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ある日、勇者に選ばれた  作者: 染舞
【02】ある日、親友が勇者に選ばれた。

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02-08

 パチッという焚き火の音で目が覚めた。


「起きたか」

 声の方を見ると、船長がいた。珍しく、神妙な顔をして焚き火をじっと見つめていた。

 そしてそんな船長の横には、シーツでぐるぐる巻きにされたネールが横たわっていて……どうやらまだ眠っているようだった。


「…………」

 身体を起こして、この場所が、あのオアシスだと気づく。

 無言のまま、魔王城の方を見た。


 何も、見えなかった。


 一歩前に足を出す。また一歩。一歩……気づけば走り出していたけど、船長は止めなかった。


「はぁっはぁ……」

 まっ平らな土地にたどり着く。

 たしかに、ぼろぼろな城があった場所にたどり着く。――けど、城はなかった。その代わりに、忌々しいあの勇者の剣が刺さっていた。


「アル?」

 名前を呼んだ。

 返事は、ない。


 ただ……見えてしまった。

 機能をオフにし忘れた眼鏡が、僕に見せてくる。


 地面に刺さった勇者の剣に向けて、周囲から何かが集まっているのを。勇者の剣が、それらを吸収しているのを。


 魔力ではない。何か、禍々しさを感じさせる不愉快な何かを、吸収している。


「……なのに、なんで空気は澄んでるんだ?」

 呆然と呟く。

 何か、答えにもう少しでたどり着きそうで……けど、たどり着きたくない気もした。


「アル、そこにいるの?」

 親友の名を呼びながら、剣に近づく。禍々しいものを吸っている怪しい剣。親友を何処かに連れて行ったのだろう憎き剣。だけど今は、それだけが彼との繋がりだった。


 剣の柄を掴む。

 その瞬間、何かが入り込んできた。暗く淀んだ何かが。


「うっ」

 すぐに手を離した。


「かっ、は、ぁ? 今のは……」

 見えたのは闇だ。どこまでも暗い闇。引きずり込もうとする闇。

 聞こえたのは声だ。誰かを心から憎む声。老若男女関係ない憎悪の声。


 見たことも、聞いたこともない人間たちの憎悪が、あの一瞬に流れ込んできた。


 つまりこの剣に……闇が、集っている。それも……世界中のものが。


 そしてここに集められた闇が流れ込む先は、どこだ?――異空間?

 だとするなら、流れ込んだソレを受け止めているのは――!


「ぁあああああっ! アル! アル! なんで! なんで、君がっ……あああああああああっ」





 ある日、親友は勇者に選ばれた。




 違う。




 ある日、親友は生贄に選ばれた。――完

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