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好奇の旅  作者: やんでれスライム
アイシズ編
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アイシズ編③

 極寒の地アイシズ地方はガムドネス大陸から数十キロリ離れた島である。年中雪が降る寒冷地であり、観光には防寒具が必須。しかし寒さを軽視していたダリアンはまともな防寒着を持っておらず、雪道をくしゃみしながら歩いている。



「う~、寒いわ……!(魔術で体を温め出す)……ふ~、あったか……」



 魔術で温められるが、いつまでもつかはわからない。妹のノスタルジアは脇道の新雪を蹴散らして遊んでいる。


 ノビーはふと、雪の地平線に、脇道で屈んでいる誰かを発見した。何か問題が起きたのではと駆け寄るが、彼女は人間ではなく人形だった。人形にもかかわらず頭はしっかりとノビーを見据え、手に持った人形を突き出して「私はルチルゥ……この子はダミー」と自己紹介をする。


 ノビーはこれがパペッタマータだと瞬時に悟ると制作者の名前を尋ねる。パペッタマータは製作者の名前を憶えていることが多く、それを判別のために聞き出そうとした。ルチルゥはひょっこり立つと、雪道を寒くないかのように歩き出す。彼女が制作者の家に案内するのではないかと、ノビーは後を着けた。


 ルチルゥが歩きだして数刻、ルチルゥは突然吹雪が来ると言った。まだ空は快晴であり、吹雪の気配は微塵もない。しかしすぐに空が淀み出し、風が強くなる。雪が吹きつけ、三人はまともに歩けなくなった。ノビーは魔術で即席のかまくらを創り、三人は中に入る。吹雪が吹きつけている間、三人は進むことができなくなった。



「お人形さん、凍っちゃった!」



 ノスタルジアが外で凍っていたルチルゥを雪から引っ張り出し、かまくらに避難させる。関節が凍ったことで動けなくなったルチルゥを火の元素で温めると氷が割れ、助けられたルチルゥは「ありがとう……」とお礼を言った。





 吹雪が止むと、三人は再びルチルゥに追従する。林道を進み、小高い丘へと辿り着いた。そのなかにポツンとある小振りな家に製作者が居るとルチルゥは指差した。製作者フロムは気難しい三十代程の若い人物であり、来訪者を歓迎していないようだった。



「何だお前ら……何しにきた」

「このパペッタマータの製作者か? 一目会いたいと思い、やってきた」



 それどころか、捨てたはずのルチルゥが戻ってきてしまったと嘆いている。



「何だまた戻ってきたのか……厄介な人形だな」



 彼は何度もルチルゥを捨てようとしているが、上手くいかないらしい。



「呪いの人形じゃないの(軽蔑した視線のダリアン)」



 ダリアンは道中の吹雪はルチルゥが引き起こしたものではないかと疑い出す。ルチルゥはフロムの母親を模して造られたものであるが、上手くいかず、かといって破壊することもできず、フロムは捨てることでその姿を視界から外そうとしたが、呪いの人形のように捨てても何度も戻ってきてしまうという。これは彼女がフロムに深い愛情を持っているからであり、ノビーはそのことを察すると引き取らせてくれないかと頼んだ。



「お前がいいっていうんなら、ぜひとも持っていってくれ」



 フロムは了承すると、ルチルゥの権利を手放し、ノビーに渡した。ルチルゥは少し寂しそうな顔をしたが、フロムに一度振り返ると、相棒のダミーを抱き抱えてノビーに追従した。





 ルチルゥを従えてクラーケン出没地域へ向かうなか、またしても彼女は吹雪の到来を予言する。彼女の予言は外れず、かといってそのおかげで事前にかまくらの準備ができるのだから、呪いの人形というよりも救世主に近い。何度も足止めされながら北上し、その度にダリアンはルチルゥと暇潰しに興じた。


 彼女はルチルゥの直感力を疑っていた。彼女自身もまた直感には自信があり、ルチルゥは救世主ではなく呪いの人形だとどこか決めつけている節があった。彼女はルチルゥにじゃんけん勝負を挑み、物の見事に五百連敗する。彼女は自分が持つ鋭利な感覚を最大限発揮したが、ルチルゥの直感力には敵わなかった。しかし五百数戦目、彼女はルチルゥの仕草の一点を読み抜き、見事一勝をもぎ取った。数を数えていたノスタルジアも驚き、何でこんなことをしているのか姉妹で落胆する。吹雪はとうに止んでおり、目覚めたノビーと共にさらなる北上をする。

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