで自由?徒手空拳で突っ込むマネは止めてくれって言ったろ」
そんな制刻へ、次には敢日から少し困った色での、そんな咎める言葉が飛ぶ。
それは言葉通り、現状徒手空拳で銃火器の類を持たない制刻のそれに苦言を呈すもの。
「あァ、悪ィ。あんま得物を持ってこうってのが、意識に無くてな」
「ったく――これを」
敢日からのそれに、しかし制刻は悪びれのない色で返す。
それに敢日は呆れを見せつつ。次にはGONGがそのボディに持つ収納、ペイロード・サポートシステムの一部から何かを取り出し、制刻へと投げ寄越した。
「と、悪ィな」
「それは?」
投げ寄越されたそれを、片手で受け取った制刻。
それは何か武骨な、SFチックな銃と銃と思しきものであり、脇からそれを見た鳳藤は疑問の声を零す。
「ガウスライフルだ。大雑把な戦いをする制刻に合った取り回しができるようにしてある」
その鳳藤に、その銃の正体を明かし補足説明を沿える敢日。
また聞いた所それは、敢日が制作したものであるとのことであった。
「そういや二人は、救助対象の宛ては掴んでたのか?」
そして敢日にはまた次には続けて。二人、というか制刻が目標の位置を明確に掴んで進んでいたのかを尋ねる旨を尋ねる。
「いや。適当にど真ん中に辺りを付けて、突っ込み進めてた」
(そうだったのか……)
しかし制刻が返したのは、その行動プランが大分大雑把なものであったことを、淡々とシレっと明かすそんな言葉。
今に知らされたその事実に鳳藤はまた困惑し。漫画的表現があるなら、後頭部に汗が浮かんでいたであろう反応を内心で浮かべる。
「ったく、そんなこったろうと思った」
その制刻の行動指針にまた少し呆れ。しかしもう無意味だろうと、咎めることはせずに一言だけを返す敢日。
「音響観測で、この趣味の悪い建物の構造は掌握してある。ついでにここまでの道中で、ここのデータ類を少し拝借した」
次には、その対策行動はこちらでしてあると、敢日は関係するデータが調査入手済みであることを明かす。
「ここには地下が、地下牢なんてモンがあるようだ。そこに学園の子と調査室の兄ちゃんが、捕まってる可能性は高いだろう」
「んじゃ、そこだな」
そして敢日が、牢屋施設の存在を明かすと同時に、そう推察の言葉を紡ぎ。
それを受けた制刻は淡々と、ならば目指すべきはそこだと決める一声を返す。
そして合流から、態勢を整え直し。
三名と一機は、その地下を目指す運びとなった。
元ネタはHalf-Lifeに出てくるD0G(真ん中は0)。
だからホントはGONGもG0NGという細かい裏妄想。




