魔法
儀式部屋に入り、扉を閉じる。
そこから十歩ほど進み、リュックを置いて床に座った。
リュックからおひねりを取り出し、部屋の反対側へと放り投げる。
不思議なことに、部屋の中心を過ぎた辺りでおひねりが波打つような空間に吸い込まれていった。
一時間ほどだろうか、ゆっくりと待っていたが未だに女神は現れない。
退屈な時間が続くと、空腹になるのは何故だろうか。
リュックから桃の様な果実を取り出し、齧ろうとしたその時
再び波打つような空間が現れ、そこから人が出てきた。
腰までの長さの黒髪に、前髪は綺麗に切りそろえられている女性
「まってたよー! いやー、やっと持ってきてくれたんだね!」
「へ?」
理解不能である。
話を聞くと、桃の様な果実はピークという果物らしく
神殿の周りのみに生える樹木なんだとか。
女神様はそれが好物なのだが、どういうわけか自分の欲しいピークではなく
自分が睡眠中のときに限って、塒におひねりが投げ込まれるという。
眠っているときに石を投げられるようなものだ、それは確かに怒りもするだろう。
「だけど女神様、ピークのことはどの本にも載っていませんでしたよ? おひねりの作り方とかしか…」
「そんな筈ないわ! だって神託まで与えたのよ!!」
どう捻じ曲がったらそうなるのだろうか。
「わかりました、神官の方には俺から伝えておきますよ。 ところで…」
「ああ! 才放の儀でしょ? えーっと、君はね……え? どうしてこっちにいるの? おかしくない!?」
こっちに、というのはこの世界のことだろうか。
「二日ほど前ですかね、気付いたら自転車と一緒に山に放り出されていたんですよ。 どうにか戻ることはできませんか?」
聞くべきところはここからだろう。
「それは無理!!」
断言された!!!!
「原因がわからないけど、少なくとも神といわれる存在でも世界間の移動はできないのよ。 一応こちらでも調べてみるからさ、また神殿によってもらえるかな?」
なるほど、今はまだわからないのか。
「わかりました、それでは儀式の方だけでもお願いします!」
結果としては、俺にも魔法が使えるということがわかった。
時空間魔法、それが俺の使える魔法らしい。
「その自転車…だっけ? なんか不思議な力を感じるわ。 あまり強力なものではない様だけど、それでも壊れない程度の加護がかかっているみたい」
時空間魔法のことで頭がいっぱいだったが、壊れない自転車とは素晴らしい。
だってさ! チェーンも外れないしパンクもしないんだぜ!
最高だよな!!




