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夜明けの新世代  作者: 日下田 弘谷
第1章 新世代
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第4話 新生物

 敵は全長10メートルはあろうかという巨大な相手だ。一般人が巻き込まれるとひとたまりもない。そのため車はただちにこの場から撤退させて3人がこの場に残された。

 と言っても、おそらくは味方に連絡が向かっているはず。先ほどの戦闘地点から大きくは離れていないだけに、しばらく時間を稼げば援軍が来ることだろう。そういう点では時間稼ぎが最善手ではあるのだが……


「もらったぁぁぁぁ」


 血の気の多い空見がそんなことは考えないわけで。すぐさま刀を抜いて蛇に襲い掛かる。


「仕方ない。新谷、援護任せた。背中を撃つなよ」


「善処します」


 猪原は鉄の棒を振り回しつつ、新谷は片膝をついてライフルを構える。するとすぐさま猪原の背後から発砲音。彼の真横を抜けた銃弾はそのまま蛇を――かすめていった。


「下手くそ」


 小さくつぶやく猪原。そもそも彼女が超距離射程火器を使っているのは、優れた視力を生かすためであり、彼女自身決して銃火器の扱いが上手いわけではないのである。しかしその大きな音と、そこそこ威力のある武器はひとつのメリットを生む。


 一瞬、空見に意識が向いていた蛇が新谷へと意識を向ける。つまり彼女の目的は銃を用いて敵を仕留めることではない。目立つ銃を用いて敵の意識を引き付けることである。


 蛇はすぐさま振り返り、遠く離れた新谷に向けて牙をむき出しにして威嚇。そうしている合間に近くに駆け寄ってきた空見が蛇に飛び乗り、胴体に刀を突きさした。


「もらったぁぁぁ」


「やれ、空見。そのまま中枢を断ち切ってしまえ」


 蛇の目の前であえて大きな動きを見せながら意識を向けさせながら猪原が叫ぶ。


 新生物はかなり生命力が高い。簡単に死なないこともそうだが、回復力もすさまじいものがある。それこそ現れてすぐの頃は、自衛隊・警察が総攻撃を食らわせたにも関わらず、ほぼほぼ勢いそのままに戦車1両をひっくり返らせるほどだったとか。しかしそんな新生物にも弱点がある。


「中枢はどこかな……ここと見た‼」


 刀を抜いた空見は再び刃を突き立てる。


 それが『中枢』だ。生物によって場所は脳だったり、心臓だったりすることもあるが、8割方『脊髄』である。そこを確実に『断ち切る』ために近接白兵戦闘は重要視される。もちろん某国のように爆撃で消し炭にすることもできるが、場所が市街地であった日にはとにかく被害が大きいのである。


 探りながら中枢を断ち切ろうとする空見。棒で直接打撃を与えつつ敵を牽制する猪原。2人を誤射しないように慎重に銃撃する射撃下手な新谷。3人がそれぞれ連携を取りながら蛇に向けて着実にダメージを与えていく。もっともどれほどダメージを与えても、中枢を切らなければほぼほぼ意味がないのだが。


 そうして長らく戦いを続けていたが、ついに空見の一撃が中枢に突き刺さる。彼女の刃が中枢を切った直後、蛇は最後の力を振り絞り反撃に出た。胴体に飛び乗っていた空見の足に、蛇の尻尾が巻き付く。


「あっ、ヤバっ――」


 牽制は2人に任せていたために、自衛の意識を忘れていた攻撃意識前回の空見。反応が遅れた彼女を、蛇は尾を振って投げ飛ばした。勢いよく投げられた彼女はアスファルトの道路でワンバウンドしてからガードレールに直撃した。だがそれこそがまさしく最後の抵抗だった。それで力を使い果たし、中枢も断ち切られた蛇は力なく、その巨体を道路に横たわらせた。


「単独だし、楽だったな。空見、生きてるか?」


 その蛇の死亡確認を行った猪原は続いて空見の生死確認。すると彼女はガードレールを背に座りながら、手を振って答える。


「大丈夫よ。生きてるから。どう私、外傷はない?」


「そうだなぁ。その鮮やかな赤いメイク、素敵だと思うよ」


「治療してもらわないとなぁ」


 猪原の発言と、額右側のほんのりした痛み。加えて右頬あたりに粘り気のある液体が流れる感覚。これから今の自分の状況をなんとなく察した空見はため息一つ。


「新谷、報告任せた」


「はい」


 少し遠くにいたことで、若干遅れてやってきた新谷。猪原が回収用のグループと帰還用の車の手配を頼むと、彼女はその手にした物騒なライフルをそこらに立てかけて、ポケットから通信機を取り出し連絡を取った。


「空見、歩けるか?」


「おんぶして」


「子供かよ」


「いや、マジで」

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