願いをつかめ、想いを解き放せ②
「す、すごいっ! こんな精霊は見たことがありません!」
「テーブルもイスも、ピカピカ……! アリスの魔法、すごいわね!」
綺麗になったお店を見て、アリスの両親はどよめく。
一息ついたところで、私は改めて、本題に入った。
「次の課題は、新しい料理なんだけど、いくつか出したいものがあるわね。その宣言方法なんだけど、魔道具を用いて、テレビ番組を放送したらいいんじゃないかなと思うの」
「テレビ番組を?」
私の言いたいことが分からなくて、アリスは首をかしげる。
「大精霊はね、自分と同じ属性の眷属(精霊)を生み出すことができる。しかも、現代知識があるからか、私は『日本にあるものを具現化した存在』を呼び出せるの。『お掃除ロボットのような容姿の精霊さん』や『テレビの精霊さん』とかね」
「えっ? 日本にあるものを具現化した精霊を呼び出せるの?」
「うん。物質変化に近いものがあるかな! テレビの精霊さんは、テレビを精霊として具現化させたような感じね」
アリスの問いかけに、私は堂々と胸を張る。
規格外なのは私だけではない。
11人の私は、誰もがチートな能力を持っている。
全員がそろえば、恐らく世界そのものを揺るがすことになるだろう。
「だから、時間はかかるけれど、テレビの精霊さんをもとにした『魔道テレビ』をいろいろな場所に配置して……。あとは受信用の魔道具を使って、電波を受信すれば、世界各地に『私たちだけの特別な番組』を放送することができるの!」
「……すごい! すごいわ! これはとてつもない可能性を秘めた力ね! 村の紹介や食レポとかしたら、盛り上がりそう!」
日本の料理を堪能できると知って、アリスは歓喜する。
アリスの前世は、私と同じ人物の女の子、日本人の高校一年生だ。
これまで食堂で、日本の料理を披露したことはあったんだろう。
だが、異世界『アルトクラン』には、食材や調味料などが足りない。
砂糖、醤油など。
日本にあるものが、この世界にはないのだ。
作りたくても、作れなかったものもあるのだろう。
でも、私の精霊の力を使えば、その問題を解決することができる。
私が、この村に来た意味はちゃんとあったのだ。
この世界の料理は、転生の間で食べたことがある。
味やクオリティの差は、想像に難しくない。
「魔道具は、サフランくんにお願いしたらいいかな」
魔道具は、この世界の生活で必要不可欠な道具だ。
生活のあらゆる場面で、魔道具が活躍しており、重宝されている。
サフランくんは、この村で唯一の魔道具工房を営んでいる。
以前、ルージュ王国の魔道具師ギルドで働いていたみたいだし、腕は確かだ。
でも、ギルドでは身分差が影響にして、肩身の狭い思いをしたようだ。
仕事を押しつけられた結果、無理やり工房を追い出されてしまったらしい。
ルージュ王国って、ジルハルト殿下の浮気の件といい、良い噂を聞かないわね。
でも、そのおかげで、私たちはこうして、優秀な魔道具師の力を借りることができる。
そう考えたら、一気にワクワクしてきた。
これからの展望が少し見えてきた気がする。
テレビ番組放送による宣言と日本料理のお披露目。
そうやって実績を作って信頼されれば、多くの人たちが、この村に足を運んでくれるようになるかもしれない。
「他では、なかなか食べられない料理だし、食堂が生き延びるための戦略としても期待できて一石二鳥。我ながら、名案かもしれないわ!」
その後も、私とアリスは惜しみなく、今後の課題を議論していった。
お店の経営のためにできること。
村のためにできること。
それをこともなげに話していった。
そのことが、私の提案を信じるに値する根拠となって積み重ねていったようだ。
「テレビというものはよく分かりませんが、そのような宣言方法があるんですね!!」
「テレビの精霊さん。是非、会ってみたいです!!」
先程までの不安は、すっかり消え去ってしまったようだ。
初めて知ることのオンパレード。
アリスの両親は大興奮で、まぶしい笑顔を浮かべていた。
それでも不安は拭いきれなくて、私はおそるおそる尋ねる。
「この提案を信じてくれるんですか?」
「アリスの友達で、この食堂のために一生懸命に考えてくれる。それだけで信頼に値するよ」
「あ、ありがとうございます……!」
こんなにトントン拍子で、いい方法に進むなんて。
アリスの両親は、なんて素敵な人たちなんだろう。
こんな人たちを追い込むなんて、ジルハルト殿下はひどすぎる。
聖女の加護を失ったルージュ王国は衰退の一途をたどるかもしれないけれど、悪いのは浮気して婚約破棄したジルハルト殿下だ。
自業自得だろう。
今後の説明が一息ついたところで、アリスは本題に入った。
「アウリ。そういえば、食堂で新しく出したいものがあるんだよね?」
「うん。ナポリタンやミートソース、うどんやラーメンなどの麺類を出してみたいわね」
私は新しいメニューについて、考えを巡らせる。




