警備兵
現在、村を立ってから三度目の野営をしている。
山を抜けてからは平地になったので、進むのは楽だった。
薄っすらとだが街の灯りが見えているので、明日中には到着するだろう。
ここ暫くの間、湯に浸かることがなかったので
この辺りで、そろそろお風呂といこうじゃないか。
服や下着を、固定した空間に溜めた水につけてかき混ぜると
水が直ぐに汚れて真っ黒になった。
たった数日ではあるが、それでも毎日汗だくになりながら進んでいるのだからこうなるのも納得だ。
何度か水を替え、同じようにグルグルとかき混ぜていく。
そして衣類を絞り、脱水してからもう一度綺麗な水で洗う。
焚き火の上で既にお湯が沸いているので
少しずらして焚き火の上に固定した空間に、衣類を並べた。
これであとは、お湯に浸かってる間に乾くだろう。
久しぶりのお風呂は最高だった。
やはり、お湯は少し熱いほうがいい。
溜まった疲労が溶け出すかのように、お湯も黒くなっていくが
再度沸かすのは面倒なので、今回は我慢するしかない。
お風呂を済ませて肌に付いた水滴を落とすと、すっかり乾いた服を着ていく。
また汚れるのは避けたいので、今回は地面で寝転がるようなことはしない。
空間を箱型に展開し、上部だけを網目状にして換気できるようにしてある。
今までの野営で試行錯誤して、ようやくこの形で安心して眠ることが出来たのだ。
朝、朝が来た。
焚き火は消えているが、念のため焚き火跡は削り取っておく。
さあ、出発だ!
半日ほど自転車を走らせ、目と鼻の先に街の入り口が見えている。
その入り口には、他の村や街とは違い警備兵が立っている。
「何用で来た!」
おお、警備兵っぽい!
「お初にお目にかかります。 俺は少し旅をしているのですが、目的は女神様への届け物ですね。 ですが、スィールはかなり栄えていると風の噂で聞いたので観光もしたいです」
そういいながらピークを見せたのだが、警備兵は不思議そうな顔をしている。
「初めて見るが…果実か? これを女神様に届けたいと?」
「ええ、女神様が仰るには神殿の周りにしか生えない木々に実るとのことです。 兵士さんが知らないということは、こちらには生っていないのですか?」
「ああ、見たことはないな。 神殿の周りも石畳だからな、木なんて生えてなかったと思うぞ」
やはりか、恐らく切り倒されてしまったのだろう。
「それはなんと言えばいいか…。 実はですね、この果実は女神様の大好物なのですよ。 その報告をするために、俺は各神殿を周ることにしているのです」
「それは本当のことなのか?」
「ええ、俺はうまれが少し特殊でしてね。 儀式を受けたのが最近なのですが、その際に女神様に頼まれたのです」
「ということは、これから神殿に?」
「ええ、通ってもよろしいですか?」
「ちょっと待っててくれ、俺も一緒に行こう」
こうして警備兵さんは詰所に向かうと、代わりの警備兵さんが慌てて飛び出してきたのだった。




