第9話 新生物、掃討
「つまりここは……」
空見は辺りを見回しながらこの研究所の正体に気付く。この近辺に出没する多数の新生物。そしてこの明らかに日本語で書かれた文書。
ここは新生物の研究所。何らかの理由により研究対象たる新生物が野生化。研究者たちもそれを抑え込むことができずに、放棄されてしまったと考えるのが妥当であろう。地震を始めとした災害か。はたまたカギの締め忘れなどのヒューマンエラーか、それ以外か。経緯は不明ではあるが……
「でも仮にそうだとして、上層部はなんでここに近づくなって言ったんだろ? 本当にここが新生物の研究所なら、ここが住処になってると考えるのが普通だろうし、だったら突入させたっていいのに」
猪原の疑問はもっともである。それこそ子供にもそうだと分かるようなことではある。もし理由があるとすれば、ここの存在が明らかになって困るといったところか、もしくはさらに大きな秘密があると考えるべきであるが。
「そうですね。さしずめ、この近辺における市民のことを考えた。ってところじゃないでしょうか」
「と言うと?」
平安の意見に相槌を打つ籠谷。
「例えば以前からゴミの処理施設や軍事施設などと言ったものは、建設に際して周辺施設の影響などで一般市民から反対の影響が出ることは往々にしてあります。この新生物の研究施設も一般市民からの反対が出た、もしくは出る可能性があったと考えるのが普通でしょう。ということは秘密裏に建設し、そして崩壊した」
「まぁありそうな話だこと。それでそのことが一般市民に割れたらこの研究所建設を主導した人間は失脚間違いなしだわな。こんなものを住人に理解を得ずに作った上に、これだけの大事故起こしてんだから」
平安が1を語ったことで籠谷は2や3も理解したといったところか。すんなりと一応は筋道の通る推理が出来上がる。
「それでどうするの? ここが新生物の住処だっていうなら、中を捜索してみるってのも手だけど?」
そう言って空見が刀に手をかけ突入態勢を整えた時である。
「みなさん。引き揚げてください」
そこに稲嶺の護衛で新谷が飛び込んできた。
「ちょっと見張りはどうしたの?」
呆れながら部屋の入口に目をやる空見だが。
「すみません。私が中央に余計なことを言ったかもしれません」
「「「はい?」」」
彼女の謝罪に話の流れが読み取れない面々が答える。そこで稲嶺が補足を始めた。
「無人偵察機が自分たちのところに立ち入り禁止区域だってスピーカー使って言いに来たもんだから、新谷が『この場所が新生物の住処の可能性がある』って言ったんだよ。マイクが拾ってくれるだろうって」
「うん。それで?」
猪原が結論はまだかと言わんばかりに急かす発言。その結果、
「ただいまより自衛隊による空爆でこの建物を一掃します」
「「「逃げろぉぉぉぉぉ」」」
みんな急いで逃げ出した。さすがに味方ごとまとめて葬り去るようなことはやらないだろうが、それでも早く逃げないとどうなったものか分かったものではない。いくら新生物の攻撃を数発食らっても簡単には死にはしない頑丈な体の彼ら彼女らでも、空爆を耐えきれるほどの力はないのである。
2組連合の計8人は建物を出るなり辺りの警戒は欠かさないままに拠点へと全力疾走。立ち入り禁止エリアに入ったことでややお怒りの表情を浮かべる指揮官が8人を出迎えたところで、その上空を数機の自衛隊機が通過して行った。つくづくこういったことについてはお仕事の早い公務員である。




