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好奇の旅  作者: やんでれスライム
パラケルスス編
3/15

パラケルスス編③

 ノビーはこれ以上彼女らを巻き込むまいとしていた。ノビーは夜更けにこっそりと寝ている彼女たちを置いて独り、買ってきてもらった兜と身を隠す衣類(マントなど)を身に着けて、夜の道へゆく。


 夜の草原を歩き、彼が向かったのは小振りな教会だった。彼はその宗教の教花がホムンクルスの持っていた花と一致すると突き止め、彼女らを危険に曝すまいと独り向かってきた。巨大な木扉を開けようとしたまさにその時、彼女たちがノビーの目の前に現れる。彼女たちは寝ていたはずだが、ダリアンがいうにはホムンクルスを手懐け、夜なか監視させていたという。ノビーは誠心誠意大人として危険に曝せないと説得すると、ダリアンは折れた。


 ノビーが独り教会へ入ると、そこには仮面を着けたシスターと同じく仮面を着けた四人の子どもが邪悪な雰囲気で講壇に立ち、こちらを見つめていた。ノビーが角に見覚えはないかと自身の被るケイラスの兜の角を見せ、子どもたちがホムンクルスではないかと疑った。シスターはしらばっくれるが、ノビーが顔を見せるとうっかりとケイラスの名を口にしてしまい、言い逃れができなくなる。シスターは観念したのかなぜこの場所がばれたのかなど、角を切ることでホムンクルスを人間に見せていたと認め、ホムンクルスには感情がないことを明かす。しかしホムンクルスが角を切られることを恐れて逃げてきたと知っているノビーは不可思議に思う。ノビーはパラケルススに出会いたいと、シスターがいった管理者を指し、シスターはホムンクルスをついでに連れていくことを条件に居場所を教え、了承した。


 ホムンクルスの製造場を見学するという交渉の際、盗み聞きしていたダリアンらが木扉を押し開け、つんのめるようにして石畳に倒れた。シスターは怪訝な態度を見せるが、ノビーはダリアンに知られてしまった以上、見せた方が楽であると溜息交じりにシスターを説得した。


 製造場は教会の地下で、鍵の掛かった扉の奥に隠されていた。質素な佇まいにダリアンはケチを付ける。そこには角を切られたホムンクルスが命令を実行した後立ち尽くしており、シスターのいったとおり感情がないことが窺われた。ダリアンはさっきの話のなかでノビーが旅行に行くと思っており、それを聞いたノビーは呆れ、旅行ではなく人生の分岐点だと訂正した。加えて、今回ばかりは同行させるわけにはいかないと念を押し、ノスタルジアもそろそろ帰らないかと姉を説得した。しかし姉は今すぐ旅行に行けるのならどうしたいとノスタルジアを再懐柔し、折れたノビーは今回切りで助手ごっこは終わりだと約束させた。









 ノビーは高位魔術師であり、複数人での飛行が可能である。翌日、家に帰ったノビーらは、その強力な魔術でバムールへと向かい、パラケルススの居る大聖堂を目指すことにした。大聖堂は西の通りの先で非常に目立っており、ダリアンは成金趣味だとバカにする。中で暴れるなと念を押したノビーが扉を開けると、静寂な堂内の中心の講壇で独り、それを取り囲む長椅子に座る信者に向かって説教をする、高慢な出で立ちの五十台くらいの男性が立っていた。彼がパラケルススだと知ると、ノビーらは説教を待つ。パラケルススは彼らがホムンクルスを連れているとすると、目の色を変え自室に案内する。


 長い螺旋階段の先の部屋、パラケルススの自室でなぜホムンクルスを連れているのかノビーらに問う。ノビーはこれまでの顛末を話し、自身に助けが必要なことを告げた。パラケルススはそんな術は持ち合わせていないとノビーらを落胆させる。しかし、不可能ではないと体全身を造り替えるとんでもない方法を打ち明け、それは脳まで取り換える連続性に問題のある代物だった。しかし技術的には可能であるとパラケルススは身の上話をし、自身が研究していた「パペッタマータ」という「破壊が行われても同一に生まれ変われば記憶の継承を行う特性」を持った不死の人形群から閃いたアイディアを話す。破壊・再製造を同一性を保って繰り返すことのできる「ホムンクルスを利用した検証」により、「精神体」が明確に存在するのではないかとパラケルススは仮説を立てていた。



「君は精神の実在を信じるかね?」



 パラケルススはただでとはいわないが、最大限協力する旨を述べる。ノビーは自分の体を治す方法があるとその話を理解し、要求は何だとパラケルススに問う。パラケルススはノビーが身の上話で話した「不老化薬」を要求し、ノビーはそれを作るには希少な素材が要ると期間を要求した。パラケルススはすぐさまシスターリル(教会のシスター)に手配するよういい、よければ食事していかないかとノビーらを邸宅に誘った。





 パラケルススの邸宅は市内の一等地にあり、それなりの中庭を持っていた。パラケルススは娘ミレニアを紹介し、彼女は過去の実験でなった「不老人間」だと明かす。ノビーは人間の状態を保った不老に目を見張るが、彼女の母親はその凄惨な実験の最中亡くなっている。彼女は成人の不老化に失敗しているパラケルススの唯一の成功例であり、パラケルススは悲願の達成のためにノビーの不老薬を欲していた。食事の支度が終わり、パラケルススはダリアンが半ば強制的に居着いていることに驚く。役に立つというノビーだったが、パラケルススは自身の娘の友人としての素質を見抜いたようだ。彼女はその特性ゆえあまり人と関わろうとしない。加えて父親の実験にこれまで何度も付き合ってきたため時間もなかった。しかしダリアンなら娘を奇怪の目で見たりしないだろうと友人になるよう勧めた。ミレニアは快諾するも、ダリアンは中身三十代の少女を少し不審がっているようだ(パラケルススの娘だから)。


 ノビーらはその日のうちから教会でホムンクルスを借り、トニスピネスの捜索に当たった。トニスピネスは希少な素材であり、十人規模の団体でも運が良くて一か月は掛かる。ダリアンらは苦難しながら捜索するも、数多い偽物(モドキの種類が豊富)やホムンクルスの指示(ミレニアの役割)に辟易してくる。


 捜索を始めて一週間程度、体力がついてきたダリアンは普段行かない遠くまで足を運び、そこで特徴である「丸い光」を発見する。トニスピネスは多層構造の宝石のような紫の茸であり、その構造ゆえ遠くから見るとこちらに向かって光を反射し、それが円形に見えるのだ。ダリアンがそれを報告すると、ノビーは本物であると認め、彼らは何と二週間も早く薬の製造に着手することができた。

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