第3話 外国使節
籠谷は現場でいじけていた。
どこのアニメを見たかは知らないが、彼曰く『戦うアイドル』とは「きらびやかでひらひらした衣装を着て、常に笑顔を欠かさずに、魔法のステッキ的なものか体術で戦うもの」だそうである。
さて、実際のところ『戦うアイドル』こと第3課はどういったグループだったかというと……
「普通ですね」
「普通だなぁ」
新谷と一緒につぶやく猪原。彼らは外国の軍艦の護衛によりやってきたという外国使節からわずかに離れた場所に立っていた。一方で使節や日本の政治家・外交官を囲むように近くに立っているのは第3課の構成員たる女子4人。
確かに同期のメンバーに比べると可愛らしさや清楚であるイメージ、落ち着きなどを感じられ、その点で言えば違いを感じられるものである。だが果たして『アイドル』と言っていいほどかはまた不明なところである。さしずめ『戦うアイドル』とは、他のメンバーと異なり「戦うことを本業としていない」もしくは「本業とできない」という皮肉の裏返しなのではなかろうかとも感じ取れしまう。
「でもあれくらいがいいのかもしれません。私たちが出て行っても、あの雰囲気を壊しかねませんから」
「それは納得」
猪原は自分の手に握られた鉄棒、加えて隣の新谷が抱える狙撃銃に目をやる。同じ課のメンバーで最も小型の装備が空見・稲嶺のまぁまぁ目立つ刀であるというのだから、確かにあんな感じの子たちが似合っているのかもしれない。なんならこの海上封鎖下にある世界では珍しい外国からの訪問者とあって、多少の民間人の姿も見られるのだが、彼らは猪原・新谷らの物騒な得物を前に目を泳がせているくらいである。
「新谷。本日の日程は?」
「私たちは彼ら使節と同じホテルに滞在いたします。ただ基本的に側近となるのは第3課の方々です。もっとも第3課は女性ばかりなので、男性への対応に猪原さんら、男性陣が駆り出されるかもしれませんが……」
「面倒くせぇなぁ」
「公務ですから諦めてください」
「残業代は?」
「もちろん出ます。遠征費割増、場合によっては深夜割増も」
「頑張る」
別にボランティアでやっているわけではないだけに、そのあたりはとても重要なことである。命を張っていたり、外交の最前線に立たされているのだから、それくらいの手当は欲しいところである。
「で、昼間は?」
「昼間は政治家さんたちのお仕事の時間です。なのでむしろ昼間は暇かと……まぁ、護衛くらいはありますが」
「新生物の問題はなかろう?」
「世間はそれをフラグと呼びます。まぁ、問題の可能性は低いかと。沿岸から離れますから。人為的な誘導や、他の班が取り逃した敵がこっちに迷い込めば分かりませんが」
「ふ~ん。じゃあ昼間は本格的にやることがないのか」
「えぇ。ないと思いますよ? ……昼間は」
「新谷?」
「何か嫌な予感がするんですよね……」




