六
「では小春ちゃんを歓迎して……かんぱーい!」
「かんぱいだよ~」
「乾杯ー」
「か、かんぱい……」
「……乾杯」
そして閉店後の十八時半ジャストに小春の歓迎会は始まった。
微妙に揃っていないというか各自の個性を感じる「乾杯」の声は、この突貫工事で開催された歓迎会になんとも言えない絶妙な脱力感を与えていた。
その脱力感に一瞬だけ「これ大丈夫かな……」という全員の心の声が漏れたが、二千花が勢いで全てを押し通し、紬さんがうまい具合に乗ったことで会は無事動き出した。
歓迎会を楽しみにしていた小春をフォローするのは私の仕事だけどね。
ちなみにここに至るまでには珍事件が発生しており、十七時半頃に一瞬休憩室に戻って来たタイミングでは普段通りの殺風景な空間だったはずだが、そこから一時間も経たないうちにテーブルにはお寿司と焼き鳥とフライドポテトとペットボトル飲料が所狭しと並べられた状態に早変わりし、部屋の壁には折り紙による輪飾りが取り付けられていた。(輪飾りとは小学校の行事で教室を飾るときのアレのことだ。)
この犯人は言うまでもなく二千花で、十七時五十分頃に到着した瞬間から超高速で準備を始め、大量に買い込んできた食べ物と飲み物を手際よく配置し、十八時過ぎに届いた宅配寿司をさも自分がここのオーナーですみたいな顔で受け取って領収書をかっさらって店長に即提出し、続けて自宅で父親に作らせたという輪飾りをその辺のセロハンテープで壁に固定し、十八時二十分の時点で「もう準備できましたけど?」の言わんばかりのドヤ顔で着席して待機し、その直後にホールの片付けを終えて戻って来た小春をドン引かせたそうだ。
これがミステリー小説の殺人犯であれば探偵からその手腕の鮮やかさを評価されて然るべきだ。そしてその後捕まってほしい。
そして私と乃々葉さんがキッチンの片付けを終えて戻って来た頃には、ニッコニコの笑顔でクラッカーを構えている二千花と、明らかに中トロを狙う視線を見せている紬さんと、半笑いの困り顔で沈黙している小春がテーブルを挟んで向かい合っていた。
私は完全にビビってしまった小春の隣に座った。
その時に飼い主に縋る子猫のような瞳で射抜かれて少しときめいてしまったのは内緒だ。小春には小動物が乗り移っているのかもしれない。あるいは前世がそうかも。
ともあれ参加者はお寿司によって間違いなくテンションを上げていき、そこから上機嫌になれば会話も弾んでくるというもの。今日はそこにムードメーカーを体現した二千花がいる。
「というわけで! 小春ちゃんに訊きたいことは各自たくさんあると思うので、お寿司を嗜みながらインタビューしてみようと思います!」
「うんうん~、ならわたしはまず交際経験の有無を~」
「つむつむは黙ってくれる?」
「はいはい、じゃあうちから最初に質問ー」
「はい。乃々葉さんどうぞ!」
「お家ってどんな感じなの? 豪邸? お屋敷?」
明らかに悪意のある質問を手際よく遮った二千花が乃々葉さんにパスを決めた。
紬さんはちょっとしょんぼりしていた。残念ながらあなたが悪い。
そして自宅という皆気になっていた質問に小春は言葉を選んでから口を開いた。
嫌そうな表情ではないし、むしろ良い質問を貰った作家みたいな顔をしている。
「一戸建てです。小さくはないけど大きくもなくて……坪数だと五十坪くらいです」
「目黒台で五十坪!? すごすぎるね!」
「両親はどちらも企業役員をしていまして、その収入から新築したそうです。わたしが生まれる少し前にできたとか」
「新築はやばいなあ、うちが一生掛けても無理なやつじゃん」
「ただ両親は仕事であまり帰ってこなくて、今は使用人のおばさんと二人で住んでます。そう思うとちょっと広い家ですね」
「っていうか……使用人って言葉がすごいよ~……」
「紬氏の家は使用人いないの?」
「いませんよー……一般家庭にはいませんから~」
「バイオリン天才女子の家なら一般じゃないかなって思ったんだけど」
「乃々葉さんはバイオリニストを殿上人かなにかと思ってるんじゃ……」
「うん」
「違いますから~……」
「そういえば小春ちゃんってピアノ弾くんだよね? やっぱり家にグランドピアノあったりする? 紅茶とお菓子を傍らに演奏とか? してる? してない?」
「グランドピアノは昔あったのですが……ピアノのお稽古を辞める時に両親がどこかへ寄贈してしまったので、今は電子ピアノだけです」
「へっ、ピアノって今はしてないの?」
「はい。習っていたのは幼稚園年長から小学校3年生まででした」
「えっ、それはまたすごく意外だよ。せっかく小さい頃からやってたのに」
「わたしも続けたかったのですが、四年生からは中学受験の勉強が忙しくなって」
「その頃から受験勉強!? やばっ、めちゃ英才教育じゃん」
「両親はどうしても入れたい学校があったみたいで……それが今の学校です」
「すごすぎ……っていうか小春ちゃんも頑張ってえらい! すごい!」
「そ、そうですか? ありがとうございます」
「ところで~、使用人さんってどんな人なのかな~?」
「ええと、母の知り合いで六十代の優しいおばさんです。わたしのことは小さい頃から面倒を見てくれているので、親代わりです」
「小春ちゃんも信頼してるんだね~」
「はい。昔から両親は忙しくて家にいなくて、でも学校から帰ってきたら必ずおばさんが待っててくれるんです。いやだったことも、悲しかったことも、全部聞いてくれるすごく優しい人で。わたしがここでバイトを始める時も応援してくれました」
「すてきだよ、小春ちゃんの味方なんだね~」
「そういえば小春氏の親御さんはバイトを始める時に反対とかしなかったの?」
「そう、それそれ! うちの娘に接客のバイトなんて~、とか言われなかった?」
「手放しで賛成ではなかったのですが、自分でお店のことを調べて、立地とか客層とかも説明して大丈夫だってプレゼンして、そうしたらいいよって」
「なんて良い家族なんだ」
「すてきすぎるよ~」
「小春ちゃん……そこまでしてあたしたちのところに来てくれたんだね……」
「……えっと、二千花さん、大げさです」
「それくらいお姉ちゃんは嬉しいんだよぉ……!」
「わたしに姉はいません」
「小春氏のツッコミは鋭利だな」
「わたしと同類の匂いがするよ~」
「で、学校の話とか訊いていい?」
「はい。乃々葉さんのお眼鏡に適うか心配ですが……」
「ん、軽く答えてくれればいいよ。……ずばり、お嬢様学校ってどんな感じ?」
「おっ、あたしも気になる」
「うーん、他を知らないのでなんとも言えませんが、別にこう、畏まって優雅っていう感じではないですよ。むしろ親の束縛が強い分学校で発散している風の子もいますし、SNSに動画を上げているような子もいたり……もちろんイメージ通りのお嬢様もいますけど」
「へー、そういうガチお嬢様とは喋ったりするの?」
「時々です。授業とか行事で少し、とか。普段休み時間に喋るのはわたしと近い雰囲気の……なんていうんだろう、天上と世俗の間みたいなグループ?でしょうか」
「グループあるんだ。なんかうちの高校の頃と変わらないなあ、公立だったけど」
「世間が思うほどきれいな感じではない、ですね」
「所詮は十代の青い子供の集いだからね~」
「つむつむもその十代の一員なんだけど?」
「わたしは殿上人だから~」
「さっき否定した殿上人設定をずるがしこく使うな」
「あれ、っていうかさっきからことっち黙ってない? おーい、ことっちー」
……あれ? なんか今呼ばれたような……
「ことっちー! ウェークアップ! 起きて! 寝ないで!」
「…………ん? あれ……?」
「あ、やっと起きた。愛しの小春ちゃんの身の上話聞いてた?」
あぁっ!? やばっ、完全に思考飛んでた!!
こ、小春の話、途中から全部飛んでる!?
「……ご、ごめんっ! 完全に意識飛んでた!」
「こ、琴奈、もしかしてわたしの話はつまらなかったりしましたか……?」
「ち、違うからっ、ちょっと疲れて眠気が来てただけ! 今復活した!」
「琴奈氏がうたた寝とは珍しいねえ」
「琴奈ちゃんは睡眠の質が悪いのかも~」
しれっと毒舌を混ぜてくる紬さんにもツッコミを返せなかった。
いけない。せっかく小春の話を聞ける機会なのに。
…………あんなことに意識を持っていかれるなんて。
「家が新築のところまでは覚えてる……」
「よし小春氏、そこの授業中居眠りガールにこれまでの話を全部リピートで聞かせてさし上げることにしよう」
「いいよ~、やっちゃえ~」
「やっちゃえー!」
「で、では、やっちゃいます」
っ、そ、そのっ……ちょっといたずらっぽく微笑んだその表情も可愛いなあ……
「せ、先生、お願いします……」
「はい。ではノートを取りながら聞いてくださいね」
そして私は小春の基礎情報を脳内のノートに全力で書き込んだ。
弾く楽器がピアノであることを知りつつ、ピアノ歴を暗記し、受験勉強の歴史を年表にし、使用人さんについて学び、バイト応募エピソードに感心し、学校での様子にも想像を膨らませた。
いやあ、良いご両親だなあ。
子供の話をしっかり聞いて一緒に考えてくれる。すごく素敵だ。
受験勉強が四年生からっていうのはやり過ぎな気もするけど……
そういえばこの歓迎会に参加するにもご両親に許可を取ったという連絡を貰っていたことを思い出す。その辺りを考えると厳しいとも思うが、小春がそれだけ両親に対して誠実というか、親が子を心配する気持ちを慮っている証とも言える。
うん、つまり小春は良い子。好感度が更に上がった。
というわけでその気持ちを本人に伝えておく。
「という感じです。琴奈、しっかり聞いてくれましたか?」
「うん。聞けてよかった。小春のことがもっと好きになったよ」
「「「「!!??」」」」
って、あれ。なんか皆固まっちゃったんだけど……
小春がなんか顔を真っ赤にしてるし、なんかまずいこと言った……?
「え、ええと、皆さんどうして急に」
「…………ことっち、大胆過ぎる」
「へ?」
「こ、公衆の面前で、こ、こく、告白とかぁっ――!!」
え? 告白なんてしてないけど……
私が言ったのは精々小春のことをもっと好きになったくらいで……
…………
ん? 私、今、好きって言った?
…………
好きって、あれ、もしかしてそれって、そういう意味で
…………
「っっ――!! ち、違うっ、そういう意味じゃない! 人間として素晴らしくて好感が持てるという意味の好きってことだから!!」
「やー、そんなラブを感じる語り口で好きって言っておいて何を今更」
「ことっちも愛を語ったりするんだね! 素敵なことだよ!」
「琴奈ちゃん~、小春ちゃんが顔真っ赤にしてるよ~」
目を合わせるの怖すぎる。でも、見ないわけにもいかず……
「……………………こ、琴奈」
「は、はい……」
赤面して俯いていた小春が顔を上げて―
「しょ、少々大胆ではありましたが……人間性を含めて評価いただき、感謝です」
「さ、さようでございますか……」
「そして、琴奈がうっかり屋さんであることも、よくわかりました」
「…………」
あれ、これもしかして間抜け人間として認定された?
小春に馬鹿なやつって思われた?
「小春ちゃんも不器用感があって初々しいよ~」
「うち、こういうの初めて見た」
「あたしもまじまじと観察するのは初めてだなー」
外野の声が妙に明瞭に聞こえてくるのが悔しい……
―――
「じゃあ気を取り直して次の話題にいくよー!」
「いぇ~い」
「今度は逆! 小春ちゃんからあたしたちに自由質問コーナー!」
「わたしの交際経験を問いただすのはやめてね~」
「どの口が言ってるの?」
二千花の制裁はしっかりと機能していた。
そのスキルでさっきの気まずい空気も良い感じに掻き消してほしい。よろしく。
というわけで顔色が元に戻り冷静になった小春は、案外素早く最初の質問を二千花に投げかけた。たぶん訊きたいことを事前に用意してきたのだろう。
「えっと、じゃあ二千花さんに質問です」
「どんと来い! お姉ちゃんに任せて!」
「姉はいませんが、年齢的には姉となる資格がある二千花さんに質問です」
「フォローしてくれてる……優しい……」
「二千花さんはすごくおしゃれだと思うのですが、どこでそういったセンスを養っているのでしょうか? わたしには縁遠すぎて……」
お、これは私も聞いたことない。
お洒落女子への道はどうやって切り開かれるのか。
「……実はさ、あたし自身はファッションとか詳しくないんだよね」
お恥ずかしいことに、と妙に丁寧な補足を入れてから二千花が続ける。
「お洒落に興味はあったんだけど縁がなくて。でも中三の時にできた友達のお姉さんがスタイリストでね、その子と一緒に買い物に連れて行ってくれて、アパレルの店を梯子しながら服とか選んでくれたんだよね」
「ス、スタイリスト……」
「かっこいい~」
「それからも四半期に一回はその子とお姉さんとあたしで買いに行ってね。あれこれ試しているうちになんとなくファッションが身近になってきたの」
「すごいね。プロが選んでくれるってことでしょ?」
「そうそう。で、プロに関わってるうちになんとなく基礎も掴み始めて、ってこと」
そうか、やはり実践なのか。
まあ私はファッションなんて欠片も考えたことないけど。
「そういえばさ、服とかって結構高くない? 予算大丈夫?」
「…………あー、それがさ、ちょっと人前では言いづらいんだけどさ」
二千花が頬を掻いて気まずそうな表情を浮かべた。視線が逸らされる。
もしかして裏でデイトレードとかで一攫千金でもしているのだろうか。
「実は、父親がさ……ものすんごい親馬鹿で」
「はあ」
「あたしが友達と服買いに行くって言ったら……一万円札を六、七枚渡されて」
「ろく、なな、まい」
あ、小春の口調が途切れ途切れに戻っちゃった。
「あの人はね……我が子のことが好きすぎて、子供のためにお金を払いたくなるタイプの親馬鹿で……断ろうとしたら涙目で抵抗されて……」
「うわあ……うちの知らない親子関係だ……」
「それで服も自由に買えたと。って、もしかしてさっき言ってたこの部屋の輪飾りをお父さんに作らせたっていうのも、まさか」
「うん、あたしがリビングで作ろうとしてたら俺もやるって参戦してきて爆速で作り始めて……そのまま全部やらせちゃった」
「かなりやばい親馬鹿だね~」
「今だけは紬さんに同意しますよ」
「わたしも……」
「うちも」
あの二千花が言葉に詰まりながら喋るほどの親馬鹿。
これもまたすごい。一般家庭ではまずあり得ない類の愛情の注ぎ方だ。
小春のご両親も決してそういうタイプではないだろう。
そして、このあまりの親馬鹿カミングアウトに会場の空気は引き攣ってしまった。
意気消沈を通り越して憂鬱になっている過保護プリンセス・二千花を憐れむ会。
そしてそれを軌道修正できる技術を持った二千花自身が遠い目をしているため空気は中々元に戻らず、結局は毒舌スキルを司会スキルに転換した紬さんの主導で会話が再開した。
「じゃあ気を取り直して~、次は乃々葉さんへの質問タイム~」
「うち? そんな面白い話はできないけど」
「えっと、乃々葉さんにはお料理のことを聞きたくて」
「よしきた任せろ」
「変わり身が早すぎるね~?」
小春の声がちょっと明るくなった。よし。
「わたし、いつかお菓子を自分で作ってみたくて」
「ほうほう」
「こう、例えば、チョコレートとか」
「ふむふむ」
「でも、お料理ってあんまり得意じゃなくて、教則本を見てもわからなくて」
「うんうん」
「こういうちょっと苦手な人って、どうやったらうまくなるんでしょうか」
「練習!」
「…………そ、即答でした……」
「手数こそ正義、質より量、鍛錬繰り返すべし」
「あ、ありがとうございます……」
あ、小春の声がちょっと暗くなった。
正論のアドバイスだけど初心者には不安だろうな。たぶん。
「にしても小春氏がチョコ作りに興味があるとは。てっきり高級フレンチを食して満足する側だと思っていたよ」
「もしくは高級料亭の和食とか~」
「そんなすごいものは食べませんから……」
そうか。まあ子供がそんなの毎日食べてたら味覚壊れるだろうな。
と納得しつつ、そこで質問回答済みの乃々葉さんが不意に質問を返してきて――
「ね、チョコ作りたいって思ったのはどういうきっかけから?」
それは私も気になった。使用人さんがいるならお菓子は作ってくれる可能性もあると思うが、親御さんがそれなりに厳しいのであれば間食にはうるさそうな気がする。その反動かな? あるいは学校で友達に勧められたとか? SNS映えとか?
さて、小春の気になる回答は――
「………………」
あれ、固まっちゃった。
「………………」
なんだか俯き加減でじっとしてる。
もしかして、答えるの嫌だったのかな。
「あ、えっと、小春氏、別に無理に答えなくてもいいからね」
「うんうん~、乃々葉さんの興味関心を満たすことに寄与する義務はないよ~」
「紬氏は少し黙ってくれないか?」
「やだよ~」
「むむぅ……」
「小春、大丈夫?」
小春の姿を一言で表すと、押し黙る、という動詞が適切だった。
なにかを我慢しているような堪えているような、そういう感じ。
ただ、数十秒ほど経ったところでゆっくりと顔を上げて。
「……そう、ですね。今は秘密にしておきます」
「というわけで乃々葉さんの時間は終了です~」
「いちいちむかつく言い方だな」
「小春ちゃんへの理解が足りないんだよ~」
「紬氏も同じでは?」
これでいいの……かな?
とりあえず小春の表情はさっきまでと同じ感じに戻ったし……
「じゃあ次はわたしへの質問だよ~、ちなみに恋愛経験はないよ~」
「つむつむ、無いんなら最初から匂わせないでもらえる?」
「あっ、二千花ちゃん復活した~」
「いつの間に」
「っていうか紬さんはバイオリン一筋で交際経験はなさそうにしか見えませんけど」
「琴奈ちゃんひどい~……」
「さっきまで毒舌を連発していた紬さんの方がひどいですね」
「まったくだ」
おっ、小春も楽しそうにうんうん頷いている。完全復活。
そしてにこやかに口を開いて紬さんへの質問を発して―
「紬さんには特にないです」
「…………ふぇっ?」
「紬さんが毒舌とバイオリンの天才であるという情報で満足しています。なので特に訊きたいことはありません」
「そ、そんな~、わたしも小春ちゃんにインタビューされたかった~」
「ド頭から他人の交際経験を訊こうとしたつむつむへの有罪判決だね」
「有罪だな」
「有罪」
「うわぁぁん……」
小春もすっごいにこにこしてる。
根に持つタイプであるという新情報を密かに入手した私はホクホクだ。
今日初対面の紬さんを相手に見事やり返したその手腕、評価に値する。
さて、二千花・乃々葉さん・紬さんへの質問が終わったし次のコーナーかな?
二千花はどういう企画を用意してくれているのか気にな――
ん? なんか私の方に視線集中してない?
あれ、なんで小春もこっち見てるの?
「さて、ではことっち。いよいよ君の番だね」
「うんうん~。小春ちゃんが琴奈ちゃんを質問責めで殺しにかかるよ~」
「琴奈氏、生きて帰れるように頑張れ」
あ、私の番だった。
「琴奈、たくさん訊かせてもらいますね?」
隣の小春が今までに見たことのない嗜虐的な笑みを浮かべている様に、四月の屋内を恐ろしいまでの鳥肌と寒気が襲ったことは言うまでもない。
小春が質問に答えている間、意識を綺麗にすっ飛ばしていた代償は予想よりずっと大きかったのだとこの時知った。小春は、根に持つタイプ。理解。




