プロローグ
事の次第を知ってしまった一部の新世代たちに衝撃が走る。
新世代同士の交戦。厳密には現新世代と元新世代の衝突。そしてその原因が国民解放戦線への寝返りであり、事実上の裏切りであるというのだ。
細かいことを指摘するならば、新世代と国民解放戦線は直接的に敵対関係にあるわけではない。国民解放戦線は新世代側と交戦する意思を持たないようであり、加えて新世代側も国民解放戦線と戦う義務はないのである。強いていうなれば国家権力のひとつとして、新世代側が国民解放戦線VS警察・自衛隊の構図に首を突っ込んでいるというところか。
だが未だかつてない事態に現場のみならず上層部も混乱したのは言うまでもない。
そしてその煽りを一番に受けたのは3人である。
「また取り調べ……疲れた」
「まぁ状況から言えば次に疑われるのは自分たちだろうし」
猪原・稲嶺が口を揃える。そこに新谷を加えた3人である。
空見が寝返ってしまったとあっては、さすがにその同じ班にいた3人が疑いの目を向けられるのは当然ともいえる。さらには彼ら以外にも交友関係や、過去の共闘関係からさらにその対象を広げられているという噂も出たのだから、つくづく彼女は大変なことをしてくれたものである。
「新谷も応えたんじゃない?」
「そうですね。まぁさすがにそこまでえげつない取り調べはしないですし……言ってしまえば私はケガ人ですから」
猪原の問いにそう答える新谷。彼女は首から三角巾で下げている左腕に視線を落とす。なんでも対空見戦で骨にヒビが入ったとか。いくら驚異的な回復力を誇る新世代といえども、やはり人間でありさすがに数分で回復するほどの力はないのである。
「ただでさえ内部が動揺しているところ。あまり上層部も下手に厳しいことはできないのかもしれません。いくら戦時統制下とはいえ、新世代から国民解放戦線への寝返りなんて話が漏洩すればどうなるか分かったものではありませんから。組織としてのケジメは付ける必要があれど、あまり忠誠心を揺るがすことをすると第二、第三の空見さんが出てきかねませんから」
彼女は不穏なことを口にしながら視線を下に落とした。本人曰く空見と戦った傷である左腕へ。




