十四
という決意を固めた数時間後、なぜか私はデートの途中なのに自宅に戻っていた。しかも私の後ろには小春がにこにこ顔で立っていて―
「で、ではどうぞ……」
「うん。お邪魔します」
三年以上ついぞ誰一人として招き入れることのなかった自宅にとうとう侵入者が。
ああ、私の大事なサンクチュアリィが……
でも、なぜか小春ならもう見られてもいいかなと思ってしまった。
小春ならここまで踏み込んできても許せると感じてしまった。
小春が初めて誰かを自宅へ招いたように、私もまた同じような感覚でこの事象を俯瞰しながら受け入れているのだと思う。
では、どうしてこんなことになってしまったのか。
それを振り返るにはプラネタリウムを出た後の行動を整理しなくてはならない。
まずレストランで昼食を摂った。
二人とも小食なのでランチセットではなく単品でパスタを頼んで、優雅にもコーヒーなどを嗜みながら雑談をした。私はコーヒー苦手だから紅茶にしたけど。
プラネタリウムの感想から始まり、私たちの似ている部分と思われる点(ひとりで楽しむ方が好き、落ち着いた環境が好き、などなど)について語らった。
そこで判明したのは、やはりそういった点が共通の嗜好として存在しており、自分一人と創作物や芸術といったものとの関係に心の安らぎを見出していた。
一方、ずっと一人でいるのが好きかと問われると、私と小春では微妙に違う。
私は週一回か二回のバイトで店員同士で話していればそれで十分だと感じる。
小春はそれだけでは少々物足りなく、家で麻子さんと話すことで人と関わるという欲を満たしている。
人は一人では生きていけないのは紛れもない事実だけど、その中でどれくらい人と関わりたいと思うかの差は、似ていると思った私たちの間にも存在していた。
だけど、それもまた小春という人間を知るのに大事な情報だと思った。
そして続けて駅から少しだけ南へ散歩し、みらい美術館という小さなガラス工芸の美術館に立ち寄った。
というのも、このまま横浜駅やみなとみらい方向へ行ってもよかったけど、人混みは避けたいという意思が一致したためにこの選択肢を取った。人が多いと疲れるからね。やっぱり静かな場所がいい。この点は完全一致である。
一度以前に来たことがあったので迷わずビルの中へ踏み込み、入口で入館料を払えばもうそこはすぐに展示室。小春を連れて静かに入室すれば、他のお客さんはひとりふたり程度で、貸切に近いような空間になっていた。
小春とアイコンタクトを取り、それぞれのペースで室内を見て回る。
照明を弱めにして、いくばくか幻想的な、劇場的な雰囲気も作っているこの美術館で鑑賞するガラス作品はすごくドラマチック。
前回はひとりで回ってたけど、小春も同じように作品を見てなにかを考えて過ごしているんだなあと頭の片隅で囁く自分がいて、それがなんだか嬉しいというか、ひとりの楽しみとふたりの楽しみが両方あるんだなあって思えた。
そして美術館を出た時点で十四時少し前。
もう少し長く遊べそうだったけど、これ以上人の多いところに行くと疲れちゃうかもという小春の意向でこのまま帰ることにした。新高島から北へ、電車で揺られる。
ただ、東横線が菊名駅を過ぎたあたりで小春が突然こう言った。
「このまま帰るのも寂しいから琴奈の家に寄ってみたい」
今までの自分だったら即座に拒否していた聖域への侵入予告、いや、侵入意志の発露に一瞬動揺したが、小春が首をちょこんと傾げてこちらを見てくるものだから、その可愛さに心臓を撃ち抜かれて頷いてしまった。
つまりはあれだ。不可抗力ってやつだ。
というわけで元住吉で二人一緒に下車し、自宅マンションまで丁重にご案内申し上げ、こうして部屋の扉を開けてしまったということで―
―――
「お邪魔しますー」
「どうぞ、何もないところだけど」
玄関から居間へと続く廊下を歩く。
その左側には浴室やトイレ、洗濯機置き場が並び、右側には洗面台に冷蔵庫・電子レンジ、そしてキッチンが位置している。単身者用マンションの一般的な配置。
その先は引き戸が遮っている居間。
この部屋を「つまらない」とか思われないか不安だけど、今更引き下がれない。
至って平静を装って扉を開けることにして―
「じゃあ改めて―― 三度目のお邪魔します」
「はい、ようこそ。そこのテーブルに荷物置いていいよ」
「…………」
とりあえず私も鞄はそこらへんに置いて…………って、あれ。
小春が固まってる。荷物持ったまま石像みたいに直立してるけど。
ぼけーっと部屋を眺めていた。小春にしては珍しい硬直。
ということはやはり生活感のない部屋に半分呆れているということか。
「えっと、琴奈。ここ、リビングだよね」
「うん。といっても食事以外に使わないし、メインは仕切りの先の寝室」
「そ、そうなんだ」
まあここが生活感ゼロなのは仕方ない。
水回りと寝室部分を分けるための空間として機能してもらっているからね。水回り特有の空気や台所の匂いみたいなものがベッドのある空間に侵入してくるのが苦手で、そういう意味で居間を緩衝材扱いしてる。緩衝材?
ここにあるのはウォークインクロゼット、小さいテーブルと椅子、掃除機くらい?
まあ別にそんなに物が多いほうではないし。
ただ、呆れさせるのも忍びないので大人しく寝室も見せることにする。
「じゃあ寝室も披露ということで」
「……えっ、あ、うん」
「完全手動だけどこういう風に開くんだよね。はい、では荷物を置いたらどうぞ」
とりあえず荷物持ったままは大変だと思うのでテーブルに置いてもらって、メイン会場であるところの寝室へ向かうことにしまして。
「こ、ここが、琴奈の部屋」
「うん。いいとこでしょ、すっきりまとまった機能性のあるお部屋です」
「…………そ、そうだね」
あれ、思ったより反応が芳しくない?
我ながら綺麗に整理された良い部屋だと思うんだけどなあ。
六畳の寝室部分は右奥に畳ベッドと布団、右手前にアコギとそのスタンド。
左奥には勉強用の机、左中ほどにはノートパソコンを常備している書斎のデスク、左手前は教科書や参考書、勉強のための書籍、あとは公的書類や賃貸の契約書をまとめてある本棚。その横に通学鞄を置いてある。
うん、とてもスマート。
スマートハウスという概念を名乗るべきは我が家に違いない。
ネット上の"一般女子"とやらのカオスが極まった雑多な部屋とはわけが違う。
これは小春も感心してくれるはず……と思ってたんだけど、なにやら渋い顔をしてこちらを一瞥してきた様子を見るにそうではないのかな。
「あのさ、その、物少ないね」
「うん。物は少ない方が好きだし、ミニマリストじゃないけど身軽な方がいいし」
「ちなみに、服とかはどこに……」
「畳ベッドの下が収納だから全部そこに入ってる」
「えっ」
「見ていいよ? 別に小春に私物を見られたところで今更何もないし」
「…………じゃあ、失礼します」
そう、ベッドの下が収納っていうのは素晴らしいと思う。空間の有効活用。
左右に一段ずつ用意された引き出しを小春が開ける。
左側は制服や体操服などの学校関連と外出用の私服が夏冬でまとめてある。
右側は部屋着や下着にタオル類、その他諸々をしまってある。こっちは通年ね。
しゃがんだまま中を観察し、顔を上げた小春はなぜかちょっと青ざめた顔で―
「えっと、じゃあコートとかはどこに」
「さっき見てもらったウォークインクロゼットの中だね」
「ここに入りきらなかった洋服は」
「ん? 私の手持ちは全部ここに収まるよ?」
「えっ、服はこれだけしかないの?」
「うん。別に服がたくさんあっても意味ないし、お金の無駄だし」
「…………そ、そっか」
持ってるものは少ない方が気楽だよ、やっぱり。
小春の部屋もそこまで物は多くなかったよなあ。
ってあれ、小春がいつの間にかウォークインクロゼットも見に行ってる。
別に面白いものはないけど……コートとか掛けてあるけど、あとは夏用の布団を圧縮して片付けてあるくらいだったはず。大きめの鞄もあったかな。
ん、また神妙な顔をしてるなあ。
確かに物は少ないというか、まあちょっと少なすぎと思わなくはないけどね。
「……琴奈はさ、何かが欲しいとか思わないの」
「お金なら欲しい」
「お金じゃなくて物体とか」
「別にないよ。物体で欲しい物なんて安眠できる家と布団、後はアコギくらいかな」
「さっきのギターは、お店で弾いてるやつとは違うよね」
「うん。元から持ってるのが寝室に置いてある中古品。そのあとメーカーの抽選企画で当たったのがお店で弾いてる桜色のアコギね」
「じゃあ、今は欲しいものはないの?」
「お金以外はないよ」
正直に答えてしまった。
でも小春に嘘をつきたくないし。
「じゃあ何か外食とか娯楽とかにお金を使いたいとかはないの?」
「ほぼない。例外的に今日行ったプラネタリウムとかレストランとか。どうしても気分転換したいって思う時は使う。あとは実用書の読書くらい」
「…………それで、楽しいって思う?」
「楽しいかどうか……うーん、別に考えてない。楽しい気持ちならバイトで得られるしそれで十分。そこまで楽しく生きたいわけでもないし」
「そ、っか」
なんだか歯切れの悪い返事だけを残して、小春はまた寝室の方へ戻っていった。
おもむろに書斎の椅子に座ったかと思えばデスクに肘をついてぼーっとしてたり、勉強用の机の前に座れば次は引き出しを開けて文房具をしげしげと眺め、今度はベッドの端っこに腰掛けて部屋全体をぐるぐると見回したり。
うーん、整理整頓のクオリティは小春の部屋くらい高いと思ったんだけど。
そこじゃない何かが気に入らなかったのかな。
でもそれを教えてくれないっぽい。
だってこっちを振り向いた小春は全然違うことを急に口にして―
「琴奈」
「うん」
「今度ここに泊まりに来ていい?」
「…………へっ?」
え、お泊まり?
「うちの親はもう琴奈のこと知ってるから、大丈夫だよ」
ん? 私はいつの間にかご両親に紹介されてるってこと?
「シフトの前の日がいいかな。そうしたら一緒に出勤できるし。あっ、それなら今晩がいいかも、明日はシフト同じだもんね」
えっ、なんか勝手に話が進んでるんだけど。
「今から帰って準備するから待ってて。戻ってくる時刻がわかったら連絡入れる」
ま、待って。ちょっと、私の家なんだけど、家主の意向が、まだ、え、ちょっ
「夕飯と朝ご飯はわたしが買ってくるから準備しなくていいよ」
あ、それはありがた……って違う、待って、何か言わないといけないのに
「琴奈はベッドを整えて待っててね。あとお風呂は準備しておいてほしいな」
え、待って、ちょっと、どうしたの急に、小春がこんなに、急に、どうして
「じゃあ一度帰るよ。戻ってくる時には麻子さんを連れてきて室内検証してもらうから、やましいものは隠しておいてね」
いや、やましいものなんて持ってませんけど、けど、え、なに、わけわかんない
「じゃあ後でね」
「え、ちょ、ま――!!」
「ふふっ、動揺して喋れない琴奈も可愛いね」
「な、なに言って、そんな――」
「戸締まりはちゃんとするんだよー」
なんとかふらつく足で玄関まで歩いていって、小春がさっさと出ていった扉を言われるがままに施錠して、そこでようやくちゃんと声が出るようになった。
私がコミュ障で人付き合いが下手で、小春にいいようにされているのは理解しているし、それでもいいって思っちゃってる。
でも、いきなり泊まりに来るっていうのは、どうなのかな。
私は自分がそれをプラスと思っているのかマイナス扱いしているのかどうかもわからない。
あと、小春の言葉を受けて声が出なかったのはどうして?
嫌ならすぐに嫌って言える人間に育ったはずだし、そう言わなかったってことは少なくともマイナスには思ってないってこと。
でも、もし嬉しいなら歓迎の言葉を何かしら言いそうなものだ。
じゃあそれを言ってないってことはプラスにも思ってないってこと?
なら私はどう思ってるんだろう。
わからない。なにもわからない。
…………とりあえず布団準備しよっかな。
―――
「麻子さん! ごめんなさい、急ぎでお願いがあります!」
「……あら、小春ちゃんの急ぎのお願いなんて珍しいわね」
「はい。ちょっと今日は急ぎでして」
家に帰るなりすぐさま台所にいた麻子さんの元へ急行する。
そういえば急ぎでお願いしたことなんてあっただろうか。
あったとしても幼稚園時代とか、それくらい昔の話だと思う。小学校に上がってからはできるだけ迷惑を掛けないようにしてたから。
そう思うと琴奈はすごいな。わたしの行動原理と心を変えたんだな。
「今晩、琴奈の家に泊まってくるので、この後車で送ってもらえませんか」
「――!」
「あと、一応麻子さんの目で琴奈の家が怪しくないかチェックだけしてほしいです」
やっぱり驚くよね、そうだよね。
わたしが誰かの家に泊まりに行くなんてありえないことだったから。
自分から進んで自分の安心できる家を出て他人の家に行くなんて。
でも、今日はそんなことを言っている場合じゃない。
正直なところ、一刻でも早く琴奈のところに戻りたい。
「わかったわ。小春ちゃんのお願いだもの、すぐに準備するわね?」
「ありがとうございます。わたしは今から着替えと化粧品の準備をしてきます」
「私はリビングで待ってるから、準備できたら声を掛けてね」
「はい、了解です」
運転手と検証人は確保できた。あとは自分の準備。
バタバタと二階へ駆け上がって部屋へ滑り込む。
中学の修学旅行で使った旅行鞄を引っ張り出し、一泊分の着替えを適当に放り込む。明日の朝バイトに行く時の服はどうする? 今着てるやつでいいかも。
そしてそれを持って一階の洗面所まで戻る。そこで自分用の化粧品を引っこ抜いてビニール袋の中に突っ込んで鞄に入れる。最低限これだけあればいい。
後は要らない。
リビングに行けば車のキーを握った麻子さんが待ってくれていた。
「麻子さん、今からスマホに琴奈の家の住所を送ります。途中でお惣菜を買っていきたいのでいつものスーパーに寄ってもらえますか?」
「わかったわ。すぐに確認するわね」
「ありがとうございます」
麻子さんの行動は可及的速やかだった。
わたしが全速力で準備してきたのに、もう出発準備ができていた。
そこから車に乗り込むまでは一瞬で、麻子さんが買い出し用として日頃から乗っている自家用車はあっという間に青葉台の街並みを抜けていった。
ちなみにいつものスーパーというのは、麻子さんが二日に一回は食事の買い物に使っているお店で、わたしも休みの日に同乗して一緒に買ってくることがある。なので、勝手知ったるということがよく似合う店舗だ。
今日は二人分の夕飯と朝ご飯を買うのが目的なので、お惣菜コーナーを手早くチェックしてお弁当やサラダをカゴに入れる。朝はパンがいいと思うので店内隅のベーカリーショップで万人受けしそうなパンを適当に選んでいく。
あと、思うところがあってカットフルーツを何個か買うことにした。
パイナップルが定番だけど、季節柄メロンも並んでいたので二個ずつ買う。
お会計の金額は安くはなかったけど、お小遣いで問題ない範囲に収まった。
全部をエコバッグに詰めたら結構パンパンになってしまった。
もう少し大きいサイズのものを持って来ればよかったけど、まあいい。
それを肩に掛けて車に戻り、後は琴奈の家まで直行。
四十分あれば問題なく着くらしいので、運転してもらっている車内で考えをまとめることにする。今日わたしが琴奈の家で何をしたいか。
…………
一番の目的は、琴奈が危ない状態なのを止めること。
本当に危ないかどうかの確証はないけど、十中八九危ない。
そう、危ないのだ。琴奈は相当危ない生き方をしている。
琴奈は無趣味な暮らしをしていて、それは中学校に上がった頃からずっと続いていて、平日は勉強に明け暮れていて、人付き合いが苦手なのも以前からで、仲のよい友達はいないらしい。これが前提。
そして、琴奈の家はとにかく物が少ない。
水回りはあまり見ていないが、リビングと寝室があの状態だと本当に最低限の物しか置いていないと思われる。本当に物がない部屋。
リビングを使っていません、なら辛うじて頷ける。
わたしの部屋も正直そこまで物が多い方ではない。
ただ、寝室までもが恐ろしく整然としていて、物が異様なまでに少ない。
あの部屋に踏み込んだ時にわたしの視界に入ったのは、机と椅子、ベッド、ギター、本と書類の詰まった棚、通学鞄。ただそれだけ。
その中を探っても、文房具や日用品は机の引き出しに綺麗にしまわれていて、洋服は畳ベッドの下の収納にまるっと収まっていた。
それは整理好きの人が「部屋の見た目を綺麗にするために収納をすごく頑張りました!」みたいな綺麗さではなく、そもそもの物の数が少なすぎることで単純に部屋が空に近いということ。
教科書や参考書、問題集は棚の中で一糸乱れず並び、下段にはいくつものクリアホルダーと書類を入れたクリアファイルが並んでいた。少しその中を見てみたら賃貸借契約書という文字が見えて怖かった。どうして未成年がこれを持っているのか。これは保護者が原本を持っておくべき書類のはずでは。
いくら琴奈がミニマリストに近しい気質を持っているとしても、これはおかしい。
物が少ないのが好きだからという発言を本人はしていたけど、それが本当なのかどうか怪しくてしょうがない。ミニマリストの卵だから賃貸借契約書も自分で持ってます、は通じないと思う。それは全然違う話だ。
そして極めつけは琴奈が何気なく言い放っていた言葉の数々。
『別に服がたくさんあっても意味ないし、お金の無駄だし』
『……琴奈はさ、何かが欲しいとか思わないの』
『お金なら欲しい』
『じゃあ、今は欲しいものはないの?』
『お金以外はないよ』
ぞっとするくらい気味の悪い言葉だった。
でも、守銭奴のような欲に塗れた口調ではなく、ただ単純にお金いっぱい欲しいな~という世俗一般の雰囲気でもない。
ただただ当たり前の言葉として、これが自分にとっての日常生活の言葉なんですっていう口調で喋っていた。そこに欲も下心もなく、ただ無心にそう言っていた。
おはようございます、こんにちは、おやすみなさい――
琴奈にとってはそれらと同じ位相に存在する言葉なのだと悟った。
そして、それはわたしの脳に大きな衝撃を与えた。
真面目で、優しくて、人付き合いは下手だけど素敵な子。
わたしの中にあった琴奈のそういうイメージを全て破壊せんばかりの衝撃だった。
だから考えた。
考えて、わたしは大体の見当をつけた。
琴奈の暮らしやものの考え方、そこに絡んでくる「無色透明で苛烈な金銭への執着」、そして今まで関わってきて感じた琴奈への疑問や不思議だと思っていた部分。それらを全部組み合わせて推測をした。
わたしは琴奈のことを好いている。
好いているし、長く一緒にいたい。
なら、今のうちに止めないとおかしくなる。
だからお泊まりも今日じゃないとだめだって思った。
……そうやって考えをまとめているうちに、琴奈の家はあと五分ほどのところまで近付いていた。




