チャプター4:「〝CRF〟」
――CRF。
日本語での正式名称は、〝衝突からの中部復興勢力〟。
または単に中部復興勢力、中部勢力とも呼称される。
CRFの名称は、その英語表記であるCenter Reconstruction Force from Collisionを省略簡易化したものであり。
多くの人々にはその通称で知られ、CRF自体もそれを世間に向けての一つの公称としている。
その実態、正体は。
静岡県の大半に、愛知県の以東を含む東海地方の一部と、そして甲信越地方などを主な掌握・勢力圏とし。
その圏内を衝突の影響被害から復興再建させることを目指す、勢力及びその行政機関。
そして。「特別地域」となった関東と、中部地方のより以西に避難移転した新首都との間を繋ぎ取り持ち。
荒廃し混沌の渦巻く地となった関東地方の、本格的な復興再建を目指すための先鋒最前線の役目を同時に努め担う、一つのコミュニティだ。
併せてそのCRFは、「衝突」後の多くの混乱に対応するための必要性から。
〝処分隊〟と呼ばれる、実力行動組織を編成保有。
これは、それまでの警察や予備隊(この世界日本における自衛隊、国防軍)とは別の新しい組織であり。
そしてしかしその特性、規模に装備から。事実上の軍と認識されるものであった。
そしてだ。CRFの掲げる関東の復興再建は、決してその名目上に留まるものでは無く。
CRFは少しづつだがしかし確実に、混沌の内で謀略渦巻く「特別地方」にて、その影響圏を捻じ込み広げており。
そして復興再建を現実のものとして進めていた。
敢日が上げたのは、そのCRFの存在。
「まぁ、実際なんとかしてくれと駆け込んで頼み込みゃ、CRFも動く事を断りゃしないだろう」
それに制刻も、そんな言葉を続け発する。
上述にて触れた通り、CRFは「特別地方」に介入から徐々に影響を広げつつある。
そんな昨今の状況から、CRFと、そしてグロンダー始め「特別地方」に跋扈する黒く暗い数々の組織がぶつかることは時間の問題と見られており。
その関係から、そういったアウトロー組織からの保護、対応を求めて駆け込めば。
CRFもそれを拒み渋ることは無いと見て良かった。
そんな昨今の都合を、制刻は併せて搔い摘んで鳳藤に説明。
「CRFは、そこまでの力を……っ」
鳳藤も、CRFの存在に大まかなところは知っていたが。
しかし鳳藤は彼女もまた、硬く護られる分、物事の出入りの制限が多い「特別地方」の「内区域」で過ごしてきた身。
さらにお嬢様学園の箱入り娘であり、悪い言い方をしてしまえば籠の中の鳥。
世間の事情には、少し疎いところがあり。
それ故、そこまでの解決を期待できる大きな力が存在する事を知り。
驚きと併せてそこに期待を覚えた。
「グロンダーを吹っ飛ばしたい――「だけ」なら、素直に頼るのもアリだがな」
「え……?」
しかしそんな鳳藤へ、次には敢日は少し難しい顔色で、何か含みのある言葉を紡ぐ。
「CRFの処分隊の基本方針は、脅威に害となるものを潰すことが最優先だ。人質の類なんぞは、余裕と都合があったらオマケで助けてくれる程度」
「っ……」
そして次に明かし説明されたのは、CRF 処分隊のその一つの在り方。
それを聞かされ鳳藤は、またその表情を硬く苦くする。
「まして、ちょっとキツいことを言うが……多分その調査室の兄ちゃんと生徒のエルフちゃんは、下手を打っちまったと見える。安否も確かじゃない。最悪、面倒を招く因子と見られて、グロンダー諸ともふっ飛ばされかねん」
「……!」
そして、次に敢日が零したその予測、想定に。鳳藤は再びその顔を悲壮混じりの険しい色に染めることなった。
CRFの有する一つの問題点だ。
大抵は利になる行いをすると、おおむね世間の人々から好評を得られているCRFであった。
しかしその気質には同時にやや厚かましく、そして容赦の無い面があった。
特に処分隊は、「横暴では無く、良くもしてくれるが。それとして警察や予備隊ほど甘く優しくは無い」というのが昨今の世間の人々の共通認識だ。
もっとも、そこまででなければ。
暴力と謀略渦巻く混沌の地に影響を捻じ込んで広げ、復興再興の芽を見出すことなどできなかっただろうが。
「仮に、オマケで助けてくれる可能性に賭けるにしても、CRFに動いてもらいたいならチョイ時間が掛かる。そして二人がグロンダーの手に落ちてる可能性が高い以上、今は生かされていたとしても長くその保証は無い」
併せて、残酷な言葉とは知りつつも敢日は言葉を続ける。
CRFは、そこまでを成し遂げられる大きく確かな組織だが。
故に動く上ではその認可、準備手配には相応の時間が掛かる。
仮にCRFに縋るとしても。
その生徒の子と調査室の人間の安否を考えれば、十分な時間は無かった。
「……」
のっぴきならない状況、現実を聞かされ知り。
鳳藤はその端麗な顔をしかし青くしたまま、拳を膝の上で握りしめて身を固くしてる。
「あぁ、すまない剱ちゃん……ちょいと怖いことを言い過ぎた」
「いぇ……」
そんな鳳藤を見て、敢日は苦くすまなそうな顔で詫びる言葉を紡ぐ。
しかし鳳藤は、絞り出した一言でそれにそう返す。
これが残酷だが確かな現実と、鳳藤は内心で己に言い聞かせようとしていた。
「だから――それをなんとかできる、君の目の前の〝ヤベェ殲滅兵器〟を紹介したんだろう?」
しかし、そんな鳳藤に。
次には敢日はその声色を少し弾ませたものへと変え。そしてそんな促す言葉を掛けた。
「え?」
それに導かれ、鳳藤はそんな表現にて促された目の前の存在。
その表現の通り確かにヤベェ感じの――制刻の姿を目に映した。
「おかしな表現で、人を呼んでくれんな」
そんなヤベェ存在の当人たる制刻は、今の敢日のした自分を示す表現に。
変わらぬ淡々とした色で返す。
「こういう時こそ、面倒な色々周りに融通の利く「パスファインダー」の出番だろう?」
しかし敢日はそれに構わぬ様子で、少し揶揄う色で、今度は制刻をそんな言葉で呼んで見せる。
「自由は、CRFからパスファインダーを指定されて引き受けてるんだ」
「パスファインダー……?」
「要は、広告を兼ねた鉄砲玉だ」
敢日が次に明かしたのはそんな旨。
それに疑問を浮かべて返した鳳藤に、制刻はそんな表現で答える。
行動の開始に、大きな組織が故に鈍いところがあるCRFに代わって。その看板担いで事態の起こりに先行対処行動をするのがパスファインダー。
CRFは協力関係にあったりツテがある者に、そしてなによりそれに足る「力」を有する者に。パスファインダーの役割を依頼しているそうで、その一名が制刻なのだと言う。
併せて制刻はそのパスファインダーを、その他に自分がやっている研究業やら諸々の片手間にやっていることを補足した。
「そんで、そんなモンに指定される分には。自由はまぁ、まぁーまぁまぁ強い」
「んだ、その気持ち悪ィ表現は」
「身内の評価は謙遜しておくモンだろ?」
そして敢日が続けて伝えたのは、そんな何かいささか妙な表現での自由の評価。
それに制刻は、微かにだが顔を険しく渋くして苦言を向けるが。
敢日はそれに悪びれなく返す。
「!、あの、それでは……助けを、引き受けてくれると……!?」
その表現での伝えられた事項に、制刻と敢日の会話から。
鳳藤は制刻等の意向を、自分の依頼、学園の生徒の救助を引き受けてくれるのだと解釈。
「あぁ」
それに制刻は。多くの言葉はいらないと、端的な一声にて肯定した。
「あ、ありがとう……!感謝を……!」
「まだ早ェ。礼を言うのも受け取んのも、コトが無事解決してからだ」
それに、感極まった色で礼の言葉を紡ごうとする鳳藤。
しかし制刻はそれを落ちつかせ、言い聞かせるように返す。
「じゃあ、こっちもいくらかは「兵隊」を用意しないとな」
そして、制刻と敢日はその依頼の遂行のためだろう。何らかの相談の言葉を交わし始めた。
「竹泉と多気投の所は?」
「傭兵ズは、デカい別件抱えてて今はムリだっ言ってたな」
「仕方ないか」
「必要なのは頭数だ、迷惑掛けるがジューダの兄ちゃんのトコに頼むか。あとアリィにも声を掛ける」
「GONGも出そう」
おそらく助力の「アテ」が複数あるのだろう。その手配の算段と思しき言葉を交わす制刻等。
「……あ、あの……いいかいっ?」
そんな会話の切れ目を見計らい、割り込み入れる形で。次には鳳藤は伺う声を発する。
「どうした、剱ちゃん?」
その様子が少し異なものと気づいて尋ね返した敢日。
「その……わ、私も……同行させてもらえないだろうか……っ!」
それに意を決した色で、鳳藤が返して申し出たのはそんな旨であった。
それは、生徒の上に立って導く生徒会長としての立場からの責任感と。そして事態に他人事ではいたくないという、鳳藤の個人としての心情からの願い入れ。
もちろん分かってる。
学園では生徒の模範となり導く生徒会長を務める立場として、毅然と振舞っているとはいえ。
制刻と敢日からすれば、鳳藤は世間知らずの小娘。
それは、ダメ元中のダメ元での。子供のワガママにも等しい申し出であった。
「剱ちゃん……気持ちは分かるが――悪いが、それはダメだ」
「かまわねェが」
そんな鳳藤の願い入れに、敢日が想像の通りに、苦くそして少し咎める色まで見せての否定の言葉を紡いだのと。
そして――制刻がシレっと、認め肯定する言葉を発したのは同時であった。
「は……――えっ?」
覚悟していた否定の言葉。それを紡いだ敢日の言葉に、聞き分け大人しく引き下がる返事を返そうとした鳳藤は。
しかし、同時に聞こえた制刻のシレっとした言葉に。
その意味がしかしすぐに呑み込めず、次には呆けた声を返してしまった。
「って……オい、自由ッ!?」
次には、また大変に驚いた様子で。
そして今度はダイレクトに咎め叱るまでの色で、敢日が制刻に荒げ張り上げた声を向ける。
「もちろん、俺等のお守りを受けて。離れず後ろ近くにはいてもらうが」
だがそんな敢日には返さず。そしてすでに決定した運びとでも言うように、また淡々とした色で制刻は鳳藤にそんな要求事項を告げる。
「危険だッ、軍隊並みの武力のグロンダーとぶつかろうってんだぞッ!?」
そんな制刻に、しかしまた言葉を荒くして割り入れ。咎め反対する意を含めた主張をぶつける敢日。
「個人用フィールドプロテクタを、着けてもらやァいい。丁度ブロックⅣにアップデートしたばかりだ」
「ッ……そりゃ、それなら物理的に安全にはなるだろうが……ッ」
しかしそんな敢日に制刻は、何かを示すいくつかのワードを含めて説くように返す。
それに敢日は引き続き険しい顔色ながらも、荒げていたその語調を少しだけ軟化させてて零す。
何か「手」があるのだろう、交わされる制刻と敢日のそんなやり取り。
「姉ちゃん、知ったようなコトを言うかもだが。アンタみてェなのは結局居ても立っても居られず、時間差で突っ走っちまうコトとかがあるモンだ」
「うっ……」
そのやり取りから、制刻は鳳藤に顔を戻し。そして発し向けられたのは、そんな推測の言葉。
そしてそれを受けた鳳藤は、図星を付かれたように苦い声を漏らす。
正直な所、その言葉が暴いたように鳳藤は過去には。
今回のような重大な事案ではなく、日常の中でのものだったが。
起こったトラブルの解決を頼れる人に一度は任せたが、しかし傍観が耐えられずに己も突っ走ってしまった……と言ったことなどがあった。
「んだから、直接お守りできる範囲に居てもらったほうが、むしろ面倒が無ェ」
そんな所を見抜いたことから、鳳藤の同行を認めたことを。制刻はオブラートに包むことは無く、正直に端的に明かし説明して見せた。
「まったく……そういうお前は、思い切りがぶっ飛び過ぎだろ……ッ」
そんな制刻の考えを聞いたことで、敢日も一応そこに合理性を見たのか、咎め止める色こそ収めたが。
しかし引き続きの苦く困った色で、そんなツッコミの一声を零す。
「ハァ――剱ちゃん。こうなったからには、もちろん確実に守ることは約束する。だが、もしかしたら残酷な「もの」を見ることになるかも知れない。一緒に来るなら、それは覚悟はしてくれ」
「あ、あぁ……分かった……!」
それから敢日より告げられたのは、少し改まった真剣な色での忠告と、そして一つの覚悟を求める言葉。
それに鳳藤は身を固くしてまた改まり、緊張を帯びた色でそれを承諾。
それをもって、一悶着を得ながらも「依頼」の話はまとまり。
そのための動き――「作戦」は、発動されることとなった。
だいぶFalloutのNCR、いくらかCivil Warの西部勢力のパクリ。




