叶わない恋の相手
お姉様に、手を——引かれるまま。私は、精霊の、シルヴィアの——もとへ。連れて、いかれた。
「さあ! 紹介して、くださいな!」
「え、ええと……。お姉様には。もう、見えてるみたいだけど。この、金色の方が——本当の。シルヴィア、です」
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『……お久しぶりです。お姉様』
シルヴィアが。金色の光の中で——はにかむように、微笑む。
『ずっと。お姉様には——ご心配を、おかけして。それなのに。ちゃんと、お話しできるのが——今に、なってしまって。ごめんなさい』
「まあ……! まあ、まあ! あなたが——本当の、シルヴィア!」
お姉様の目が、また——うるうると、輝きだす。
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しばらく。お姉様と、シルヴィアは。積もる話を——交わしていた。
ずっと、すれ違っていた、姉妹。片方は、心配を、隠して。片方は、心配を、かけまいと。距離を、取って。
その、長い、長い——時間を。今、ようやく。ほどくように。
(……よかった)
私は。少し、離れて。その光景を——あたたかく、見つめていた。
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でも。
ふと。お姉様が——きょろり、と。シルヴィアの、隣に。視線を、移した。
そこには。
いつのまにか——光の精霊王が。静かに、佇んで、いた。
その身を、包む——荘厳な、光。それは。シルヴィアの、まとう光と。同じ——あたたかな、金色、だった。
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「あら——あらあら?」
お姉様の、目が。きらん、と——光る。
「お二人とも。同じ——金色で。まるで、お揃い、ですわね?」
(……お揃い?)
「ええ。だって——婚約者、同士は。ドレスと、お衣装の。色を、合わせる、ものでしょう?」
お姉様が。にこにこと——尋ねる。
「ところで——シルヴィア。そちらの、隣の方は……? あなたの——婚約者か、何か、ですの?」
「————え?」
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シルヴィアの、表情が。
ぴしり、と——固まった。
それから——みるみる、うちに。その頬が。金色の光ごと——ぼぼぼっ、と。真っ赤に、染まって、いく。
『なっ……! ちっ、ちが……! こっ、これは……!』
(……え?)
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いつも、あんなに——穏やかで。落ち着いていた、シルヴィアが。
目を、ぐるぐる、させて。声を、裏返らせて。あわあわと——取り乱して、いる。
(……うそ。シルヴィア、その反応)
私は。思わず——目を、見開いた。
「えっ……!? シルヴィア。まさか——!?」
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『ちちちち、違うわ! みどり! お、お姉様も……っ!』
シルヴィアが。ぶんぶんと——首を、横に、振る。
でも。その、真っ赤な顔が。何よりも——雄弁に、語っていた。
(……バレバレ、だよ。シルヴィア)
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光の精霊王は。
そんなシルヴィアを。やわらかな——まなざしで。ただ、静かに、見守っている。その、口元には。隠しきれない——優しい、笑みが。浮かんで、いた。
(……あ。なるほど)
そういう、こと、か。
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ずっと。シルヴィアを、見守って、きた——時計塔の、精霊王。
召喚の、計画に。手を貸して。シルヴィアの最期に——寄り添って。
あれは。ただの。協力者じゃ、なかったんだ。
(……二人は。お互いを——想い合ってた、んだ)
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(……そっか。そう——だったんだ)
ふいに。思い出す。
いつか、ユリウスが——言っていた。『昔の君は。誰かに、恋をしていた』と。『とても優しくて、切ない目で。遠くを、見ていた』と。
私は——ずっと。その相手は。ユリウス、なのかと。思って、いた。シルヴィアが、好きだったのは——彼、なのかと。だから、勝手に——胸を、痛めて、いた。
でも。違った。
シルヴィアが。あの、切ない目で——想って、いたのは。
(……この、人だったんだ)
決して、結ばれない。精霊と、人間。それでも——諦めきれなかった。あの、叶わない、恋の——相手。
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精霊と、人間。決して、結ばれることの、ない——はずだった、二人。
でも。シルヴィアは、今——精霊に、なった。
(……だから)
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胸の奥が。じんわりと——温かく、なる。
シルヴィアが、精霊になったのは。命を、繋ぐ、ためだけじゃ——なかったのかもしれない。
もう、二度と。陽の光の下で——生きられないと、知って。それでも。ずっと、そばにいてくれた、この人の——隣に。いられる、場所へ。
(……よかった。ほんとうに、よかったね。シルヴィア)
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「まあ! まあまあまあ!」
お姉様が。両手を、頬に当てて——大はしゃぎ。
「なんて、ことでしょう! では——わたくしの、妹は。こぉんなに、ご立派な方と! ああ、お姉様、嬉しくて……!」
『お、お姉様! だから、まだ——そういうのじゃ……!』
真っ赤なまま、あわあわするシルヴィアと。にこにこ、暴走するお姉様と。
優しく、見守る——精霊王。
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(……ふふ)
私は。こらえきれずに——笑って、しまった。
あんなに、達観して。私に「あなたの好きに生きて」なんて、言っていた、シルヴィアが。
恋の話に、なった、とたん。こんなに——年相応の、女の子に、なるなんて。
(……知らなかったなぁ)
長い夜が、明けて。
みんなが、それぞれの——あたらしい、朝を。迎えはじめて、いた。




