第5話 全チーム交戦
「飛んでる」
「飛んでますね」
リモコン飛行機が空見の上を通過。彼女が音に気付いて空を見上げると、新谷もつられて見上げる。
「本当に役に立つのかな? あれ」
「まぁあるかもしれませんし、ないかもしれませんね。ひとまず第一報として私たちから見て北東に大きいのがいるそうですが……」
右耳に付けたイヤホンからの通信を聞いた新谷が答え、横にいた稲嶺は方位磁針へと視線を落とす。回った方位磁針はすぐに赤く塗られた針が一定の方向を差して止まる。そこが北である……よって。
「むこうにいると」
「みたいですね」
猪原の一言に新谷はいつでも狙撃銃を使えるように準備。しかしながら今回の彼女はかなり戦闘の上で戦力と数えずらい。というのも場所は森の中。彼女が凄腕のスナイパーというなれば話は別かもしれないが、それほどでもない彼女にとってみれば森の木々など射線を塞ぐだけの障害物でしかない。それでも彼女がここにいるのは、単に他チームとの連携を目的とした、まさしくオペレーターとしての立ち位置なのだろう。
「これは近接戦闘の術を学んだ方がいいかもしれませんね」
そのことをしみじみと感じる新谷に、ふと稲嶺が刀に手を当てながらつぶやく。
「お望みなら剣術の稽古でも付けてあげるよ?」
「一度だけならやってみてもいいかもしれません。その時が来ましたらお願いします」
もっともあまり激しく動くタイプではない彼女が白兵戦を行ったところで、結局のところ自衛にしかならない可能性がある。なんなら変に刀を抜いて戦うよりも、背中を見せて逃げ回っていた方が自衛としてはいいとも考えられる。しかし試すだけなら損はないだろう。
「そろそろみたいですね」
そこで聞こえた獣の咆哮。新生物の寝床なのであろうあたりは木々が倒されていた。そこにいたのは……
「なんでしょう。あれは」
「虎」
「コウモリ」
「ヘビ」
以上、猪原・稲嶺・空見の予想である。端的に言えばヘビのような尻尾を持ち、コウモリのような黒い翼を持った虎といったところか。ただ翼があると言っても飛べるような大きさではなさそうなもの。飛べない翼と言われるとペンギンやダチョウを思い出すが、まさしくあれのようなものなのだろう。
「まぁ、やるだけやってみましょう」
膝を地面に付き、射線が遮られる中で戦闘準備を整える新谷。
「一番槍はもらったぁぁぁぁ」
「槍じゃなくて刀だけどね」
彼女の射線上に迷いなく飛び出る空見と、それを後から追うのは稲嶺。
「しゃあない。猪武者の援護は任せろ」
そして空見を猪扱いする、名前が猪の猪原も鉄棒を手に突入。
「こちら第12課。新生物との戦闘に突入。戦闘エリアはE-11地区」
『了解。援護の必要は?』
「判断が難しいところです。あまり大型とは言えませんが」
『だったら向かう。不要ならそれでOK、必要ならなおOK』
新谷からの通信を得た第9課が第12課交戦エリアであるE-11地区へと侵攻開始。直後に他2チームも連携して交戦に入ったことが通達。これにより本格的に当該作戦地域における戦闘行動が開始された。




