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好奇の旅  作者: やんでれスライム
アンダーレジェンド編
13/15

アンダーレジェンド編③

 ダリアンはすべてが本物で出来ているのか驚いた。近くで見てみると怪しい気もするが、舐めてみると確かに菓子の味もする。



「これ本物かしらね……?(疑り深い目で建材を見るダリアン)」



 サロメは何か言いたいことがあるようだが、一同はそれを無視する。ノスタルジアは落ちているクッキーを食べてお腹を壊したようだ。



「あなた何食べてるのよ」

「クッキー!! おちてた!!(両手で大きなクッキーを持って齧りついている)」

「落ちてたやつでしょ? ぺっしなさい」



 ノビーは胃腸薬を手渡す。彼女らがお腹を壊すことを想定して用意していたらしい。



「準備がいいわね」

「君らが予想どおりなんだ」



 サロメは無視されたことに腹を立て、少し離れた所に行ってしまった。この場所では彼女の知識が必要になると思うが、彼らは好奇が上回り、思い思いに楽しんでいる。


 ダリアンらの背後から鼠頭の獣人が話しかけてくる。背は低く、ダリアンらの三分の二といったところか。鼠は懐から包み紙を出し、ノスタルジアに渡す(ダリアンは警戒して受け取らない)。ノスタルジアは好奇心から美味しそうに食べるが、気づいたノビーによって吐き出させられる。ただの飴だというが、ノビーはこっそり渡されたのが気になったようだ。鼠は歓迎する素振りでただのサプライズだといった。飴も怪しいものではなく、この国で支給されているものらしい。鼠は地上を知っているようだった。しかしそれはサロメによって伝えられたからであり、彼はサロメ以外とその情報を共有していない(サロメの意向)。


 サロメが戻ってきて、この男はトニーだと紹介した。友人で、子どものころからの付き合いだという。この街には学校があって、サロメはそこで歴史教師をしている。トニーらもその学校出身だが、サロメより年上で、至る所に巣を作っては兵隊を困らせて遊んでいるという。


 サロメは背後から近づく気配(ブリキの音)に気づいてノビーらを隠そうとするが、遅かった。



「おーい、こっちだよー!(キャップを被った鼠がブリキの兵隊の前を手を振って通り過ぎる)」



 しかし間一髪トニーがデコイになって飛び出たため、一行は隠れる時間を得られた。ブリキの兵隊たちはトニーを追うのに夢中になり、ブリキたちの中央に居た指揮官(サロメの祖父)にも気づかれなかったようだ。サロメとトニーが何とかごまかしている間、姉妹は自分らが隠れたハニー・ナッツの花壇を舐める。やはり菓子の味はするが、どことなく不思議な風味がした。



「変ねぇ……(探偵風に顎に指を置いて考えるダリアン)」



 しばらくするとトニーはブリキを撒いて戻ってくる。サロメとトニーの奮闘によって何とか窮地を脱した一行は、サロメの意向に従って「下水道」へ向かうことになった。トニーは「あれを見せるんだな?」と少しうきうきしている。下水道はレモード水(レモネードのような処理水)が流れており、非常に酸味がかった甘ったるい匂いが支配する異臭の水路だった。


 サロメは一向に先導させ、被っている厚みのあるシルクハットのような大きなシフォンケーキ・ハットを器用にマンホールに押し込めて、中から蓋を閉めた。パラパラと零れ落ちるカスは本物のようで、ダリアンはさらに違和感を感じる(なぜ衣類は本物なのか?)。ダリアンらは鼻が曲がりそうになりながらも、先導するサロメについて下水道を探検する。下水道は抹茶レンガで出来ており、景観は黄色と緑のコントラストである(レモネードと抹茶。明かりはサロメが出している)。


 しばらく進むと、抹茶レンガの壁が取り外せる秘密の穴があった。サロメは慣れたようにその壁を取り外すと、またも器用に屈んでノビーには少し狭そうな自然の洞窟の先に行く。最後尾のトニーはこの先に自分たちのアジトがあるといい、サロメに指示されて掘ったということを明かした。彼は退屈を紛らわしてくれる彼女のことを(友人として)好いており、さらに強力な「キャンデー」が見つかったことで彼らはサロメにチュー誠を誓っている。


 サロメが先に辿り着いた酒場にはグロッキーになっている鼠の獣人が複数居た。寂れていて、ぼろぼろの家具で構成された質素なバーは鼠たちの溜り場であり、各鼠の手の側にはくしゃくしゃになった包み紙が置かれている。彼女はそんな鼠共を無視するように奥の穴の続きへ向かい、ダリアンらもチューチュー鳴く鼠共の間を怪訝な顔で通り抜ける。トニーはマスターから話しかけられており、常連であることが窺える。



「ようトニー、今日はやっていかねぇのか?(コップを拭いているイカした声の鼠)」

「悪いな! また後で!(気さくに手を挙げてついてくるトニー)」



 サロメの入った細穴は幾つにも道が分かれているようだった。サロメはそのなかから正面の穴に進む。岩肌は粗雑で、気を付けて進まないと体を擦ってしまう。


 サロメが進んだ先には壁に細長い横の隙間があり、隣の空間を覗けるようだった。ようやく追いついたダリアンらが並んでその隙間から隣の空間を覗くと、広い空洞に巨大な紫結晶の塊のようなものが中央に鎮座しており、その手前で先程のものとは違う白い甲冑を着込んだブリキの兵隊が二人見張りをしていた。



「何あれ、でっかいグレープキャンディーみたいね(目を見開いて驚くダリアン)」



 サロメはあれが何なのかノビーに聞いた。サロメは国の歴史を研究する傍ら、空白の期間が存在することを確認しており、国には何か大きな秘密があると考えていた。国が大々的に管理する「城下掘削場」から繋がると見られるその空洞で、書庫のどこにも記されていない巨大な鉱石とその管理に深い疑惑を持っていたのだ。



「あれが『遺物』だとすると、すべての現象に説明が付く……しかし、あまりにも暴論だ」

「遺物って何よ(横目でノビーを見るダリアン)」

「遺物とは超常現象を発生させる物品のことだ。国も存在自体は認めているが、あくまでもいわく付きの代物という体で扱っている」

「オカルトってことね(再度隙間に目をやるダリアン)」

「もしあれが遺物ってヤツだったら、あの魔術障害も起こり得るってことね!?(興奮するサロメ)」



 サロメは興奮してさっさと来た道を戻れとノビーらを急かす。サロメはどうやらさらに三人に見せたいものがあるようだ。





 サロメはさらに下水道を駆け巡り、一行を城の地下まで連れてくる。トニーはサロメの意図を察すると、捕まりたくないと同行から外れた。



「サロメ城に行くつもりだろ? 冗談じゃない!(手を翻して踵を返す)」



 城の地下からは城の図書館に向かうことができ、そこから「禁書庫」にサロメは案内したいようだった。



「ほら、さっさとついてきて!」



 アラザンで出来た鉄の檻を「合鍵」で開け、サロメは上部のマンホールに向かって梯子を手際良く上る。鍵の掛かったマンホールも合鍵で抉じ開け、一同は城の図書館を訪れた。


 図書館の本棚はダークチョコレートで出来ている。本の表紙は砂糖菓子やビターチョコレートで彩られている。ページは薄いホワイトチョコレートに、チョコ文字で出来ている。すべての本は食べることができるのだ。しかしサロメはばれるから食べるなと姉妹に注意する(すでにノスタルジアが食べようとしている)。


 サロメは貸出可の本に用はないとし、『菓子出禁止(貸出禁止)』と書かれたプレートの下げられた扉の鍵を開錠し、中に入った(一行にも素早く入るよう手招きする)。

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