ジェノサイドキャットフィッシュ
海から上ってきたということは、海に住む魔物だということ。
それはつまり、新たに捕獲するためには海に行かなければならないのだ。
限られた素材を無駄にするわけにも行かないので、ここで尋ねてみた。
「そんなに頻繁に現れるんですか? 俺が捕獲してるだけで三匹はいるんですが…。 あと、あれの素材とか教えて貰えるとありがたいです」
しかし、帰ってきた返事に期待は裏切られた。
「素材どころか、今まで討伐された記録など聞いたことがありません!」
確かに、先程の話を聞いていれば
その可能性は十分に考えられた。
「では、この魔物の名前はわかりますか?」
魔物というだけで、何種類もいるのだから
ここで、名前くらいは知っておきたい。
「確か、ジェノサイドキャットフィッシュだったかと」
確かに、現れた際の災害の規模とナマズの様な見た目ではあるから納得はできる。
「ありがとうございます。 素材の方は今から確認しましょうか」
「え…」
アローナさんが何かを言いかけていたが
それを聞くことなく、魔物の頭を空間からだして切断した。
その際に大量に出た血は、スンリの甲冑をびちゃびちゃと真っ赤に染めたが
俺は悪くない!
悪気はあったけど、わざとじゃないもん!
「さて、絶命したようですし調べましょうかね」
魔法を駆使して皮をはがし、肉も一口大に切り取っていく。
スンリには魔物を出すときに見られているので、周囲に気を使うことなどしない。
「ん? すみません、これは何ですか?」
収納が進めていると、光っているものが目に映った。
大きさで言うと、バランスボールと同じくらいだろうか。
「これは…まさか! 魔石だと!? いや。 これも魔物だ、あってもおかしくは無いか。 だが大きすぎる!!」
元が大きいからね。
「それじゃこれは仕舞っておきますかね。 いいお金になりそうだ」
俺の何気ない一言だったが、直ぐにスンリが噛み付いてきた。
「馬鹿者! これだけの魔石を売るだと? 国宝になってもおかしくないのだぞ! 王に献上するべきだろう!」
何いってんだこいつ。
「俺が倒したのだから、俺が使い道を決めるのは当然だろう。 なぜ話したことも無い人間にやらないといけないんだ?」
「当たり前だろう! 王に献上できることがどれだけ名誉なことかわからないのか!」
「いや、ここは透殿の言うとおりだ。 倒したのは我々騎士隊ではない、ならば所有権は透殿にある。 スンリ、我々が口を出していいことではないぞ」
スンリの言葉に、アローネさんが言い返してくれた。
しかし、国宝級か…。
「アローネさん。 もしも買い取りたいということなら、早めに連絡してくださいね。 使い道も考えていますので」
「はい。 しかし、我々には狼の討伐があるので直ぐにというわけには…。 二十日後に中央の神殿に待ち合わせでもよいでしょうか?」
「ええ、それでは俺はここで。 また二十日後に会いましょう、お気をつけて」