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夜明けの新世代  作者: 日下田 弘谷
第1章 新世代
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第3話 遭遇戦

「お疲れ様です」


 車に乗り込むと先ほど無線を通じて会話していた新谷が最後列に既に座っていた。帰還用の車両に乗っているということは、後方支援といっても新世代の人間として比較的前線に構えていたということである。


「お疲れ様」


 猪原は3列席の内の2列目に腰かけ一息つく。


「ほんと、まったく気が緩まないというか。休みが欲しい」


「さっきも同じこと言ってなかった?」


 彼に続き車に乗り込む空見が呆れるような一言。彼女が乗ると、早速とばかりに車が動き出す。


「いえ。後方で指揮伝達しているだけの私でもそう思いますから、前で戦っている猪原さんがそう思うのも仕方ないと思います」


 新谷は猪原をフォローするような返答。いくら仕事とはいえそれだけ東奔西走していれば疲れるものは疲れるのである。


「もっとも、相手があれだけでよければまだよかったのですが……」


 と、彼女は遠く過ぎていく新生物の死体を見ながら不穏ないい回し。するといわゆる女の勘というものであろうか。空見の眉がわずかに動く。


「何かあったの?」


「えぇ。国内での動乱が。人類は――いえ、日本ですら一枚岩ではなかった。ということでしょうか」


 実際問題、新生物の出現により日本の治安は大きく変動しつつある。警察組織がその対応に手いっぱいであることに加え、その戦地における火事場泥棒も続出している。もちろんそれについては少しずつながら警察、時には自衛隊までも動員して対応を行い、『動乱』というほどではなかったのであるが?


「猪原さん、空見さん。お二人は『NLF』もしくは『国民解放戦線』という名前に聞き覚えは?」


「いや、ないな」


「私も」


「そうですか……私も最近聞いた話なのですが、いわゆるそういった名前のテロリストが国内で活動しているとのことです」


「目的は?」


 そのあまりにも簡潔な説明に対し空見は問う。


「不明です。しかしその行動は政府高官への傷害行為に限られ、現在は民間人に対する被害者は出ていないとのことです。日本政府に対して何らかの主張があるものと考えるのが普通です。テロですから当然ですが」


 あまり情報を持っていないということであろうか。そこで猪原は閃く。


「運転手さん。何か知っていますか?」


 3人とは別の人間。仮にもこの組織の別の人間。それも実働部隊である彼らとは別の命令系統の者ならもしくは。そう考えて聞いてみたが、


「いえ。ワタクシはただのドライバーです。何も」


 白髪交じりのおじいさん運転手は答える。


「別に数年前にあった、動物愛護団体のそれじゃないんだろ?」


「どうでしょうか……それすらもはっきりしていません」


 猪原の言う動物愛護団体とは。新生物が現れてすぐの時、自衛隊がその排除活動を本格的に実施し始めた。しかしそれが動物愛護に反するとして政府の対応に抗議を示したのである。もっともその団体は直後に不幸にもその新生物に襲撃を受けて壊滅してしまったのだが。


「ほんとうにすべてが曖昧だなぁ」


「えぇ。すみません」


「でも、それだけ曖昧な情報を話に出すということは?」


「私たちがその対応に当たる必要が出てくるかもしれない……という話です。今は警察も手いっぱいです。ただ口を出しているだけの愛護団体ならまだマシですが、政府を狙い国家の基盤を揺るがすテロ組織はさすがに無視できませんから」


 なんだかんだ言って百の言葉よりも一の力の方が強いということである。そしてそうしたテロ組織の言葉も無視できないあたり、その『言葉』も『力』の後ろ盾が大きいということだろう。


「ただでさえ忙しいこの時にそんな面倒なことを。一丸となって事に当たる時じゃないのか。平和ボケしやがって」


 家族を失い、一度は居住地も居場所も失い、そして今は最前線で戦っている。彼にとっては、こんな時に自らの権利を高らかに主張し政治を振り回す奴らなど、平和に酔っているだけの酔っぱらいに見えて仕方ない。自分たちが守っているのがこんな連中なのだと初めて知った時には、命を賭けて戦うのが馬鹿馬鹿しくなったものだ。今では仕事であり、自分の居場所を守るためと割り切っているが。


 ほんのり不満に思いながら外の景色を眺めていると、後部座席に乗っていた新谷がつぶやいたのに気付く。


「何か言った?」


「些細なことですが」


 彼女の見かけた方法に目を向けた猪原はため息を漏らす。そして空見はあろうことか、50キロを超える速度で走行中の車のドアを蹴り開け、刀を手に道路に飛び降りる。


「行こうか。新谷はいつも通り後方支援」


「はい。止めてください」


 新谷の一言に車は急ブレーキをかけて停車。猪原はいつもの鉄の棒を、新谷は車の後ろから大きな対人ライフルを取り出す。


「新谷の戦闘なんて久しぶりに見るな」


「せいぜい相手の気を引くだけですよ? 近接戦闘と仕留めるのはお任せします」


「へいへい」


 直後、車を飛び降りた空見と2人の中間あたりに大きな敵が現れた。小さな羽の生えた大蛇。そのように言えばドラゴンのような、しかし実際の見た目はドラゴンではないそれだった。


「見る限り空は飛べないと見た。それなら僕らでも戦える」


「いくら私たちでも空は飛べませんからね」


「そういうこと。さぁ、追加手当を貰いにいこうか」


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