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好奇の旅  作者: やんでれスライム
パラケルスス編
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パラケルスス編②

 彼女らは先程の部屋を秘密基地にしてもよいかと尋ねた。助手の就任祝いだと様々な手法で彼女らをごまかしに掛かるノビー。その後ノビーは彼女らによって秘密基地と化した部屋を見て愕然とする。ありとあらゆるものが詰め込まれた物置部屋に等しいそれは彼女らが助手などというものを正常に全うできるか不安にさせるには十分な判断材料だった。


 彼は一度自室に戻り、自分の体について過去の資料と比較し、何が問題かを突き止めた。そうしているうちに朝になり、彼女らに掃除の命令をしていたことを思い出して、その確認に向かう。しかし彼女らは彼の自室の丁度ど真ん前ですでにストライキの準備を進めており、最早彼の思惑は正常に作用しなかった。



「何をしている?」

「ストライキの準備(『過酷労働反対』と書かれた看板を括りつけた箒を立てるダリアン)」



 掃除が飽きたというので、別の任務を与えることにした。それは意識喪失期間にともなって腐敗した物資の買い出しだったが、彼女らはこれを拒否。理由は助手らしくないからと彼女らの助手に対する認識の異常性が露わになる。しかもダリアンはノスタルジアが学校をサボってきているからその分の勉強を教えろと実質脅しに近い要求をした。断る術のないノビーは博打に出る。彼女らに勉強を通して大人の威厳を見せつけようとしたのだ。飛行魔術を教授すると唆すとダリアンはすぐに食いつき、こんなにお得なことはないと喜んでいる。ノビーは容赦なく彼女に理解させるべく、離れの別館に彼女らと向かった。





 当然彼女は上手く飛行することができなかった。通常一か月は掛かる練習を省いて行わせようとしているのだから、当然である。ノスタルジアには羽歩きを教えた。空気の元素で体を軽くし、進みたい方向に向かって跳躍する魔術である。簡単な魔術ゆえ、勝手に覚えるだろうとノスタルジアは放置しダリアンに向き直るが、彼女は類稀な才能で飛行魔術を独学で浮遊できるまでになっており、ノビーは焦る。しかしその教え方が良かったと褒められ、ノビーの作戦は想定とは異なっていたが上手くいった。そのまま助手に相応しい任務だと買い出しの命令をするが、彼女は使命を黙っていたのかと憤慨する。それは彼女が使命や特別なことに対して異常なまでの貪欲さを誇っている現れであり、ノビーは想定内だと特別な品を加えたメモを渡した。



(金も渡したし、メモも渡した……あとは彼女らの信念を信じるほかあるまい)



 金品も渡し、あとは彼女らを信用するしかないノビーは、彼女らの反抗も見据えて今後の作戦を練る。そんななか、彼女らはアムスダルアのルービー市を訪れていた。商業施設の中心部であるルービー市は赤い塗料がふんだんに使われており、市場の最先端である。彼女らはルービー市を訪れたのが初めてのため、(Aの店はBの店の前など)メモに書いてある不親切な書かれ方に憤慨する。



「何よこれ、不親切な書き方ね!」

「それだけゆうめいってことなんじゃないの?」



 何とか最初の目的の店を見つけ出した彼女らは、卵を持つ前に衣服の買い出しを済ませ、いよいよ大型量販店に向かった。



「先に見つけた方が相手に持たせられるのよ(大きめの油の瓶を持ちながら)」

「……(ノスタルジアが無言で魚を持ってくる)」



 どちらに荷物を持たせるかの競争をしながら品物を見つけていき、意外にも使命は順調だった。


 ノスタルジアは姉にノビーの金で買った「髪留め」をプレゼントする。競争の際にこっそり選んでいたのだ。



「そういえばそんなもの選んでたわね。くれるの?」

「(頷くノスタルジア)」

「ふふん、ありがとう。でも持てないからポケットにでも仕舞っておいてちょうだい」



 ダリアンは喜びながら帰ろうとするが、ノスタルジアに諭され肝心の使命の品を忘れていたことに気づく。



「おねえちゃん、使命は?」

「あ、忘れてたわ」



 品物の入手には隣の市まで三十分程度掛かると使命の配分ミスだと激昂した。しかし順調にその品物を手に入れ(肉や菓子も勝手に買い足し)、ノビーの下へ戻るだけとなった。





 ノビーの下に戻ると、ノビーは厨房の掃除をしていた。荷物を渡すと、せっかく気を付けて運んできた卵を割ってしまう。



「何やってんのよ、せっかく気を付けて運んできたのに!」

「すまん」



 彼は力加減が上手くいかなくなっており、異形化にともなう副作用と考えられた。そのほかにも角で入口を破壊したり、やけに腹が空いたりと、異形化の弊害はノビーを蝕んでいく。



「じゃ、ご飯が出来たら呼んでね」



 しかし彼女らはそんなノビーにもお構いなしに使命に疲れたと食事の準備を頼み、秘密基地へと去ってしまう。



「待て、私の体は今危険な状態にあるんだ。そんなことをしている暇は――」

「今危険って言った?(目を輝かせて戻ってくるダリアン)」



 ノビーは自分が危険な状態にあると諭すが、ダリアンはそのうちの「危険」という言葉のみに反応し、ノビーを困らせた。彼女は貪欲だが、これからもどこかで必要になるとノビーは考える。


 ダリアンは基地で妹に貰った髪留めを試そうとした。しかしノスタルジアが仕舞っておいたはずの髪留めが見つからず、落としたのではとノスタルジアは愕然とする。



「は? 落とした?(ベッドに寝ながら話を聞くダリアン)」



 探しにいこうとするがダリアンは疲れたと要求を拒み、二人で言い争っているなか、突然基地の扉が開き、角の生えた黒髪の女の子が部屋に入ってきたのだ。



「え、誰?」(ダリアン)



 彼女はキョロキョロと部屋を見回し、ノビーの手下が入ってきたと思ったダリアンはそのことを尋ねる。



「あなたノビーの手下でしょ? え、違う?」



 しかし違うとジェスチャーする彼女に、髪留めが握られているのをノスタルジアが発見する。



「あーっ!! それおねえちゃんの髪留め!!(指を差して叫ぶノスタルジア)」

「ははーん、あなたさては盗人ね?」



 盗人だと思ったダリアンは二人揃って彼女を追いかけ、厨房に居たノビーがそれを捕まえる。



「ノビーそいつ捕まえて!!(追いかけながら)」

「何事だ?(厨房から顔を出すノビー)」



 彼女の異常な筋力にノビーは怯み、一旦離れて魔術の氷で拘束する。



(この力……普通の少女ではない!(一旦離れて魔術で凍らせる))

「魔術に逃げたわね小心者(追いついて見物していたダリアン)」



 体だけ凍らされて雪だるまのようになった彼女はホムンクルスであり、喋れない状態と角から、文字を教えて紙に書かせることで発覚した。



「言葉が解るなら、紙に書かせればいいんじゃない? 私持ってくるわ(嬉々として持ってくる)」



 ホムンクルスとは人造生命学の禁じられた技術であり、禁忌である。



「人造生命学とは過去に違法となった禁忌の学問だ。当時の未熟な生命を見た国が早々に禁止したのだ」

「今だったら大丈夫なんじゃないの?」(ダリアン)

「『人間を造る』という目的が問題視されている。未熟だからだめというわけではない」

「ま、あなたは牛だけどね」(ダリアン)



 学問が未熟なうちの過去に違法となったが、彼女が存在するということはそれを秘密裏に行っている人間が存在するということ。



「でもこの子が存在するってことは、勝手に研究してる奴がいるってことじゃないの。追手とか寄こすんじゃない?」



 ダリアンは追手が来るのではと発言し、まさかノビーがこんなかわいらしい子を野放しにしないだろうと、本当は物珍しいものが見たいだけの圧力を掛ける。



「この子どうするのよ?」

「……うちで匿う」

「さすがね、牛の鑑だわ」



 ノビーは自分の秘密を握っているのでは、そして彼女らの注目を逸らせられるのではと考え、彼女を匿うことにした。


 氷で濡れた服を洗濯室でダリアンが乾かしている途中、服の隙間から白い薔薇のような花が落ちた。



「あら?(ホムンクルスの服を脱がしながら)」



 ダリアンはそれを拾い上げると、ノビーの自室へ向かい、何かが落ちたとノビーに見せた。



「ねえ、こんなもの持ってたんだけど(花をノビーに手渡す)」

「これは……カムザの花だ。ここいらでは咲かない」



 ノビーはそれはカムザの花であり、アムスダルア周辺では咲かない珍しい花だと話した。



「ねえ、もしかしてそれって敵のアジトのヒントじゃない?(目を輝かせて両手を握り合わせる)」



 ダリアンはそれが敵のアジトのヒントではないかと目を輝かせるが、ノビーの制止も聞かずノスタルジアに伝えるべく飛び出してしまう。



(まだ敵と決まったわけではないだろうに)



 ノビーは部屋の本棚から本を取り出し、古い宗教の教花であったことを確認した。

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