第7話 護衛任務
噂となるからには一定の根拠があるのだろう。あれからしばらくして、本当に護衛の任務が来たというから驚きである。
体調不良は回復したが未だリハビリの稲嶺を除き、3人体制の第9班。加えて籠谷率いる第12班の連合チームにより大物政治家の護衛とのことである。本当はもう1班を追加する予定ではあったが、朝からいつも以上の出撃要請が市民から来たとのことで2班に削減となっている。もっともあくまで警戒任務であることを考えると比較的安全とも言えるため、2班でも問題ないともいえるのだが。
その推測通り人こそ多いものの大きな問題は起きていない。本職の任務というより、むしろイベント会場の警備員状態である。
「状況はどうですか?」
暇そうにしている猪原の元へやってきたのは平安。
「暇。平安は何をしに?」
「差し入れです。と言ってもペットボトルのお茶ですけど」
「ありがと」
彼はすぐにフタを開けて半分近く飲んでしまう。
平安は体よりも大きな剣を用いる少女である。猪原の棒や空見・籠谷のような刀、リハビリ中ではあるもサーベル・拳銃を用いる稲嶺などに比べると、とにかく武器が目立つ。そのため今回は新谷と共にバックアップに回っている。
「さすがに暇みたいですね。護衛任務ともなると……」
「そうだなぁ。安全なのはいいけど、ここまで暇だと緊急出撃の方もいい気がしてくるなって」
「どうなんでしょうか? いくつかの班からは交戦の連絡は入っているのですが、場所によっては誤報だったりイタズラだったりもあるみたいですよ」
「ふ~ん。いつものことじゃない?」
「普段より多いみたいですけどね」
彼女もずっと後方待機は暇なのだろう。ただお茶を渡しに来ただけにしては彼の元へと居座って話を続ける。
『であるからして、我々は皆さまの安全と生活を守りーー』
そんな中でもやってきていた大物政治家は集まった市民にマイクで呼びかける。その一言一言が、この乱された平穏の中で生きる国民たちに響くのであろう。時折返事として大きな拍手が観衆に広がる。
「国防省事務次官。山門寺虎三郎か」
「新世代のシステムの生みの親として、ここ数年で大幅出世した中年の星ですよね。もっともあまりにも出世が大幅すぎると黒いうわさも出てましたね」
「出世できなかった人たちの妬みな気もするけどな」
この任務を受ける前はいろいろ文句も言っていたものだ。しかしながらいざこうして彼の演説を聞いているとところどころ頷ける部分もある。今現在、国民は平穏を失っているが、その失った平穏は戦争中とは違う点がある。講和を持って終わる戦争とは違い、新生物との戦いは終わりが見えないのである。そんな中で対抗策として新世代を生み出し、政治家として国民に希望を与える。武力を持って国民に平穏を与える猪原らとは別の手段でもって安心を与えているのだ。何が悪い事があろうか。
「なんだかちょっと見直しちゃうな」
そう彼が安堵の声を出した時だった。
『9班並びに12班の班員へ緊急通信』
猪原と平安の無線から新谷の声。混線を防ぐために平安が無線の電源を落とす。
『新生物の接近を確認。推定接敵時間は最短で2分。ポイントD4エリアに各員移動を要請します』
「マジかよ」
見るとステージ横にて事務次官の護衛を行っていた空見と籠谷も動きを見せている。それに合わせてスタッフや秘書も状況を把握したように事態の収拾に動いていた。
「なんともまぁ運が悪いことだ」
「私も得物を取ってきます」
猪原は直接指定エリアに、平安は武器の積んだ車両の元へ駆ける。
大物政治家の演説中。それも多くの市民が集まっている、ただでさえ指示が通りにくく、混乱の可能性が高い。加えて緊急出撃で護衛の人数もわずかながら削減され、総出撃体制であるため援軍も望めない。
この襲撃はタイミングが悪い。いや、あまりにも『悪すぎた』ものだった。




