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結婚するとは言っていません【登場人物・その他】  作者: 白雲八鈴


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7/10

フェリラン中隊の休日

「はぁ……」


 タバコを吹かし空を見上げた。風が雨の匂いを運んできている。


 もうすぐ雨が降ってきそうだ。


「お待たせしました」


 私の前に、香ばしい香りがするコーヒーが置かれ、多種多様のケーキがみっとりと載せられた皿がコトリと置かれた。


「やっぱり、戦場帰りはこれに限る!」


 カフェのマスターに礼を言って、フォークを手に取り、ケーキをパクリと食べた。

 甘くてふわふわのケーキに癒される!


「フェリラン中隊長。やはりこちらにいらっしゃいましたか」


 私が外のテラス席で食べていると、目の前の席にディロべメラ副中隊長が腰を下ろしてきた。

 今日は休暇だと言ったはずなのに、隊服を着て私の目の前にいる。


「なんだ? 今日は休暇だと言ったはずだ」

「言われましたが、報告書は上げなければなりませんからね」


 そう言って、ディロべメラ副中隊長は私の前に書類の束を差し出してきた。

 だから休暇だと言っただろう。


「今日は受け取らないぞ」

「ハイラディ団長から催促がありましたので」

「はぁ? 戦場から帰ってきたのは昨日だ。三日ぐらい待つだろう?」


 あのクソジジィ、報告書なんて急ぐ必要などないだろう!


「近々大規模な作戦が実行されるそうです。戦況の情報が早急に欲しいとのことですよ」

「はぁ……ガレイアを失った穴が酷いな」

「あの方が生きておられれば、どれほど良かったことか」


 私はディロべメラから書類を受け取る。というか、休日まで働かなくていいだろう?奥方と一緒に過ごせばいいのに。


「受け取ったから、さっさと家に戻れ、雨も降りそうだし奥方との時間を大切にしろ」

「妻は救護所に詰めているので、帰っても一人なのですよ」

「子どもと遊んでやれ」


 私は取り敢えず帰れと手を振る。休暇の日まで私と顔を合わす必要はない。

 そもそもほぼ毎日、顔を合わせているのだ。


「帰っても一人だと言ったではないですか。子供は妻の救護所で見てもらっているのですよ」


 ディロべメラの奥方は治癒師なので、昼間は救護所で働いている。

 このご時世だ。家で子育てをゆっくりとできないのだ。


「はぁ、コーヒーぐらいなら奢ってやる」


 これは、家にいてもやることがないから、仕事をしていたというところだろう。


「え! 本当ですか!」


 そこにディロべメラではない声が割り込んできた。テラスの柵の向こう側からこちらを見ている者たちがいる。


「ダラニアール。お前には言っていない」


 何故か柵の向こうにダラニアールとラドベルトがいた。休暇なのに二人して何をしているんだ? それも隊服を着てだ。


「えー! 隊長のおごり!」

「おごらん。今回の作戦で寄り道してたのは誰だ?」

「寄り道って酷いです、隊長! 俺は敵に見つからないようにモグラになっていただけですよ!」

「意味がわからん。ラドベルト、ダラニアールのおもりか?」

「違いますよ。そこでばったりと会っただけです」

「は? 二人して休暇の日に隊服を着てか?」


 何をしているんだ?

 休みの日まで隊服をきてウロウロして、隊員同士でばったり会うなんて……


「隊服を着ているのは隊長も同じじゃないですか」


 ラドベルトが呆れたように言ってきた。


 だが、それは理由があるのだ。


「着る服を考えなくて済むじゃないか」


 私はケーキを頬張りながら答える。


「隊長に、隊服云々の言われたくないです」

「楽ですよねー」


 否定と同意の言葉をいいながら、二人が同時に柵の中に入ってきた。


「あ! 隊長発見!」

「やっぱりここだと、言ったとおりだろう?」

「隊長、聞いてくださいよ」


 何故か休暇を言い渡したはずの隊員たちがカフェにやってきて、私に声をかけてくる。

 だから休暇だと言ったじゃないか!


「何故に休暇の日までも、お前たちのむさ苦しい顔を見なければならないんだ!」

「フェリラン中隊ですからね」


 ディロべメラ、意味不明な返答をしないでくれ。

 私はここにケーキを食べにきたのであって、むさ苦しい隊員と顔を合わせにきたわけではないのだからな!


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