第10話 不穏な動き
かの研究所については航空自衛隊の飛行機により爆撃を行い掃討。曰くそのあとそれから逃げるように出てきた新生物は、その場にいた新世代の部隊によって各個撃破。大まかな調査によると当該区域の新生物については壊滅と判断されるものの、一般市民への開放については詳細な調査を待つとのことである。
ところで軍隊というのは命令や規律とやらには厳しいものである。なぜなら1人の違反によって集団全体に危険が及ぶかもしれず、そしてそれは敗戦や個々の死につながるかもしれないからである。
というわけで先の掃討作戦によって命令違反を行った……と、思われる数名については謹慎処分となっていた。というのもそもそも敵を叩いた勲功もあることに加え、名目上は通信機の破損と新生物を疑っての偵察だからだ。だが立ち入り不可区域に踏み込んだことは処分に値するといったところか。
「暇だ……」
猪原、処分は既に5日目。外出も許可されていないことから非常に暇な日常を送っている。新生物に対抗しうる戦力を遊ばせる余力があることにこの国の未来を感じるべきか、遊ばせる愚策を取ることに絶望すべきか。そんなことを考えながらも得物たる鉄棒についた血の匂いを消すべく薬品につけておく。
そして他のメンバーも同じく。
「最近の戦闘で予備の弾薬が減ってますね。調達しないと」
新谷はそこまで積極戦闘を行うというわけではないものの、減ってきた銃弾を見て次に注文する弾の数をメモ用紙に書き込む。
「あれ? もしかして曲がってる?」
そして稲嶺。自分の愛刀がよく見れば湾曲しているように見えなくもないことに、2割の希望と8割の失望を感じつつメンテナンスを続ける。
各々が次なる戦いに備える中、1人だけ、空見は別のものと向き合っていた。
1枚の紙きれ。見出しはともかくとして、中身は見慣れない漢字や横文字が並ぶ文章。それをクローゼットの中にいつかゴミとして出すべく放り込んでいた、国語辞書・英和辞書を手に解読する。
そしてそのひとつひとつを解読していくうちに、彼女は彼女なりの答えを見つけ出し……そして決断の時へと歩みを進めていった。そして彼女の部屋のベランダ、そこに干してある真新しい買ったばかりの白シャツを裂くように飛び込んできた『矢文』が彼女の背中を押した。




