一進一退
でも。
忘れては、いけない。
心は——通じた。けれど。
闇の精霊王の——その、力は。いまだ。世界を、滅ぼせるほどに——巨大な、ままなのだ。
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空は。あいかわらず——塗りつぶされたように、黒い。玉座の、周りの空間は。みしり、と——歪んだ、まま。
闇は。その身体に。色濃く——纏わりついて、いる。
そう。これは——和解じゃ、ない。
兄弟喧嘩。つまり——本気の、ぶつかり合いの。始まり、なのだ。
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(……まずい。このままじゃ。解放された、みんなが——巻き込まれる!)
私は。とっさに——叫んだ。
「フレデリカお姉様! みんなを——お願いします! ここから、逃がして——!」
「——言われなくても、ですわ!」
お姉様が、すかさず応える。その手から、淡い光が——大きく広がって。意識を取り戻したばかりの——人々を、やさしく包み込んだ。
「さあ、みなさん! こちらへ——! わたくしから、離れないで!」
神聖な、光の盾。それで、人々を守りながら。お姉様は——みんなを、広間の外へと。誘導して、いく。
よし。これで——心置きなく。
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『——いくぞ、兄者!』
闇の精霊王が。嬉々として——両腕を、広げる。
ぶわっ、と。広間中の——闇が。荒れ狂い、ながら。光の精霊王へと——殺到した。
時計塔の——光が。それを、真っ向から——受け止める。
ごうっ、と。
闇の奔流と、光の奔流が。正面から——ぶつかり合った。黒と、白。相反する力が、激しく——拮抗して。境目で、無数の火花を——散らす。
闇の精霊王が、腕を薙ぐと。鋭い闇の刃が——幾百も。光の精霊王へと、降りそそぐ。
光の精霊王は、それを——眩い光の盾で。受け、流し。返す手で——槍のような光を。闇へと——放った。
闇が、躱す。光が、追う。互いの、手の内を——知り尽くした。兄弟、だからこその——一進一退。
ぶつかり合う、たびに。謁見の間が、ぐらぐらと揺れる。床が、ひび割れ。天井から、礫が——降ってくる。
……すごい。これが——精霊王、同士の。本気の、力。
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(……って、ええっ!?)
その、衝撃。余波。
すぐそばにいた——私にまで。容赦なく、襲いかかってくる。
黒い、衝撃波が。光の、爆風が。ばちばちと——飛び交って。
「——っ、わ、わわっ!?」
私は。慌てて——その場に、しゃがみ込んだ。
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「ちょ——っ! ねえ!」
飛んでくる、余波を。必死に——よけ、ながら。私は、叫ぶ。
「普通! こういう、時って! すこし! 考慮! して、くれるもんじゃ! ないの——!?」
息も、絶え絶えに。ぶつ切りの——抗議。
だって。さっきまで。あんなに——いい話を、して。手まで、取り合って。それで、これ?
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『ふはは——っ!』
闇の精霊王が。心底、楽しそうに——笑った。
『みどり! お前が——言ったんだろう!』
ぐるん、と。頭上の闇が——渦を、巻く。
『一緒に。全力で——答えを、探して、くれるんだろぅ?』
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ぞわっ。
見上げた、その先。
とてつもなく——巨大な。闇の、うねりが。空を、覆い尽くすほどに——膨れ上がって、いた。
それが。今にも——私の、頭上に。落ちて、こようと——している。
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「……ま」
声が。引きつる。
「……ま、まじ、か……」
全力。たしかに——言った。一緒に、答えを、探そうって。言った、けど。
(……いやいやいや! これ、絶対! “ぶつかり合う”の、規模じゃ——ない!)
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『——緑、危ない! こっちだ!』
今度は。ユリウスの——声。
フェンの風が、私の身体を——ふわりと、すくい上げる。間一髪。巨大な闇が——さっきまで私がいた場所に。轟音とともに——叩きつけられた。
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「……っ、ありがと、フェン! ユリウス!」
風に、運ばれ、ながら。私は——息を、つく。
なるほど。これが——精霊たちの、本気の喧嘩。人間が巻き込まれたら——ひとたまりも、ない。
でも。
不思議と。さっきまでの——絶望は。もう、どこにも、なかった。
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だって。
あんなに、楽しそうに——笑う、闇の精霊王を。私は。初めて——見たのだ。
さあ。
ここからが。本当の——最終決戦。今度こそ。みんなで——この、長い夜に。終止符を、打つために。




