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夜明けの新世代  作者: 日下田 弘谷
第1章 新世代
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第2話 制限解放器

 新たに現れた敵『新生物』への対抗戦力として、自衛隊と肩を並べるのは『新世代』という陸戦部隊だ。だが自衛隊は銃器や、時には戦車・艦艇・戦闘機を駆使して戦う一方で、新世代は銃器を使うものもいるとはいえ、刀剣類や打撃武器が主力である。どうみても自衛隊のそれと劣る近接武器を用いているにも関わらず、強力なる新生物に対抗できるのは1つの理由があった。


「おぉ~、あいつやるなぁ」


「第12班の子だね。すごいよね、あれ」


 猪原と空見が見る先では、少女がとんでもなく大きな剣を持っていた。成人の男性でも持てないような『大剣』を少女が扱っているのである。もっとも体重が無いせいか、持ち上げるのは楽々そうにも、振り下ろすと同時に体が振り回されているが。


「さて、僕らも行こうか」


「そうねぇ」


 2人は一気に駆けだすと、それはそれは短距離の世界記録更新も容易かろう速さで敵に迫る。そして毎度のように猪原が敵の攻撃を鉄の棒で防ぐ合間に、空見が軽々敵の背に飛び乗り急所を刀で切り裂く。


 そう近接武器が超兵器になりうる理由。それは圧倒的な身体能力であった。


 だがこれはあるアイテムが関係していた。


 彼ら彼女らの腕に付けられた小物。一見すれば腕時計のようだが、時計になっているわけでもないどころか、簡単に取り外しできないように溶接されているのである。加えて解体もできないように、ネジ1つ使われていない徹底ぶり。これは正式名称『制限解放器』(リミットブレイカー)と言われる装置だ。開発者の話では、電磁パルスの力でなんやかんやして、本来は人間が制御していて出せない力を100%出せるようにする装置とのことである。もっともこれにはいくつか欠点がある。こちらも開発者曰くであるが、実際にその兆候は表れているので事実であるとはいえるのではなかろうか。


 その力を使って市街地に現れた新生物を撃破した猪原は、絶命した敵を前に無線を口元へ近づける。


「こちら第9班・猪原。市街地に出没した敵を撃破。事後対応を願います」


 そう発すると、無線を通じて可愛らしく穏やかな声が聞こえてくる。


『お疲れ様です』


 彼女は彼ら第9班に属する後方支援担当(オペレーター)である新谷愛美。彼女も制限解放器を付けた新世代の1人であるが、あいにく戦闘能力の方向へ力が大きく伸びることはなかった。解放器の欠点のひとつ『人によって効果がまちまち』であることが現れた例だ。だがもともと視力が悪かった眼鏡っ子であったとは思えないほど目が良く、聴力も優れるなど、五感に長けている。さらに猪原らに比べると分が悪いだけで一般人に比べると身体能力は高い子である。


『現在、死体回収用のグループと合わせて、猪原さん達を回収するための車両を向かわせています。まもなく到着するはずですので、しばらくお待ちください』


「はい。了解」


 そう答えて無線を切る。聞いているとまるで後輩からの連絡であるが、原則として各班は同い年のメンバーで構成されている。ということは、彼女は彼と同級生のはずであるが。


「お疲れ様」


 と、無線が終わるなり空見が声をかけてくる。


「お疲れ。まさか今日も横須賀から出張とはねぇ」


「ほんと最近多いよね、出張。手当が付くけど」


 彼らの本拠地があるのは沿岸部かつその他実働部隊との連携が付きやすい場所とのことで、関東圏では神奈川県横須賀市となっている。いわずとしれた海上自衛隊・在日米軍の本拠地だが、あれは東海岸。彼らの本拠地は西海岸。連携を考え道や交通網を再整備したとはいえ、なぜ中途半端に距離を離してしまったのか。


「これで衣食住を揃えている身とはいえ、さすがにしんどいね。そろそろ敵の本拠地を叩いて、一気に楽したいよ」


 猪原は横に倒れている大きな犬を見ながらつぶやく。すると空見は半分納得しながらも、納得はしきれない様子も見せる。


「そうだね。攻められるばかりじゃなくて反攻に出たいけど、これって本拠地抱えて組織的に動いてるのかな?」


 今回の相手もそうだが、集団を組んで襲撃してきている。しかし野生動物だって群れは組むし、巣だって作る。なんなら戦術的に狩りをする生き物もいる。だが人間のように広域的・世界的に戦略を組み立てるようなことをするだろうか。実は適当な場所で生まれ育ち、適当な場所を攻めてきているだけではないか。その集中地点が偶然にも日本近海であっただけで。


 そう戦闘後の息抜きに話をしていると、死体回収用のトラックと中型の乗用車が数台やってきた。送迎と事後始末の部隊である。


 一台の乗用車から軽装甲の男たちが現れ、獣が絶命しているのを確認してトラックに運び込

む。それを横目にスーツの男が、猪原達の前に立つ。


「お迎えに参りました。すぐに横須賀に帰られますか?」


「自分は直接でもいいけど、空見は寄るところは?」


「私もないかな」


「かしこまりました。では、1号車にお乗りください」


 スーツの男は軽く一礼して他の人たちの場所に向かう。猪原と空見は特別な行動をとることもなく、慣れた様子で『1』の小旗が掲げられている車に乗り込んだ。もし思うところがあるならば、ただ「今日も無事、生き延びられた」それだけだろうか。


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