私の、舞台
「——っ、ぶっ、はぁ——!!」
思いきり。息を——吐き出した。
はぁ、はぁ……。肩で、息を、する。
……やり、きった。
最後の、お辞儀を——終えた、瞬間。充実感で、その場に倒れ込みそうに、なった。
元々は、子供役を演じるだけの——予定だったのに。気づけば、母も、子も。何もかも——一人で、演じきっていた。
ドーパミンが、出すぎて——頭が、フラフラする。身体も、鉛のように——重い。
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横目に。闇を——見る。
ぶつぶつと、何かを言いながら。小さな身体を——震わせている。
(……届いた。私の演技が。少しでも——あの闇の、心に)
よかった。これで、私も——悔いは。
そう——思いかけた、その、ときだった。
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『——みどり』
ふいに、耳の奥に——あの声が、よみがえる。
『——あなたの好きに、生きて。あなたの舞台を、作って』
シルヴィアの——言葉。
「……あ」
私は。まだ——何も。作って、いない。
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(……悔い? 悔いなんて)
ぐっと。奥歯を、噛みしめる。
(悔いだらけだ、この、ヤロウ——!!)
よろめきながら、私は。足を——ダンッ!! と。床に、叩きつけた。
ビクッ、と。闇が——震える。
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スゥーーー、と。
息を、思いきり吸い込んで。お腹に、ぐっと——力を込める。
よし。
「——あぁあーーーっ! 急に、地球が、滅びないかなーーー!!」
暗闇に。私の、絶叫が——響き渡った。
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闇が。呆気に——取られたように。ぴたりと、固まる。
……うん。すっきり、した。
私は、ぐいっと口角を上げる。へなへなの身体に、もう一度——火を、入れて。
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「——ここからは。第二幕。ここから、始まる。私の、物語です」
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そして、私は——演じはじめた。
自分の、物語を。
突然、知らない世界に放り込まれた——恐怖。借り物の身体で、令嬢を演じきった——綱渡り。
楽しい思い出は。より、楽しく。悲しみは——より、悲しく。
見ている人が、本物みたいに——感情を、分かち合えるように。魂を、込めて。
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意表を、つかれた——闇は。最初は、何が起きたのか——よく、わかっていない様子だった。
でも。演目が、進むごとに。少しずつ——のめり込んで、いく。
私が、ワクワクすれば。闇も——身を、乗り出し。私が、悲しめば。闇も——一緒に、うつむく。
その感情が。だんだんと——重なって、いった。
気づけば。闇は——言葉を、挟むことも。忘れて、いた。
ただ。一人の観客として——舞台を、見るように。物語の、続きを——待って、いた。
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仲間と、出会い。笑い合い。ときに、ぶつかり。助け合った。
この世界が——大好きに、なっていった。その過程を、私は——全身で、演じる。
そして——ある、闇の精霊が。消えていく、場面。
闇は。ふと——何かを、考え込むように。じっと、押し黙った。
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……そして。
私の、物語は。今、この——瞬間に、追いついた。
幕が——下りる。
「——っ、ぷ、はーーー!! もう、死にそう……!!」
私は、今度こそ——その場に、へたり込んだ。出し切った。全部——出し、切った。
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『…………あの』
おずおずと、闇が——口を開く。
『その……こんなのは。初めて、見たぞ。……人間というのは。すごい、のだな』
その声には、もう。さっきまでの——とげとげしさは、なかった。
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私は。っはぁ〜、と——息を、吐いて。
「ふ、ふふ……うん。に、人間は——すごい、よ……」
まだ。息も——絶え絶え。それでも、私は——闇に向かって。そっと、手を——伸ばした。
「いろんな、顔を——持ってる、でしょう?」
怖くて。弱くて。醜くて。それでも——優しくて。強くて。美しい。
ひとつ。大きく——深呼吸を、して。
「だから——ねえ。一緒に、戻ろう」
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「この世界を、滅ぼすのも。どうするのかも——戻って。みんなと、ぶつかり合って。その先で。ちゃんと——答えを、探そう」
闇は、私の手を——じっと、見つめた。
そして。
ふっ、と——小さく、笑った。
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『……そうだ、な』
その声は、憑き物が落ちたように——澄んでいた。
『——お前とは。一度。本気で。戦い合って、みたい。そう——思えて、きた』
暗闇の、奥。
ずっと泣いていた——小さな闇が。今、確かに——前を、向いていた。




