九
水曜祝日の朝八時過ぎ、私はいつも通り出勤してお店の従業員用入口から中に入るところだった。
目黒川沿いを歩いていると朝からぽかぽかとした陽気を浴びて心地よくなり、久方の 光のどけき 春の日に、などと授業でやった和歌を思い出しながら散歩気分になっていたが、いざ地下のお店へと続く階段を降りていくと自然と緊張感が生まれてくる。楽しいバイトだが責任はある。
普段通りであれば店長と乃々葉さんは既に出勤していて、次に来るのが私。
今日もどうやらその通りのようでキッチンから二人の会話が聞こえてくる。
そう思うと朝から仕込みに余念のない乃々葉さんには頭が下がる思いだ。
大学にも通い、ここのお店で働き、将来のための修行もしているという。どうやって時間を確保しているんだろう。機会があれば聞いてみよう。
というわけで控え室まで辿り着き、さっさと準備を済ませてしまおうと思って更衣室のドアを軽く開いて―― というところだった。
なんと中には先客がいた。
しかもそれは八時半に来ると連絡をくれていた小春で―
「琴奈、おはよう」
「…………え、あ、おはよう」
「そんなに驚いた? わたしも同じ時間に来るって言ったよね」
「う、うん。でもこんなに早く来るとは思ってなかったから、びっくり」
既に荷物をまとめて従業員用のロッカーに片付けていた。
そんなに早く来たの?という不思議な(むしろ不審な)気持ちにすらなった。
でも、小春が小さく微笑んでいる姿を見るとその不思議さもどうでもよくなって。
「琴奈が来るところを待ち構えてみたかったんだよ」
「そ、そっか」
「ふふ、びっくりしてる琴奈はいつ見ても可愛いね」
「え、朝から口説かれてる……?」
「冷静な突っ込みをするところもいいなって思うよ」
「なんか紬さんと喋ってる気分になってきた……」
かくして私は丸め込まれた。小春中毒患者の末路。
小春の流れに完全に引き込まれてる。
手のひらの上で踊らせているとも言う。
今日会ったら何を喋ろうとしてたのかも忘れてしまった。
しかし中毒患者はしぶとい。自分で言うのもなんだけど。
小春成分という名の情報を摂取しようと試みてしまう。
とりあえずなんか軽く喋ってくれそうなタイミングがいいと思い、最初の疑問を着替えている間にしれっと訊いてみることにした。
「ところで今日は本当に早いね」
「うん。まあ琴奈と約束したからっていうのもあるけど……」
「あるけど?」
そういえば小春は肌綺麗だよな。お手入れとかどうしてるのかな。
「これは個人的な理由なんだけど」
「う、うん」
と思ったら急にこっちに顔を向けてきて、なぜかその視線が下がって――
「琴奈が着替えてるところを見たかったから、かな」
「っっ――!!」
小春の視線はどう見ても私の下着を捉えていた。
「…………こ、小春のへ、へん……」
「声が小さくて聞こえないよ」
「小春の……変態っ……」
タイミングは最悪だった。
上は済ませて、ちょうどスカートを穿こうとしていたところだった。
学校の体育の着替えだったら完全ガードしてるのに、ここは大抵一人だし気にしなくていいと思った私が馬鹿だった。変態がいた。新手の変態が。しかも私の中毒対象がそんな変態だった。
「ふふっ。というのは冗談なんだけど」
「…………冗談の割にはガン見してたよね」
「琴奈はクールな雰囲気なのにジュニア下着なのが可愛いなって思って見てた」
「~~!! 変態っ、小春の変態っ、あっち向いて!!」
「はーい」
紬さんの性質の悪い感じを受け継いでいる気がする。
それとも小春って元々こういう悪戯っぽいところがあるのかな……お嬢様学校の雰囲気と環境で抑えられてただけで実は、みたいな。
ともかくこれ以上被害に遭わないようにさっさと着替えを済ませる。
そして私が軽いメイクに入ってもまだあっちを向いてる小春。別にもういいけどな。
「小春、もうこっち向いていいけど」
「そ、そう? からかってごめんね? もうしないから」
「いや、まあ小春相手なら水に流せるからいいよ」
…………
そう言ったら小春は目をまん丸くしていた。
え、私もしかしてすごく甘いこと言った? もうちょっと厳しい方がよかった?
「琴奈は甘々だね、わたし以外にそういうこと言わないように気を付けてね」
「雲の上のお嬢様から人生指導されてる……」
「琴奈の方がよっぽど箱入りかも」
「それはないと思う」
「どうかなあ」
小春に言われるとなんだか不安になってくる。
もしかして私は対人関係が下手すぎて対応が穴だらけになっているのかもしれない。それは怖い。やっぱり小春の言うことはちゃんと聞こう。
というか今更だけど、裕福なお家の生まれだからこそ色々な人と関わって礼儀作法とか社交性とかをしっかり身に着けているのだとしたら。
……こんな人生を送ってきた私よりはよほど人に慣れている。
小春はやっぱり私よりもずっと人間関係を大事にしてきたんだろうなあ。
私は初対面の時の仕草や容姿を見て「人見知りで引っ込み思案な深窓のお嬢様」だと勝手に決めつけていたけど、そうじゃないと今は思う。
小春は偉いなあ。すごいなあ。
「……? 琴奈、どうしたの。そんなにこっちをじっと見て」
「…………なんでもない」
「そ、そっか。じゃあちょっと付き合ってほしいことがあるんだけど、いい?」
「うん。了解」
と思っているうちに小春も準備を全部終えていたらしく、さっさと出ていくので追いかけてホールへと出る。こういう時に先導されているのも、小春に引っ張られている感じがして、その背中がなんだか大きく見える。
そうやってホールに出たところで、小春は座席へと向かわずに展示スペースへと向かっていった。つまり今日の開店準備をするわけではない。
ということで付いていくとその空間にはなんと見慣れない楽器がどかんと鎮座していた。白と黒の鍵盤を備え、スタンドに載せられて、譜面台まで取り付けられ、このスペースを見事に支配していた。
そしてこの楽器があるということは――
「あら、仙谷さん、今日は早いわねー」
「店長さん、おはようございます」
「おはようございますー」
「おはよう。で、早速用意してみたんだけどこれで大丈夫そうかしら?」
「はい。試しに弾いてみますね」
小春がとうとうお店で演奏するということだ。
初めて会った時はあんなにあたふたしていた小春がねえ……
思わず姉のような心境になりつつ見守る。
あ、二千花が小春のことを妹扱いしてたのはこういうことだったんだ。
確かに妹を見守るお姉ちゃんの気持ちになっちゃうかも。
「椅子はこれで大丈夫です。音はこのまま増幅なしでいいでしょうか?」
「ええ。小さい店だから問題ないわ」
「わかりました。では試しに一曲……」
バイト店員が持ち回りで担当してる休日限定の楽器演奏イベントは、この店へのバイト応募数をガタ落ちさせる大きな要因であることは間違いないのだが、逆に言えば楽器をそこそこ演奏できる学生しか集まらない。
楽器を演奏するというのは結構大変というか、忍耐力と継続力がないと辿り着けない境地だと思う。小中学校のリコーダーですら授業中にちゃんと練習しないとうまく吹けないのだから、こうして人前で単独で演奏できる楽器ならもっと大変。
つまり何が言いたいかというと、楽器演奏を習得できるくらい真面目で忍耐力があるような学生しかここのバイトには応募してこない。つまり、基本的に良い人しか来ない。
二千花はムードメーカーの才がありすぎるのが悩ましいけど明るくて優しくて人思いなすごくいい子だ。紬さんは毒舌が酷くはあるのだけど、根本は周りを明るくして優しい雰囲気にしてくれる人。そのおかげで楽しく働けている。
そして小春もまた、この場所を明るくしてくれる素敵な子の一人ということ。
そんな小春が練習で弾き始めたのはベートーヴェンの『エリーゼのために』、私でも知っているクラシックの名曲だ。
ピアノには明るくないので、どれくらい難しい譜面を弾いているかはわからない。
ただ、少なくとも自分がお客さんだったらこの演奏を聴きつつ紅茶を飲むのは気分が良さそうだなと思う。そこにチーズケーキも欲しい。
譜面を見ながらとは言っても、長年のブランクを感じさせない余裕のある演奏と振る舞いにすっかり感心してしまう。
あと小春が弾いているというこの見た目も良い。私みたいなちょっと冷たそうな顔立ちの人間が弾くともう少し固い感じになりそうだけど、小春の持って生まれた柔和な雰囲気がすごく良く合っている。個人的にはとても好き。
おおよそ五分ほどゆっくりめに弾いた後、小春は満足げに頷いて見せた。
「店長さん、問題ありませんでした。これでいけます」
「良かったわ。じゃあ今日の前半の二回をお願いするわね。後半は荷稲さんが担当するから」
「はい、わかりました」
そこからキーボード一式は小春が自分で倉庫へ運んで仕舞った。
一人で持てるんだ。ちゃんと筋肉あるんだと思った私は鍛えられた形跡のない自分の腕を見て恥じた。運動に関しても小春の方が上手でした。ごめんなさい。
倉庫から戻って来た小春は機嫌が良さそうで、私のところへ歩み寄ってくると「どうだった?」と言いたげな顔をして返事を待つ態勢に入ったのだった。
「小春、すごくよかったよ。素敵な演奏だった」
「ありがとう。琴奈のギターに負けないように頑張ってみるよ」
「そうだね。今日は楽しみにしてる」
私の返事を待っていた小春はどう見ても褒めてほしそうな瞳もしていたので、「すごく」という形容詞をつけて褒めたら嬉しそうな笑みがぱぁっと広がって、その笑顔にこちらまで幸せな気持ちになっちゃいそうだった。いや、なった。
なんだろう。ご主人様に撫でてもらえた子犬みたいな感じかな。
嬉しそうにしてる仕草が可愛くてもっと撫でちゃう飼い主の気持ち?
ペットは飼ったことないからわからないけど……
「琴奈」
「うん」
「もっと褒めてくれると嬉しいな」
「……え、えっと」
あれ、小春がなんか前のめりになって、お辞儀してるみたいな体勢で――
頭がこっちに差し出されてる感じで、えっと、つまり、これは、その。
……おそるおそる手を伸ばして、小春の頭に手をぽんっと置いて―
「小春、よくできました」
頭を撫でてみた。髪の毛はさらさらで、柔らかい手触りだった。
それが無性に気持ちいい。手のひらが気持ちいい。
人の頭を撫でるって、こんなに快いことだったんだ。
「んっ……琴奈、もっと撫でて」
「うん。よしよし、小春はすごい、小春はえらい」
「えへへ……ありがとう」
自分からすりすりってすり寄ってくる小春は本当に子犬みたいだった。
可愛い。もっと甘やかしたい。好き。頭撫でるのたまんないなあ……
小春がずーっとニコニコしてるのも可愛い。
ああ、世の中の飼い主がうちの子可愛いって言ってるのはこういうことなんだ。
ようやく私も実感できた。すごいなあ。これは病みつきになる。
……そういうわけで私はたっぷり2分間ほど小春の頭を撫でて、本人が満足して離れていったところでようやく手を離した。
「琴奈、頭撫でるのどうだった?」
「……気持ちよかった」
「よかった。琴奈がわたしの髪嫌いだったらどうしようかと思ったよ」
「こんなに撫でてて嫌いなわけないじゃん」
「ふふっ、だよね」
あれ、もしかしてまた小春に揶揄われた?
わざと私を頭撫で中毒に陥れたの? 小春中毒患者に別の中毒を?
……でも、小春がいればそれで解決するし、いっか。
私にしては珍しい「まあいっか」に類する判断をしたところで、時刻は既に開店四十分前になっていた。普段の開店準備を始めないといけない。
小春にホール全般を任せ、私は出勤してきた二千花と一緒にキッチンの準備に入る。ゴールデンウィークの起点になる今日はこの先を見据えて仕込みを多めにしておこうという計画だ。なので二人で補助に入った。
二千花は手先が器用なので細かい調理はお手の物、逆に私は大雑把な方がいいので深く考えずにできる系を、上手く分担しながら進める。
二千花とも半年以上の付き合いなので息は合ってきたし、初めの頃は私が距離感を掴みかねてキャッチボールを躊躇うこともあったけど、今はタメ口で、かつ短い単語のやり取りでさっさと意思疎通が図れる。
なので多めの仕込みも案外早く終わってしまい、開店十五分前にして休憩を手に入れたわけだ。そして休憩になると必ず何か話し掛けてくるというのがコミュ強女子こと二千花の特徴で――
「ところでことっち、ちょっと言いたいことがあるんだけど」
「うん、何?」
「ちょい耳貸して」
「? う、うん」
大きな声では言えない話があるらしい。
手招きされたので距離を詰めてから右耳を差し出して――
「こはるんの頭撫でるのどうだった~?」
「っっ―――!!!」
バレてた。見られてた。
今絶対二千花にやけてる。揶揄おうとしてる。間違いない。
次の言葉を言われるのが怖すぎて反射的にずさっと後ずさる。
よりによって二千花に見られるとか――
「ぁ……み、みて、た、の」
「そりゃあもう。最初から最後までしっぽり拝見しておりました」
「…………忘れて」
「やだー、あたしの脳内SSDに高画質保存しといたから」
「じゃあそのデータはどこにも出さないで……」
「ふふふー」
「お願いします……」
「しょうがないなあ。じゃあ門外不出にしてあげるよ」
「た、助かった、死ぬかと思った」
「ことっちが死んだらこはるんが可哀そうだから生きてね」
「はい……おっしゃる通り……」
……本当に怖かった。弱みを握られた人の気持ちを初めて体感した。
ミステリー小説とかだと殺人犯に弱みを握られて証拠隠滅に協力しちゃう人とか出てくるけど、それに勝るとも劣らない恐怖体験だった。二千花は怖い。
しかも小春のすごく嬉しそうな時の笑顔まで見られてしまった。
あれは私だけの特権にしておきたかったのに。
でも見られたものはしょうがないので諦めた。
今度から小春とスキンシップする時は絶対に人に見られない場所でしよう。
またハグしてって言われても人前では我慢する。うん、絶対。
という私の決意はあえて本人には話さず(話したらたぶん羞恥でその場に崩れ落ちるので)、何事もなかった風を装って開店に備える。
小春はさっきの頭を撫でたのがよほどお気に入りだったのか、普段よりも機嫌が良いみたいで身のこなしがちょっと軽そうに見える。私に喋りかけてくる時の口調というか、声の明るさとか、そういうのもいつもと違う。
こうやって見ていると、やっぱり小春はおしとやかなお嬢様女子というよりかは、甘えたがりなごく一般的なの子供の気持ちを抑えて大人しく振舞っている子なのだと思う。だけど私の前でだけリミッターが外れて元の性格が出てくると。私という人間にある程度心を開いているからこその現象だと思う。
……しかし改めて考えると、どうしてそこまで好いてくれているのかわからない。
小春は私のことを可愛いと言ってくれるけど、鏡で自分を見る分には可愛いどころではなく、切れ長の瞳と妙に温度感の低い顔立ちで人を遠ざけるような見た目にしか思えない。笑うのも下手だし。だって笑い方なんて習ってない。
あと、人を好く時の条件って人柄や性格もあると思うんだけど、小春がどの辺りで私の人格周辺にプラスの感情を持ってくれたかがわからない。確かにバイトの先輩として真摯に接してきたつもりだけど、それ以外のどこがよかったんだろう?
そういえば小春の口からそういう話を聞いたことはない。
私自身は暮らしとか人生の色々を喋ってはいて、友達が少ないとか人付き合いが下手とか、趣味がないとか、勉強ばかりしているとか、そういうマイナスなことしか言ってない。なのにどうして?
本人に尋ねてみたい気はするんだけど、答えが返ってくるのが怖い気もする。
もしこれで「ダメ人間なところが好き」なんて言われたら絶望しかねない。ダメ人間で申し訳ございませんでしたって言いながら寝込みそう。
「……琴奈? なにか考えごと?」
と心の中で勝手に謝罪してたら本人に声を掛けられた。
もしや思考を読まれたのか。
でも、小春の表情がちょっと心配そうな感じだったので、単純に私が黙りこくっているところを気にかけてくれただけみたい。優しいなあ。
「珍しいね。開店前にぼーっとしてるなんて」
「そう、かも。ちょっと悩んでたことがあって」
しかしよく考えると今は運よく心配してもらえている。
とすると真面目な相談を装ってこの疑問を尋ねてみるチャンスかも。
なので人生相談のフリをして本人に質問してみる。
「私、人付き合いが下手って話をしたでしょ。歓迎会の時に」
「うん」
「でもさ、学校で一人だけ私と仲良くしてくれる子がいるんだよね。すごくいい子でさ、クラスの委員長もやってて、人望もあって。そんな子が私のどの辺りに良い印象を持ってくれてるのかって、ずっと気になってて」
「……そうだね、その人に会ったことはないから正しいかはわからないけど」
……ごくり。なんて言われるんだろう。
「琴奈と、マイナスの波長が合うんだと思うよ」
マイナスの波長? プラスじゃなくて?
「好きなことで仲良くなる人たちはたくさんいる。プラスの波長が合ってる人たち」
うん、そう思う。
私も好きなもので仲良くなった人が昔はいた。
「でもお互いの『あれは我慢できない』『これは辛い』に触れてしまうと一緒にいられなくなる。マイナスの波長が合わないから」
…………
「その人は琴奈とマイナスの波長が合ってるんだと思う。勘でしかないけど、たぶんそう。その人は琴奈が嫌だったり苦しいと思うことをしないし、そういう気持ちが生まれないように関係を深くせずに保ってる」
百音が週一回のお昼ご飯を約束にしているのは、そういうこと?
「琴奈もその人に対して深入りしない。深く関わろうとしてない。だから、そういう関係が続いてる。お互いが心地良いと思う関係が」
小春が言っていることはきっと正しい。
その口から出てくる言葉が私の心の奥へすっと染み込んでいく。
まるで、自分の体感みたいにすらすら話してくれる。
私の学校での様子なんて見たこともないし。百音との関係が月曜日のお昼だけなんて事実も伝えていない。なのにまるで知っているように喋る。
じゃあ、小春自身もそういう経験があるのかな。
でも、小春からは人付き合いが苦手っていう様子は見えない。私が見えていないだけ? 私の前で明るく冗談を言って揶揄ってきて、頭を撫でてっておねだりしてくる小春から、マイナスを感じさせる色は出てこない。
それに、この仮説が正しいとしたらお互いを深く知ろうとし合っている私たちは何なんだろう。私は小春に対して深入りしたいと思っている。小春も私に対して大きな関心と好意を寄せてくれている。
わからない。これはイレギュラーなのかな。
マイナスの波長が合っていて、その上でまた突然変異みたいな何かが起きて私たちはこうして親しくなっているのか。
本当にわからない。もっとヒントが欲しい。
せめて小春の話をもっと長く聞ける場所が欲しい。
例えばバイト以外の場所でとか。小春がもっと落ち着ける場所でとか。
でもそれを実現できる場所って言うと……小春の家くらいしかない。
流石に自宅にお邪魔して話を聞くのは難しい。
だから、翌々日の金曜夕方。
小春の家に本当にお邪魔することになるとは全く想像していなかった。




