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好奇の旅  作者: やんでれスライム
アンダーレジェンド編
11/15

アンダーレジェンド編①

「お菓子の国ぃ?」

「おかしのくに!?(目を輝かせるノスタルジア)」

「そう、お菓子の国」



 ダリアンは怪訝そうな目でノビーを見つめている。お菓子の国とは地下に眠る伝説の国とされており、五百年前に突如国交を断絶してから音沙汰がない。一説では崩落に巻き込まれ滅亡した、世代交代のなかで内紛が起き滅亡したなどの噂があるが、真相は定かではない。


 目的地は黒魔女の森。ノビーの館から北西に進んだ所にある危険な森だ。ラーガールという猛獣が潜んでおり、近づく者は誰一人としていない。しかしそんな森でお菓子の衣装を身に纏った関係者と見られる人物が目撃されたとノビーは情報を手に入れた。



「目的地は黒魔女の森だ。菓子のような服を着た人物が森に入っていくのを見たという情報があるらしい」

「らしいで突っ込めるほど安全な場所じゃないでしょ」



 ダリアンは怪訝な表情をノビーに浴びせるが、内心そのような国があったら行ってみたいと年相応の少女らしく思っている。ノスタルジアも賛成し、一行は細心の注意を払って森に向かうことにした。





 黒魔女の森は人が立ち入らない鬱蒼とした森である。よって存在するのは獣道のみであり、ノビーの鉈によって切り拓かれた道が姉妹らが進める唯一の道だ。蒸し暑く、熱帯雨林のように至る所に蔦が絡まっている。


 少し進むと開けた場所に到達し、紫結晶の群生地に行き当たる。光を反射し美しい大小様々な紫結晶が開けた場所の中央で目立つように光を浴びている。ふと、群生地の奥に木の上に建った小屋を発見する。ぼろぼろで、人の気配はまるでないが、しかしどこか生活感のある不思議な雰囲気を醸し出している。



「私が調べてくる。ここで待っていろ」



 ダリアンらを一番大きいノビーの背の丈程の紫結晶の陰に隠し、ノビーは木に差し込まれた螺旋階段を上って小屋を尋ねた。扉をノックすると、中で物音がする。人が驚き、どこかに体をぶつけたような音だ。


 しばらく待っていると、天を向く程小振りにカールした紫毛の長髪の女性が、おどおどとした様子で対応した。よれよれの婦人服も紫色で、陰気そうな雰囲気を放っている。右目は隠れていて、酷く自信がなさそうだ。



「あのぅ……何かご用でしょうか……?」



 彼女は酷く警戒した様子で箒をノビーに突きつけて対応している。猫背で、今にも逃げ出しそうだ。



「突然失礼する。お菓子の国について尋ねたい。知っていることはあるか?」

「お、お菓子の国ぃ……? そんなもの、知りませんよ……っ」



 彼女はすぐにでも会話を終わらせたい様子だったが、それがノビーには怪しく見えた。こんな場所で暮らしている人間が噂と関係ないはずがない。ノビーはそう決めつけて姉妹を呼び出し、子どもが疲れているとダリアンらを利用し中で休憩させてもらえないかと交渉した。


 彼女は断ることができず、一行を中に招き入れた。内部はぼろぼろだが小綺麗に纏まっていて、とても一時凌ぎのために使っているとは思えない。婦人用品も数多くある(ドレッサーや化粧品)。


 ノビーはアルナと名乗った彼女にお菓子の国の場所を話してほしいと頼むが、彼女は全く心当たりがないという態度で接している。しかし、証拠がない以上現時点できわめて怪しいのは事実であり、ノビーは何とか場所を聞き出そうとする。



「私たちは場所を知りたいだけだ。謝礼もする(手を交えて説得しようとする)」

「だから……っ、知らないって言ってるじゃないですか……っ!(焦りながら少し怒り出す)」



 二人が交渉に勤しむなか、ダリアンは彼女が所持する箪笥から一枚の証書を発見する。それは彼女がこの国の極位魔術師であると証明する証明書であり、ダリアンはそれをノビーに見せる。



「こんなものあったけど」

「『極位魔術師』……?」

「あと箪笥見たけど、お菓子っぽい服とか匂いは全く無かったわよ。あとアルナって偽名ね。本名はザラナ」

「……(少し訝しげにするノビー)。なぜ極位の証を持つ者がこのような場所に?」

「(ザラナは目を逸らして押し黙る)」



 そわそわし出す彼女の動向からは怪しいものが垣間見て取れるが、少なくともお菓子の国の噂とは関係なさそうだった。これ以上彼女からは何も聞き出せないと判断したノビーはあくまでも重要参考人として噂の内容を尋ねる。



「知らないって……いってるじゃないですか……っ! もう、帰ってください……!(何かに口篭りながら汗を流す)」



 彼女は七年ここで過ごしている極位魔術師であり、極位の称号を持つ者ならばたしかにこの森でも安全に暮らせるだろう。ノビーは彼女の隠したいことは聞き出そうとせず、突然邪魔して悪かったと謝罪した。


 ふと、彼女はノスタルジアの指についた樹液の匂いを察知する。それは七年ここで暮らし、森に熟知した彼女だからこそわかる異変だった。彼女はそのような匂いを発する樹液はこの森には存在しないといい、ノスタルジアは森の入口付近でその樹液を触ったという。


 ピンと閃いたようなノビーは姉妹を抱えてザラナの家を後にする。魔術で飛んでいくその様子を見て、ザラナは散々な日だと落ち込む。

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