二十
「琴奈さん、肩肘張らずゆっくりしてくださいね」
「は、はい……」
待たれてた。
それはもうびっくりするくらい場を整えた状態で待たれていた。
どうして待ち合わせの三十分も前からどこの馬の骨ともわからない小娘を待ってるんだろう。わからない。この親子は底が知れない。そういう意味では似ている。
というわけで階下へ下りてリビングまで出向いたところ、麻子さんの姿はなく、小春のお母さんが優雅に紅茶を嗜んでいた。
その人は私がリビングに踏み込んだ瞬間に、「待ち構えていました」と言わんばかりの静かな笑みを浮かべながらこちらに視線を向けてきたものだから、背中にぞわっと鳥肌が立った。
その振る舞いに思わず足が固まり、逃げられないことを悟った。
こんな使い古したパジャマ姿で未来の義母との対話に臨むことになると確定した瞬間だった。正直、頭が真っ白になって数秒は思考が止まった。
「お茶、飲んでくださいね」
「……あ、はい。では、お言葉に甘えて」
座るように促された席には心地よいぬるさの煎茶が用意されていた。
熱くも冷たくもない絶妙な温度で、5月の夜のリビングの室温とマッチしている。
どう振舞えばいいかわかりかねて、とりあえずお茶を頂きながら部屋を見渡す。
落ち着いた橙色を発する灯りが照らし出したリビングは、夕食の時の白色蛍光灯で作られた日常的な空間とは違い、どこかのラウンジに迷い込んだような錯覚を与えてくる。ジャズとお酒が似合いそうなくらいメロウで大人な空間。
この様子だけ見ると、なんかいかがわしい雰囲気がするっていうか、夜のお店に連れてこられた十代と連れて来た大人みたいな……
って違う。今日はそういうのじゃないし、そういう経験もない。
小春の話をするために来たんだよ。
という思考が終わったのを見計らったかのように、小春のお母さんが口を開いた。
私の脳の稼働状況を読み取れるのかもしれない。それも小春と似ている。
「ところで琴奈さん、小春はもう寝たでしょうか?」
「え、ええ。ついさっき眠くなったと言って布団に入りました」
「そうですか。なら都合が良いです」
優し気な雰囲気はそのままで、どこか冷静さも見え隠れするその様子に、やはりそれなりにセンシティブな話をするんだろうなと感じた。微笑んではいるけど、その奥になにか真剣なものが見える。
だから、自分からジャブを打ってみる。
「……えっと、あの、今からお話しするのって小春のことですよね?」
「そうです。琴奈さんにぜひお聞きしたいことがありまして」
「わ、私でよければ」
「ええ。……ああ、そうです。私のことは悠里と呼んでくださいね」
「は、はい。では、悠里さん」
う、うん。大人相手に名前呼びって緊張する。
でも、深い話をするにはこれくらい踏み込まないと。
「まずは、私から琴奈さんにお礼を言わなくてはなりません」
「……へ?」
「琴奈さん、小春のパートナーになってくださりありがとうございます」
え? お礼?
「琴奈さんもご存知の通り、あの子は人と自分の間に一線を引いて、周囲を俯瞰して見るようなタイプの子です。そんな小春が、自分の内側に引き込んでもいいと思える方と出会い、こうして私に紹介してくれたことが嬉しいのです」
……そうか。そう思ってくれるのか。
貧乏人ごときがうちの娘に~って内心思われてるのかもって想像してたけど、案外そうでもなかったらしい。嘘をついているようには見えなかった。
「な、なるほど。といいますか、私も小春と出会えたことで心が明るくなったので、むしろ私こそ感謝しないといけないと思います」
「そう、ですか。……なるほど。そのように聡明な方だからこそ、小春も距離を縮めることができたのかもしれません」
「聡明とは程遠い世俗の人間ですが……」
「ご自身をそう評する方は大概が聡明ですよ」
「そうでしょうか」
そうでしょうか。世俗を名乗ってる馬鹿は結構いますけど。
……ともかく私への印象は悪くないらしい。
ならそれでいい。怖がらずに落ち着いて話せる。
「そこで伺いたいのですが、琴奈さんから見た小春の印象はどうでしょうか?」
「印象ですか。それは人間性や気質みたいな面でしょうか?」
「ええ、そうですね。もちろん小春の可愛さを語っていただいてもよいですし」
「っっ――!! ……まあ、それは、たいへん可愛いと思いますが」
「ですよね。親馬鹿ではなくて安心しました」
「……」
えっと、この親子はもしかしてところどころ頭のネジ抜けてます?
こういう重要でもないような絶妙なところでアホ発言をし始めるのは遺伝ですか? それとも親馬鹿ってそんなものなの?
まぁいっか。印象の話をしないとね。
「達観している、というのが第一印象です」
「詳しく教えてください」
「年齢以上の人生観や他者への視線を持ってますよね。小春や私の世代の子供が、人に何かを言ったり、人の言葉で何かを考える時ってどうしてもバイアスが掛かるというか……自分の感情や思考が全ての中心になるじゃないですか」
「ええ、子供とはそういうものだと思います」
「でも、小春は俯瞰してます。自分も他人も全て俯瞰して、どこにももたれ掛からずにただ冷静に考えることができる人って感じです」
私の人生の危険性を見抜いて助けてくれたこともそうだし、バイトをしている時や雑談している時もそうだし、小春はとにかく物事を輪の外から静かに見てる。
そこがすごいし、怖いとも思う。
「私は一応それなりに面倒な人生を送ってきました。小春に言わせちゃいましたけど、幼少期からネグレクトで自分の面倒を自分で見るしかなくて、自分と周りがどう違うのかを嫌ほど実感させられて、その中で他人を冷めた目で見るようになったんだと思います」
「そうなんですね」
「でも、小春はそんな私よりもよっぽど先を行っていて、冷めた目で見るんじゃなくてただ単純に中立の場所から見てるっていうか。だから、逆に不安になるんです。小春がそこまで達観した子に育ったのはどうしてだろうと」
そう、これが一番気になる。
周りと一線を引くようになった経緯は知ってるけど、その先の何が小春を「歳相応」のその先まで駆り立てたのかがわからない。
「そうですよね。……琴奈さんが、そこまでを見抜いてくださっていて、安心しました。あと、琴奈さん自身も十分達観されていますよ」
「……では、そう思っておきます」
少し目を伏せて言葉を続けた悠里さんの姿から、たぶん私の欲しい回答は既に持っているのだろうとわかった。
――なら、今この場でその答えを聞いてしまいたい。
という気持ちは言わなくても向こうに伝わっているようだった。
とても娘と同い年の子供に向けるものではない表情で、悔恨という言葉を滲ませる瞳で、悠里さんはこう言った。
「小春が達観した子になった理由は、私と夫― つまり両親にあると思っています」
その瞬間にドキッとした。自分の両親だった何者かのことを思い出した。
でも、小春のご両親はそうじゃない。あいつらとは違う。
そう言い聞かせて一度落ち着く。
「琴奈さんは、小春が私と話している様子を見て、どう思いましたか?」
「……さっきのこと、ですよね」
「はい」
「最初に思ったのは、親御さんにも敬語なんだなって。あと、会話がにこやかだなって思いました。言い方は悪いですけど、外行きの構えっていうか」
「ええ。琴奈さんもそう感じてもらえましたか」
私もってことは、悠里さんもそう思ってるわけか。
「小春が琴奈さんと喋っている様子を見て、正直驚きました。小春が敬語抜きで、あんなにも気楽に会話ができているというのが驚きでした」
確かに。二千花や紬さん相手ではああはならない。
私相手にだけ敬語が抜けて、フランクな口調になる。
今思い出すと、私がカレーをこぼした時に小春が「今日の琴奈はちびっこみたいだね? わたしがお姉ちゃんになってお世話してあげよっか?」などと言い出したのは驚きだろう。学校で一線を引いてクラスメイトを近付けない小春が、自分から冗談を言って姉を自称し始めたのだ。
……そして残念ながら、フランクに喋る対象にご両親は含まれていない。
その事実を踏まえると、この先どんな話が来るのかは想像できる。
「琴奈さん、お恥ずかしい話ですが聞いていただけますか?」
「もちろんです。小春に関する話はなんでも聞きます」
「……ありがとうございます。では、長く喋りますね」
私が小春に向かって自分の人生の歴史を長々と喋ったように、今日は私が人の話を聞くことになる。でも、それが大事だと思う。
「私たちは考えが甘い夫婦でした。小春が産まれた後、交互に育児休暇を取って二人で協力し合いながら小春を育てようと思っていたのですが」
「それは素敵なことです」
「ええ。ですが、ご存知の通り我々は二人とも企業役員をしていまして、思うように休暇が取れないどころか、復帰してすぐに激務に追われることになりました」
企業役員、それはもう想像でしかないけど地獄だと思う。
どこかの就活ニュースサイトで見た「役員は会社が第一の仕事です。企業のために人生を捧げる代わりに報酬と地位を得るものだと考えてください」という企業メッセージを思い出す。
役員は企業を守り、従業員とその家族の生活を守らなくてはならない。
それがどれほど厳しい義務であるかは想像してもしきれない。
「時代が時代でした。色々とどうしようもなく迫られるものが多く、我が子を育てるという役目を中々果たせず、小春の元へ帰る余裕すらなくなっていきました」
「それはお仕事の都合ですからやむを得ないと思います」
「……そう言ってもらえるとありがたいのですけど、小春に十分な愛情を注げなかったことは事実です。そして、私たち夫婦が一緒にいられない代わりに、麻子さんの力を借りましたし、せめて自分たちの稼ぎで少しでも良い学校に進学できるように、あるいは色々な経験を積んで人生の進路が増えるようにと考えました」
「そういえば、ピアノを習ったことも、四年生から学習塾で受験勉強を始めたことも小春から聞きました」
「はい。とにかく未来の可能性が広がるように、そして未来を自分で切り開けるような強い子に育つようにと考えたのです」
「なるほど。確かに今の小春はそういった強さを持っています」
「今思えば、小春の意思を聞かずに道を誘導してしまったことは失敗でした。ただ小春自身を考えなかったことだけではなく、もうひとつ失敗があります」
ここだな、と思った。
私が知りたかったことは、私が向き合わないといけないものは。
「小春はとてもよくできた子です。親がほとんど世話をせずとも、親の期待に応えてくれる子です。だからこそ、小春は自分の気持ちを隠すことが上手くなってしまったのだと思います」
そっか。私の感じていた小春への違和感はこれなんだ。
今までに何度も見てきた、小春が押し黙る姿。
それは自分の気持ちを隠したいのに、上手く隠し切れなくて、喉元まで込み上げてきているのを必死に我慢している姿。きっとそういうこと。
バイト先で、お泊まりで、朗らかで理知的な小春が見せた不意の沈黙。
そして、ついさっき小春の部屋で見たウォークインクロゼットの中身。
それが組み合わさって、パズルみたいに頭の中で解答を形作る。
「自分の気持ちを隠して、親や周囲が望む言動をすることに力を割く。そのために周りの様子を徹底的に窺うようになった。そのことが小春を達観した子供にしてしまった原因だと考えています」
「わかります。周りに合わせるために必死になるほど、他人の一挙手一投足に集中しますし、その中で人間を分析する力がつきます」
「そうですよね」
「はい。そして、その能力が異様に伸びると、ある地点を越えた時から人間観察を通り越して心理学や行動原理みたいな方向に振り切れるんですよね。それはもう人を天から見下ろして観察する神の視点みたいなもので」
「……琴奈さんもそうなのですね」
……うん、まあ。
私の経験で話をしているから全人類共通なのかは知らないけど、人間について考えすぎるともう俯瞰して一歩引いて見るようになっちゃう。
でも、小春の場合は私なんかよりよっぽど達観してる。
たぶん学術書とか色々読んで勉強したんだろうな。経験と知識が両方ある。
「社会で働いていると、同世代や年上でそういった達観した方に時折出会います。その多くが様々な企業や役職、業種を経験している方で、幅広い知識と多くの経験からそういった視点を身に付けた方々です」
「世界を広く知ることは俯瞰視点を維持する支えになります」
「ええ。ですが、小春はこの15年の人生でそれに近しい境地まで辿り着いてしまっているように思います。それは間違いなく親の育て方の影響です」
私だってそれなりに苦い思いをして、人を俯瞰して見ていると思っていた。
でも、小春はそれ以上に高い場所から世界を広く見ている。
そして、その背後には自分の気持ちを隠し、望み通りの子供として振る舞うようになってしまった小春の無意識の観念があった。
「私に対して敬語で― まるでビジネスのような口調で話しかけてくる小春の姿は、不在である私たちが小春に押し付けてしまった道の通過点です」
「……そう、ですか」
「小春は、麻子さんにも、私たち夫婦にも、敬語で丁寧に明るく接してくれます。でも、本来子供なんてそんなに良く出来た人間にはならないと思うのです」
「そう思います。私も同世代の様子を見てきて、きっとそうなんだと思えます」
小学校時代、家事をするために早く帰らないといけない中、楽しそうに遊びの約束をしている同級生、親への文句をたくさん言っているクラスメイト、先生に歯向かって暴れているような子― 色々な子を見てきた。
中学校時代もそうだった。むしろ思春期が始まって、親へのあたりがきつくなる子の話を聞いたし、両親への愚痴を私に話してくる友達もいた。
でも、小春はそうじゃない。
子供なのに、思春期も経験しているはずなのに、ご両親に対して嫌な顔ひとつしないし、文句も言わない。反抗期が来ないなんて逆に怖い。
それはきっと、ご両親のことをもはやビジネス上の関係の相手と認識しているからなのだろう。自分の気持ちを正直に言う相手じゃないし、自分が心を許せる相手でもないと認識している。
「小春の言葉を聞いていると、ご両親のことすら俯瞰して喋っているように思えました。まるで血の繋がっていない他人かなと思うくらい冷静に語っていて」
「やはりそうなのですね」
「そういう意味では私はイレギュラーですね」
イレギュラー。良い意味でね。
「そうです。だからこそ、琴奈さんとお話をしたくてこの場を用意しました」
「なるほど」
「もう察していただけたんですね。やはり琴奈さんも聡明な方ですよ」
「……ありがとうございます」
そこでもう想像がついた。
何を言われるのか、私が何を期待されているのか。
「親失格であることを承知の上で、琴奈さんにお願いがあります」
「……頭は下げないでくださいね」
「ええ……」
だけど、悠里さんの願いは私の願いでもある。
しっかり受け止める。
「小春の本当の気持ちを、見抜いて、受け止めてあげてほしいのです。今、私たち夫婦にはそれを果たす力も権利もありません。麻子さんも同様です」
「小春が隠し続けてきた自分の気持ちを吐き出せる相手は、吐き出してもいいと思える相手は、琴奈さんしかいないのだろうと思っています」
「我が子を追い詰めてしまった私たちには決してできないことです。今から小春が心を開いてくれる、なんていうのは甘い考えだと自認しています」
そうだよね。だと思った。
そして、それは私が望んでいることでもある。
私を助けてくれた、私の心も人生も明るい方へと引っ張ってくれた小春に、その中で抱えている苦しみを見つけ出して受け止めることで恩を返したい。
心の形が似ている私にしか、小春が自分の気持ちを少しずつ見せてくれている私にしかできないこと。血縁者にも家政婦にもクラスメイトにもできないこと。小春のパートナーである自分にしかできないこと。
悠里さんの目をしっかり見て答える。
「もちろんです。私もそうしたいと思っていましたから」
「……ありがとうございます」
「ただ、一個だけ言わないといけないことがあります」
そう、ここだけは言わないと。
「小春の本当の気持ちは、わかったとしてもお教えすることはできません」
「ええ」
「お二人が報われることはありません。私は小春が報われるために行動します。それだけは守りますので」
「わかりました。今の私たちがそれを望む権利はありません」
「……なら大丈夫です」
理解のあるご両親でよかった。
小春の本当の気持ちは、私だけが知ることができるものだ。
本人が「この人になら言ってもいい」と思った上で話してくれることを、そう思っていない相手に伝えることはできない。
どうしようもない仕事というやむを得ない事情があったとはいえ、子供を追い詰めた親の責任の取り方として、それは受け入れてもらわないとね。
さて、じゃあ小春の気持ちを知るために今やるべきことは―
「では悠里さん、今から幼少期の小春について知っていることを教えてください」
「え、ええ。どんなことについて喋ればいいでしょうか」
うむ、そうだね。
やっぱり子供といえば遊びだし、好きだったものについてかな。
「小さい頃に好きだったものや遊んでいたおもちゃについてお願いします」
「そうですね……麻子さんに聞いた話ですが、人形遊びは好きだったようです」
「人形はご夫婦で買い与えたんですか?」
「それも少しありますし、麻子さんに大半を任せていたので、恐らく小春の様子を見る中で好きそうなものを優先的に買ったのだと思います」
「人形遊び以外はありますか?」
「ぬいぐるみと話をするのも好きだったようです」
うん、年頃の子供にありそうな話だね。
私はどうだったっけ? ぬいぐるみは持ってなかった気が。
「それは何歳くらいの時ですか?」
「幼稚園の頃だったと思います」
「なるほど、では幼稚園時代に他に好きだったものはありますか?」
「そうですね。時折家に帰ってこれた時は、小春と一緒に子供向けのアニメを見ました。小春が一緒に見ようとねだってきまして」
「そうなんですね。子供向けだと、日曜の夕方の作品とかですか?」
「いえ、日曜の朝に放送しているような」
「ああ、そっちでしたか。小春はそういうのも好きだったんですね」
「好きなヒロインの戦うシーンに見入っていたのを覚えています」
「幼い頃の小春の無邪気な感じが伝わってきますね」
ちなみに今、彼女は深夜アニメの可愛い女の子を見て楽しんでいます。
見入る対象が変わったってことだ。
「後はありますか?」
「家に帰ってこれる時は大概お土産を買って帰っていたのですが」
「全国を飛び回っておられるんですよね」
「ええ。飛行機と新幹線で身体を苛め抜く日々でして……」
「お疲れ様です」
「お土産を持っていくと小春は遠慮しがちに食べるのですが」
「そこでもご両親の様子を窺っているわけですね。それは小学生時代ですか?」
「そうですね、小学生になってから今までずっとです」
「根が深いですね」
「ただ、時折遠慮の色が薄いことがあります」
「どんな時ですか?」
「洋菓子を買っていった時ですね。高価なスイーツを買った時とか」
「まさかスイーツの値踏みをしてるわけじゃないですよね。だとしたら単純にお菓子が好きなんでしょうか?」
「ただ、和菓子やスナック菓子だと特に反応がなくてですね」
「うーん……だとしたら洋菓子限定で嬉しくなるんでしょうか」
確かにバイト中でもケーキを見ると嬉しそうにしてるなあ。
洋菓子大好きなのかな? そうかもしれない。
「それくらいでしょうか……小さい頃となると、記憶も薄れているもので」
「はい、大丈夫です。ありがとうございます」
「なにかのお役に立てばよいのですが」
「立ちますよ。結果はお伝えできませんが、役に立たせてみせます」
「……ありがとうございます、琴奈さん」
うん、じゃあ今日のインタビューはこれくらいで。
気になったらまた連絡取ってみればいいし。
あっ、麻子さんには明日時間があれば聞いてみようかな。
でも小春が一緒にいるとダメか。じゃあまた今度。
とはいえここまで聞けたら十分だと思う。
ここまでの話と今まで見聞きしたもので大体の想像がついた。
ならば次はこの導き出した解答の精査と、どうすれば小春がそれを私に言ってもいいと思うようになるのかを考える。
ただ……今日は眠いし、続きは明日にしようかな……
ふぁぁ、この眠気だったら小春と一緒の布団でも緊張せずにすぐ寝れそう……




