ブレイクタイム
大夢は2回戦を終えて帰宅した。
登板は無かったものの、きっちり2盗塁決めてきた。
それも市内、いや県内でもあの強肩を誇る恒輝から。
大夢は元陸上部だが決して足は速い方ではない。むしろ長距離が得意である。
エネルギーを費やす分、貧血を起こしやすいので注意が必要だ。
大夢はそんな体質であるが故、栄養摂取に気をつけている。
鉄分は普通の中学生よりも多く取るようにしている。
両親は日体大卒だ。マラソンとスキーの選手として活躍していた。
種目は違えど、自らの競技経験から食事に対するストイックさは充分理解していた。
大夢と杏悠実は大体同じものを食べている。
好きな食べ物を挙げると大夢は野菜と果物のスムージー。
杏悠実は焼き肉。兄妹で対照的だ。
そうなのか、では大夢は肉が好きになれば甲子園に行けるのか、いやそうではない。
甲子園に行くために、正解というものはない。
それにまだ中学生だ。焦る必要はない。
杏悠実は小学4年まで榛名町内の少年野球に所属していた。
しかし、活躍する機会を欲して隣町のソフトボールチームに入団する。
1年経たずしてクリーンナップの一員として、そしてエースにもなった。
榛名中に進むと主にセカンドとしての起用が多くなった。
新人戦では市内で優勝しているので、今のままでも十分強い。
しかし杏悠実が居ればもっと強い。
榛名中の大半は野球含むソフトボール未経験者だ。
しかし毎年運動神経の良い子が入部する。
その強みをどう活かそうか、若手の井上監督は毎年のように考えるのである。
春の市大会、ソフトボールは9チーム出場する。
榛名中は2、3年合わせて16人。今年は7人入部した。
ベンチ入りは18人だから1年生が2人入る。
その枠に杏悠実が入ったのであった。
しかも、全国に出場したとなれば、即戦力にしない理由など無い。
とりあえず、背番号14をもらった。
表向きは控え選手だが、セカンドのスタメンを獲得した。
井上監督も実力重視のオーダーを組む考えを示し、
たとえスタメンを外されたとしても恨みっこなしだということも伝えた。
打撃が非常によく、上級生相手でも力負けしない。
5番セカンドで起用されることになった。
言うまでもないが、大吉じいさんが大夢が杏悠実のことを試合前にからかった話をして、
大夢は腕相撲の刑に処されてしまった。
「いてーいてててて爪たてんな、あーっお前卑怯だぞおいー!」
「えーっ、昨日切ったはずだよー、お兄ちゃん勘違いにも程があるわよーw」
杏悠実の言ってることを真に受けないでください。
勝つためには手段を選ばないのです。えげつない妹ですね。




