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夜明けの新世代  作者: 日下田 弘谷
第6章 崩壊へ
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第1話 体調万全

 内部に不穏な気配が漂いつつある新世代。そもそも設立の経緯自体が謎の敵対存在である新生物の出現に伴う突発的なもの。加えて招集した人間のほとんどが、新生物被害により親を亡くしたいわゆる戦災孤児である。言ってしまえば徴兵に近い形をとってはいるが徴兵ではない、正規の軍人ではないが正規の軍人のようなもの。という曖昧な存在。それだけにちょっとしたことで組織自体が揺らぐものなのだろう。


「しかしまずいな。これ」


 猪原は新世代統括機関の発行する情報誌を目にしながらつぶやく。


 曰く新世代の戦死と推測される行方不明者が増えてきているのである。猪原らが所属するのは神奈川県を本拠地とする南関東管区。しかしそこにおいて海外使節による第3課の誘拐および死亡、そして複数の班の謹慎処分に空見の離反などが相次いだ。それでも新生物の攻撃は止まるわけもなく、その補助に入っているのが北関東管区や東海管区などの周辺エリアである。しかし元々が自分たちのエリアだけでいっぱいなのに、他エリアの助けまでとあっては疲労がたまる一方。それにより新生物に捕食などの理由で行方不明者が増えていると推測される。


「どおりで自分たちの班の解体併合が先延ばしになったわけだ」


「まぁそんな余裕はないってところでしょうか」


 稲嶺と新谷も半ばため息。謹慎処分を食らった上に離反者の出した班をそのままにしておくなど、砂糖の何倍も甘い処置ではあるが、猫の手も借りたい状況でそんなことなどしてはいられないのである。


「ただこれだけ新世代が崩壊しつつあるのに、新生物被害が抑え込めているってのは……」


「自衛隊や警察機動隊、そしてあの集団ですか」


 稲嶺の疑問に新谷が補足。すると猪原が情報誌から目を上げる。


「空見なぁ」


 あれ以降、一般市民からの報告により自衛隊や新世代とも違う組織の存在が多く確認されている。情報を整理した結果、空見を中心とする国民解放戦線の対新生物機関と考えられる。彼女らが機動的に首都圏を動き回り新生物を撃滅しているのである。


「今は一般市民からはその組織の存在が明確にされてはいませんが、既に知る人は知る存在となっております。現在の立場がただのテロリストと言ってもその活動は国民を実際に守るもの。戦死・行方不明者多発で、半ば無理やり対処的に作られた新世代に対する国民支持を、彼らが上回る日が来うるかもしれません」


「まぁ国民支持で戦ってるわけじゃないけどね」


 新谷の政治的な発言に稲嶺がツッコミをひとつ。


「問題なのは組織が崩れかけている新世代と、今まさに隆盛の気配を見せている国民解放戦線。どちらが国民にとって利益が大きいかということですからね」


「新谷。あまり変なこと言ってると目を付けられるぞ。班の解体は延期とはいえ、要注意指定されてるのは間違いないんだから」


「安心してください。私の思いは後にも先にも一つ。国民を守りたい。そのためにここにいるわけですから、それが果たせる場所にいます。ここにだっていますよ、もちろん」


 いくら戦災孤児を半ば徴兵ぎみに招集したとはいえ、親を亡くした子供たちである。それだけに強い思いを持っている子供だって少なくない。まさしく彼女のような者だってそうである。


「ならいいけども」


 話が適度に一区切りと言ったところで猪原がふと気付く。


「そういえば新谷。体の調子はもう?」


「そうですね。さすが新世代というべくすぐに治りましたね。腕の調子どころか、それ以外の体調も万全ですよ。えぇ、ここ数年で最高というくらいに」


「それほどとはな。ケガのおかげでかえって休めたか?」


「そうかもしれませんね。なんにせよ体調は万全です」


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