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夜明けの新世代  作者: 日下田 弘谷
第3章 海を越えて
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第6話 海迫る

 2人が凄腕のスナイパーであったならば話は別であろうが、決してそんなことはなかったのである。稲嶺の銃撃もその多くが外れ、新谷についてもまたしかり。特に新谷については射程の長い狙撃銃の使い手。いくら周りに車両がないと言っても、外そうもならば1キロ圏内のどこかには十分に着弾しうる。そうなれば民間人への被害も考えられるわけで、結局はセーブせざるをえなかったようである。


 犯人の車両は封鎖中の料金所をゲートごと破壊し突破。さらに地元県警の作るバリケードも強行突破。その後ろを追随する車両を警察が止めようとするが、天井には狙撃銃を構える新谷、窓からは箱乗り状態で拳銃を撃つ稲嶺、さらにスピーカーから空見の「どきなさい」の声。状況を察した警察は進路を開けて見送り、中にはパトカーに乗り込み追随を図ろうとする警察官まで。


「どうする?」


「まずいですね……」


「何が?」


 稲嶺と新谷がそこで銃撃を辞め、新谷が疑問の声を上げる。


「さっきまで封鎖中の高速道路だったから派手に撃てたけど、ここからはそうはいかない……ってことかな」


 猪原の答えに、サンルーフから顔を覗かせる新谷が頷く。なにせここからは一般人のうろつく市街地である。銃撃戦はおろかカーチェイスすら危ういほどである。


「えぇ。あとは相手の目的地で仕留めるしかありません。どこか分かりませんが。まぁ大方、海に逃げるつもりでしょうが」


「どうするの? 海にいかれたら私たち追えないじゃん」


「新谷。海自や海保には?」


「既に連絡はいっているはずです。しかしどこの港のどの船が彼らの目的の船かが分かりません。それに船で逃げると決まったわけではありませんし。ですが決して彼らも逃げるのは簡単じゃないはずです」


 新谷はあまりに難しい状況にも関わらず肯定的に事態を表す。


「ここは私たちの国。すべては私たちの味方ですから」


 しばらくしてくるといたるところで地元県警が道路を封鎖しているのか、街中であるにも関わらず交通量が少なくなってくる。さらにはパトカーを用いたバリケードのようなものをできているようだが、それらすべてを迂回したり、車が壊れるのも覚悟で強行突破を行ったり。


「う~ん、警察ももうちょっとしっかりバリケード作れないのかな?」


「あくまで減速が目的でしょう。相手もかなり無謀な運転を繰り返していますし、あまり強固なバリケードを作ることで歩道に逃げられるとそれはそれで危険です。民間人を巻き込んでは笑えない事態です」


 空見の愚痴に、銃に弾を入れながら答える新谷。そのあとで体を少しだけ起こしてあたりを見回した彼女はふと気づく。


「私の予想が正しければそろそろ目的地かもしれません……近接戦の準備を」


「なんで?」


 そう言いながらサンルーフから身を乗り出す空見は、前方から吹くすさまじい風に髪をたなびかせる。そして車内では稲嶺が刀の準備をしながら「良い子はマネしないでね……」とつぶやく。


「これは……潮の香り?」


「えぇ。もし相手の目的地が海。そこから船に乗ることならばおそらく」


 そう答えたところで相手の車が右に曲がる。その先の看板には地元の港の名前が書いてあり、道の両端には大量のコンテナが置かれている。新生物により海上封鎖が行われて大幅に人類の海運が封じられた現在とはいえ、軍艦を護衛に回せばまったく不可能ではないし、何より船による輸送力は他の乗り物に比べて段違いなのである。多少のリスクを背負っても海運は行われるものであり、それは今現在でも例外ではない。


「じゃあそろそろかな。降りる準備を……」


 そう口にした空見は車内に戻るなり、豪快にドアを開け放ち、さらに「邪魔」と言いながらドアを蹴飛ばして壊してしまう。完全に右側のドア1つをとってしまったあたり、止まり次第飛び出す気なのだろう。


「運転手さん。修理費は?」


「血税で」


「国民のみなさん、ごめんなさい」


 運転手のおじいさんは苦笑い。猪原は申し訳なさそうな顔で空見を見つめる。


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