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夜明けの新世代  作者: 日下田 弘谷
第1章 新世代
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第8話 絶体絶命

「で、何アレ」


「鳥ですね」


「相性悪っ」


 空見の問いに答える新谷。すると横で聞いていた猪原が苦言を呈す。


 というのも相手は空を飛ぶ生き物である。そうなると近接装備のメンバーは基本的に攻撃不能となり、敵に打撃を与える手段は迎撃のみとなるだろう。そして遠距離攻撃可能なメンバーと言えば……


「皆さん。守ってくださいね?」


 新谷はすぐさま狙撃銃を空に向けて構える。推定距離200メートル以下。狙撃銃にとってはかなりの近接戦とはなるが、所詮はただの引き付け役である。


「では……行きます」


 新谷、発砲開始。


 相手が動くことに加えて決してうまくない銃の腕。しかしながらいかんせん相手は大きなターゲットである。2度、3度と何度も放った弾は、簡単に敵の胴体を捉え続ける。そして捉えられた大きな鳥は急降下で新谷へと向かう。すると彼女の前に割り込んだ猪原が自慢の鉄の棒を広がったくちばしに突っ込み、つっかえ棒にする芸当。相手を地面に拘束した間に空見が鳥の背中に飛び乗る。


「っと、あぶねっ」


 するとその背中の違和感に気付いた鳥は、すぐさま翼を羽ばたかせて飛行体制へ。そのまま宙づりになりかねない猪原は棒を抜いて緊急退避。鳥は猪原・新谷をよそに空へ舞う。


「ひゃあぁぁぁ、空飛んでるぅぅぅ」


 鳥の背中に刀を突きさし、さらに毛を強く握り、なんとかしがみつく空見の声が空から聞こえる。


「楽しそうだな、オイ」


「これはまずいです」


 唾を吐きながらツッコミを入れる猪原の一方で新谷は難しそうな表情。なにせ敵の背中には味方がいるのである。これを撃つことは非常に難しい。彼女はさらに体勢を低く体を安定させ、集中して銃の先を空へと向ける。


「空に向けて撃つのは苦手なのですが……」


 一発必中。その思いを込めて引き金に手をかける……


 その時だった。


 地を揺るがすような大きな音と共に別の影が迫る。


「えっ」


「くっ、まずい」


 新谷がターゲットチェンジして銃撃も、狙いを定めず当たるわけもない。さらに猪原が防御態勢に移るも相手の速さが異常である。体当たりで突き飛ばされた猪原は数十メートルの距離、まさしく宙を舞い、着地と同時に受け身をとる。


「でけぇライオンだな。敵が同時に2体なんて聞いてねぇ――っ」


 と、猪原が気付く。


 空見は今、鳥の背中である。そして自分は吹き飛ばされて、新目標とは距離がある。つまり今、巨大ライオンは遠距離攻撃要員たる新谷と1対1である。


 新谷も新世代の一員。距離にして数メートルの超超近距離で引き金を引くが、


「た、弾切れ⁉」


 なんとも運が悪い。先ほどすかさず放った一発が最後の一発だったようである。手持ちはあるし、装填すればまだ撃てる。だが時間がない。ライオンは口を大きく開けて新谷に襲い掛かる。

「だ、誰か助けてぇぇぇぇぇぇぇぇ」


 猪原や空見ですらも聞いたことのない、死に直面した新谷の悲鳴交じりの叫び。だが猪原は距離があるため、助けられるものなど、


「任せなさいっ」


「遅れてすみません」


「助太刀いたす」


 空見が空挺。平安が大剣を振り下ろし、籠谷が刀を手に突っ込む。最悪のタイミングでやってきた新たな敵に、やってきた仲間のタイミングは最高である。平安の大剣での攻撃におよそ2名巻き込まれかけたのを除けば。


「間に合ってよかったです」


 平安は砕けた、もとい砕いたアスファルトから大剣を引き抜きつつ、近くの新谷へと目をやる。


「ひゃっほぉぉぉ。はやぁぁぁい」


「まったく、彼女は背中が好きだね」


 仲間の攻撃に巻き込まれかけてちょっと危ない目をした籠谷も、ライオンの背に乗って地を駆ける空見に目をやりつつ安堵の様子。


「た、助かった」


 一命を取り留めた新谷は脱力。


「実際は助かってないんだけどね」


「はい。遅れた理由でもあるのですが、もう1体の襲撃を受けました。そちらについては既に重症を負わせたので、後処理を残りの2人に任せてきたのですが……こちらも2体でしたか」


 つまり2班で3体を相手にするということである。基本的に1班で1体を相手にすることを想定していることを考えると、現在9班は班員が1人欠けていることも考慮してかなり厳しい状況である。


「さて、この2匹をなんとか」


「残念だ、かなみ」


 籠谷は遠くに見える影を指さす。


「3匹だ」



 きっと到着に1分もかからないであろう大きな影。


「ひゃっほぉぉぉぉ」


 空見が乗り回すライオン。


「ちょっ、お前ら。早く助けろ」


 猪原が1人で防戦を繰り広げる鳥。



 わずか5人で3匹を相手にしないといけない模様。


 絶体絶命である。


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