偉い立場
「すまない、待たせたな。 行こうか」
先程の警備兵さんが、肩を叩いて話しかけてきた。
「さきほど警備を入れ替わってましたけど、あなたは偉い立場の人なのですか?」
ちょっとした疑問だったが、ここで聞いてみた。
「いや、そういうわけではないんだ。 だけど、君のおかげで偉い立場になれるかもしれなくてな」
どういうことだろう。
「不思議そうな顔をしているな。 女神様と話せるということは、才を授かるということじゃないか。 才を授かれたのなら、俺だって騎士隊への加入も夢じゃないってね!」
どうしよう、期待させちゃったのかな…。
「たぶん無理だと思いますよ? ピークが無くても才能が有る人の前にはちゃんと出ていたみたいですし」
現実を突きつけると、警備兵さんは口をパクパクしていた。
「大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫だ。 たとえ才を授かれずとも、女神様と言葉を交わせるという名誉は得られるのだから…」
先程よりもテンションが低いが…。
「まあ、暇そうだったんで聞いて見ればいいんじゃないですかね。 俺も聞きたいことがありますし」
「それもそうだな。 だが、騎士隊は皆の憧れだからな…」
盗賊相手に苦戦してたイメージしかないのだが…。
「そんなに憧れるものなんですか?」
「ああ! なんせスカウトからでしか入れないと聞くしな! 騎士隊の加入は募集じゃないんだよ。 だから加入条件も入ってる人しか知らないんだ。 入ってる人に聞こうにも、どこにいるのかすらわからないしな」
え、普通にいたけど…。
「だったらそれも聞いて見ればいいと思います。 騎士隊の人とは、神殿で待ち合わせしてますから」
「は? 冗談はよせ、一般人が騎士隊と約束だって? あっはははは!」
完全に馬鹿にされている。
「本当なんだけどなー」
「わかった、わかったって」
それからも、他愛の無い会話を交わしながら一時間ほど歩いた。
「そら、見えてきたぞ」
神殿と王宮が見えてきたが、そこにピークの木は無かった。
「やっぱり無いか…」
「なんだ? さっき言ってた木のことか?」
「ええ、恐らく伐られてしまったんでしょうね」
ウワナーでは大量に生えているから問題は無いだろうけど…。
「女神様が知ったら悲しむかも…」
「え!?」
ぼそっと呟いた一言に、警備兵さんの顔から血の気が引いていく。
「さて、それでは行きましょうかね。 あれ? どうしたんですか?」
「は…はは…。 なんでもないさ…」
大丈夫かな?
そうして俺達は神官さんに話をして、儀式の部屋に入っていった。




