第7話 穴場の飲み屋
「あの……これ弁償とかさせられないですかね?」
新谷が呆れた顔をしながら周りに見せるのは無線機。というのもおそらくは無人偵察機の映像を見たのであろう本部から、その場から離れるようにという指示のようなものがきたのだが、それを悟った空見が「てへっ。敵だと思っちゃった」と、新谷の後方にあった樹木ごと無線機を叩き切ったのである。なお籠谷の持っているはずの無線機については、戦闘中に壊れた……ということになっている。真相は不明。
「さぁ? どうかな。その時は自分も出すよ。1万円までなら」
稲嶺は半笑いでそのあたりに腰かける。
今現在、猪原・空見・籠谷・平安の4人が「敵の巣の香りがする」とかいうふんわりした理由で研究所(?)内へと突入兼調査を実行。他の残るメンバーは建物外部において新生物による急襲を防ぐとともに退路の維持を行う。と言う名目で邪魔が入らないようにしている。空見の嗅覚が正しければ必ずしもその邪魔は新生物とは言い切れないわけだが。
「稲嶺さん。本当にこの建物には何かあるんでしょうか?」
「どうかな。でも本部が入るな。というからには何かあるのかな?」
「何か……ですか」
「軍事機密のようなものかもしれないし、政治的な何かかもしれない。実は隠し遺産とかだったりして」
「それはそれで面倒ですね。なんなら即死級の毒ガスなんかの方がまだいいかもしれません」
額を指で押さえながらため息を漏らす新谷。
別に毒ガス相手ならどうとでもなると思っている化け物ではない。そんなもの吸ってしまえば彼女に限らず死んでしまうだろう。だがそれ以上に政治家というもの、厳密には権力を相手にすると面倒であるかを知っているからだ。ゆえに彼女は即死級の毒ガスの方がいいとまで言い切ったのである。
「じゃあ、毒ガスがあることを祈る?」
「それはそれで嫌ですね……」
「毒ガスで4人が死ぬか、政治的理由でみんな厄介ごとに巻き込まれるか。もう乗ってしまった船から降りられないけどどっちがいい?」
「どっちもごめん被ります。可能ならば毒ガスで4人が生きて帰ってくれれば」
「なんて無茶を」
なかなかに新谷は無茶を言う子である。曰く吸えば即死のガスを吸って帰ってこいというらしい。それも全員である。
「無茶だと分かってます。それでもそれが私の願いでもあります。何事もないと思いたいです。こんな時に国を守る使命を持った戦力4人を失いたくない。それに加えて……こんな新生物で大混乱の中、国がひっくり返るようなことはあってほしくありません」
「まぁもしかしたら機密だけど大した機密じゃないかもしれないよ。例えばそうだね……穴場の飲み屋情報とか?」
「それならマスコミに売り渡しましょう。私も協力します」
新谷もいろいろ振り回されてストレスが溜まっているのである。




