才能不足
「なんか嬉しそうだけど、ピークのことお願いね!」
「ええ、でも大丈夫なんですか?」
本当に大丈夫なのだろうか。
「え? 何が?」
やっぱり解ってないんだ。
「いや、だって。 ピークを持ってきた人にしか儀式を行わなかったんですよね? ということはですよ、大勢の人が押し寄せてきますよ?」
「ああ、そういうことね! それなら大丈夫! 才を持った人には無条件で儀式を行ってるんだよ! 残念なことにこの世界は、慢性的に才能不足なんだよ!」
なるほど、余計なお世話だったか。
「しかし、そうなると少し厄介ですね。 ピークの奉納を条件とするならば、少なからず訪れる人は増えてしまうと思うのですよ」
「む、確かに。 いくら言ったところで信じない人もいるかもしれないしね…。 うん!わかった!」
何がわかったのだろうか。
「これから才のある人間に儀式をするときは、儀式の後に定期的にピークを持ってこさせようと思うの!」
「それは無理じゃないかなー。 ここから近場の街でも半日はかかるのでしょう? ただでさえ都市に神殿は一つしかないんだ、移動だけでどれだけ時間がかかると思っているんですか」
「えー! じゃあ、どうしろっていうのさ!」
「いや、神官さんに持ってきてもらえばいいのでは? 毎日同じ時間に部屋に置いてもらえば毎日食べられるよ! やったね!」
「ほんと!? 毎日食べられるのね! あー、夢見たい!!!」
毎日食べてたら開きそうなものだけどなあ、まあこの女神様も相当ぶっ飛んでそうだからかわらないか。
「ところで女神様、まだお時間大丈夫ですか? 少しお聞きしたいのですが」
「大丈夫だよー! いつも退屈してるから!」
退屈してるなら普通に儀式で出てこればいいのに。
「では、時空間魔法ってどの様なものなのですか? いまいち理解ができないのですが」
「あー、そうだなー。 時空間っていうのは、時間と空間ってことなの。 だからね、密閉されたスペースを作り出して時間の経過がおきないようにするの」
なるほど、わからん。
「つまり僕は、手ぶらで旅ができるのですね?」
「そういうこと!」
「理解しました。 後は自分で試行錯誤してみようと思います!」
「そう? がんばってね! こっちもがんばってみるから!」
「ええ、ありがとうございました!」
扉を開けて外に出ると、ピスキーさんが出迎えてくれた。
「どうでしたか? 魔法はありましたか?」
心配してくれていたのかな、少し嬉しくなった。
「ええ、しっかり女神様にお会いしました! ただ…」
ピークのことを知ったピスキーさんは、しばらく動こうとしなかった。