第6話 会敵。国民解放戦線
「遅かったか……」
新世代の面々が目的地に着いた頃にはそのすべてが終わった頃だった。新施設とされる建物付近に止まったパトカーの周りでは警察官が体を押さえて座っていたり、寝転がっていたり。と言っても各々、どこかしら負傷をしているように見える。
そして建物からはスーツを着た男が立派な姿の男の肩を抱えて出てくる。しかしその男に生気は無い。左肩から右脇にかけて服が裂けておりその高価なスーツも血に濡れている。おそらくはその男が視察に来た政治家なのだろう。
「これはいったい……」
稲嶺は猪原の横に立ってその惨状を見渡す。するとその後ろにいた新谷が小さくつぶやく。
「国民解放戦線」
「おそらくは」
頷いた猪原の読みはこうである。
今回、視察に来た政治家を何らかの理由で襲撃ようと計画を立てたテロ集団・国民解放戦線。ところがちょうどそのタイミングで新生物が近隣を襲撃。住民を守るために自前戦力を持って新生物を掃討した上で、さらにこの政治家の襲撃も成功させた。それが先ほどの原因不明の新生物の死体と、この現状の説明である。
話の筋は通る理屈であるがそれにはひとつの前提条件がある。
国民解放戦線は、新生物2体を撃ち破った上で、警察の警護も突破して政治家を暗殺できるほどの武力を持つということである。
ただでさえ新生物によってその国家の存続が揺るがされている状況において、同時にそんな武力を持ちうるテロリストとも対立せざるを得ないというのが厳しいことである。基本的にテロリストの相手は警察および治安出動発令下の自衛隊が行うわけであるが、やむなく新世代が遭遇戦を行うこともある。そういう対立構造なのである。
間に合わず与える必要のない被害を与えてしまったことに落胆する猪原たち。
そこにパトカーに警察無線が飛び込んでくる。
『現在、国民解放戦線と交戦中。至急応援を乞う。場所は――』
顔を見合わせる面々。すぐさま自分たちの車に乗り込み、その場所へと向かう。おそらくは警察の一部が撤退する国民解放戦線の主力部隊を追尾。その果てに交戦したのであろう。場所は決して遠くない場所でありすぐにたどり着くだろうが、これほどの状況を引き起こした戦力である。あまり時間をかけては交戦中の警察官がどうなるか分かったものであはない。
不安に駆られる猪原の一方で、新谷は先ほどの状況を思い出しながらひとつの違和感に気付いていた。あの場において、彼女の眼の届く範囲においては、あの政治家以外に死者が出ている様子はなかったことである。もしも敵の目的が本当に政治的な理由であり政治家を目標にしているのであれば。そして一般国民に手を出すつもりがないのであれば、警察官たちの命についてはかなり安心してもいいと考えられる。それでも自らの命を脅かす存在に対して真正面から戦う存在であればどうかは分からない。いずれにしても情報が少なすぎるのである。




