第1話 2度ある護衛は3度ある
「新しい任務です」
全員が集まった部屋で新谷が言葉を発する。稲嶺が怪我から復帰してしばらく経っているため、彼も元の調子を取り戻しつつある。そこで本格的な新生物の討伐任務も与えられつつあるのだが、果たして今回の任務は。
「警備任務です」
「またぁ?」
それを聞いた空見はやる気なさそうに机に伏せる。
彼女はそんな態度を見せるが、薄々勘付いていたことである。というのも新生物討伐は基本的に、敵が現れてから現場に急行する対処的な任務である。今回のように悠々としているところに、のんびり伝えられる任務は計画的な任務。その9割以上は警備任務となる。もちろんたまには敵の根城に攻め込むような超大規模攻勢のパターンもあるにはあるが、彼らはそうした任務に参加したことがない。
「でも警備任務は討伐より楽ですから。私も戦闘は苦手なので助かります」
「敵を斬れないのは退屈だけど、まぁいいか」
「今回は安全だな」
「コラ。3人とも、絵にかいたような死亡フラグを立てるんじゃない。今までの任務を思い出しなさい」
空見は顔をあげて3人にくぎを刺す。
政治家護衛においては敵からの襲撃を受け、沿岸警備においても敵からの襲撃を受けている。つくづくついていないメンバーなのである。
「ただ今回は複数班による合同作戦となります。第3班ならびに第12班が協力相手です」
「12って言えば、あの大剣使いのいる場所よね」
空見の言う大剣使いとは、小柄な体で大剣を振り回す平安かなみのことである。新世代屈指の攻撃力を誇る一方で、重量のある武器のせいで機動性・防御性に難がある。そのため機動性と防御性に誇る猪原と戦術的に相性がいい相手である。
「3班ってどんなところ? 方向性とか」
「そうですね……あまり戦闘方面には目立った話を聞きませんね」
新谷は落ち着いた様子で答える。
4人1組の構成が一般的な新世代の部隊だが、その部隊能力は班によって大きく異なる。圧倒的な攻撃力を誇る班の他、機動性に優れる班や、汎用的な班もある。そして中には新世代としての力を授かってはいるが、一般人と一線を画すというほどでもない部隊もある。そのひとつが3班である。それでも一軍事部隊としての攻撃力を有する点は侮れないが。
「ということは有事の際には僕らと12班で対応か」
「はい。そのための遊撃能力の9班、攻撃力の12班でしょうか」
後方支援要員・新谷に加え、機動性のある軽装備のメンバーが揃い、独力で任務遂行が可能な遊撃能力・自立能力に特化した9班。重装備ゆえに機動戦は苦手だが、大剣使いの平安を筆頭に飛びぬけた攻撃力を誇るメンバーが揃う12班。万が一の事態が起きた時にはこの2班で対応、どうしても手が足りなくなった場合に3班が出動するというのが考えうる戦略か。そのあたりは各班のトップが話し合うところであるため、猪原らが口を出すことではない。
「質問」
「はい、なんでしょう?」
稲嶺が挙手して新谷に問う。ここまでおかしな方向に話が盛り上がってしまった関係で、聞き逃していたことである。
「護衛対象は?」
「それは……外国からの使節です」




