第3話 第三勢力
やはり現在の班の解体は検討中であるとのことである。しかしながら殉職と異なり生死不明であることから、空見が帰ってくる可能性もないにしもあらず。としてあまりトントン拍子に話が進んでいくということもない模様。だがかといってこのメンバーで最前線に派遣するというのも不安が残るところではあろうということで、基本的には他の班と臨時の連合チームを組んでの作戦展開となるだろう。即時解体は免れないと思っていただけにこれは僥倖。もっとも解体が先延ばしとなっているだけで、いずれ解体は免れないが……
「お疲れ様」
「できれば可愛い子に入れて欲しかったな」
「それは残念でした」
猪原は第12課に入り浸り、籠谷が気を使ってお茶を差し出す。野郎の出したお茶より美少女の出したお茶がいいのは男ゆえやむを得ないことなのだろうが、かといって他の女子陣ならいいかと言われると……
「では自分が入れた方が?」
「お断りします」
生臭い血の匂いがしなくもない大剣のメンテナンス中の平安。武器を除いた彼女自身の見た目だけならいいのに、そんな武器を構えただけで彼女の可愛らしさはきれいに吹っ飛んでしまう。
「と言うか、その武器からしてもう出たのか」
「さすがに遊んでいる余裕はないですからね」
平安が大剣を見せながら答える。
第9課については空見の騒動で謹慎解除以降、一度も出撃には至っていない。だが第12課については既に新生物退治に出たとのこと。曰くその出撃において謹慎明けにして平安の大剣が生み出す攻撃力が敵新生物を薙ぎ払ったようである。
「2つの課が謹慎食らってたことに加えて、第3課が先の事件で壊滅したもんねぇ。関東エリア管轄の横須賀がかなり戦力減少して。なんならさらに敵も増えたし……」
「増えた?」
「何も聞いてないの?」
稲嶺の問いに猪原が頷く。
「国民解放戦線を名乗るテロリストがいるってのは?」
「知ってる……一回交戦したし」
猪原もその存在は把握している。というのも過去に彼らによって政治家重鎮の護衛任務を失敗させているのである。だが特別それらの動きは活発だった印象は猪原にはないが。
「ウチの活動が鈍くなって押さえが効かなくなったからか、ここ1週間くらいの活動が激しいみたいなんだ」
「つまり敵が2勢力……なのか」
「どうでしょう? 実は一概にも敵とは言えなさそうなところが」
「というと?」
「この手の事は情報通の新谷さんの方が詳しそうですけど、私たちの動きが鈍っていた時に新生物の活動を抑えていたのが国民解放戦線である。という噂があるんです」
「ということは、国民解放戦線は新生物と戦っていて、新世代とも敵対状態にある?」
「そうですね……テロリストであり国家と対立関係にはある一方で、国民の安全を守りたい思いは一緒ということでしょうか。それならばぜひとも協力したいものですが」
平安は残念そうにため息を漏らす。
「テロリストである以上、公権力である警察・自衛隊や新世代は敵対せざるを得ない。そうなると相手も自らの身を守るために抵抗せざるを得ない。そうなると戦わざるを得ない。といったところかな」
籠谷も一定の理解を示しつつ悔しさを表に出す。そんな2人の雰囲気に引きずられないわけがないのは猪原。
「せめて相手方に話ができる人がいればいいんだけど」
だがさすがにそんなテロリストの知り合いなどいるわけがないのである。そんなものがいた日には、公安やら新世代上層部が嗅ぎ付け、彼の線から一斉摘発が行われてるのは間違いないだろう。




