願いをつかめ、想いを解き放せ③
「素敵! オムライスやドリア、クレープやケーキも人気が出そうね。前に、パンケーキを出したことがあるんだけれど、すごく好評だったの!」
「ええっ!? そうなのね!」
アリスの言葉を聞いて、ぐっと期待感がふくらんだ。
アリスが言うように、スイーツは人気が出るかもしれない。
手軽に食べられて、人目に引くもの。
パンケーキが好評なら、クレープも人気が出るかもしれない。
前世の時も、よく食べていたよね。
作り方はうろ覚えだけど、実際に作ってみようかな。
「よし、出てきて! 冷蔵庫の精霊さん!」
私は両手を広げて、精霊を呼び寄せる。
『お呼びですか? 星を司る大精霊、アウリス・クロエ様』
私の呼び声に従って、小型の冷蔵庫のような精霊さんが目の前に姿を現した。
「クレープを作りたいの。卵と牛乳、フルーツを出してもらえる?」
『かしこまりました』
私は冷蔵庫の精霊さんを呼び出して、必要な材料を出してもらう。
精霊の力を借りれば、材料や調理機器などを調達しなくてもいいので、コスト削減につながる。
さらにアリスの聖女の力を使えば、その料理を食べただけで傷が癒えたり、病気予防にもなる。
お店に客が来るようになれば、大繁盛になることは間違いないだろう。
「クレープか。初めて聞く料理だな」
アリスのお父さんは初めて聞く料理に、料理人魂に火がついたのか、楽しそうだ。
卵と牛乳、小麦粉を混ぜて生地を作り、熱したフライパンで焼いていく。
小さく切ったフルーツをたっぷり乗せて、その上に泡立て器でふんわり泡立てた生クリームを乗せた。
「これを巻いたらいいのかい?」
「うん、お父さん」
アリスの説明を聞きながら、アリスのお父さんはくるくると生地を巻いていく。
「よし、完成!」
「とてもおいしそうね!」
出来上がると、私たちは席について早速、試食してみた。
生クリームとフルーツたっぷりのクレープは、華やかで見栄えもいい。
「おいしい!」
「うん! クレープ、最高!」
一口かじると、口の中に幸せが広がっていく。
生クリームとフルーツが、絶妙なハーモニーを奏でている。
しかも、食欲をそそる柔らかな香り。
お腹も心も満たされて、私とアリスの表情がぱあっと花咲いた。
「パンケーキもおいしかったけれど、これもおいしいな! 身体が、芯から温まるようだ!」
「甘くてとろけるような味ね!」
アリスの両親も気に入ってくれたようだ。
満足感に満たされているみたい。
大変な時こそ、おいしいものを食べる。
これが心を折らないで生きるコツだ。
「よし、新しくメニューに出すクレープの方は準備万端ね。問題は、お店の宣言よね!」
私は女神様専属の異世界TVのアナウンサーをすることになってから、この世界の食事情を調べ回った。
大衆食堂や高級料理店まで見て回った。
とは言っても、実際に食べ歩いたわけではない。
女神様に、今の食事情を報告するためだったから、店内の様子をのぞいていただけだ。
だけど、やっぱり、実際に食べてみたかったので、女神様に報告した後、呼び出した精霊さんにこっそり頼んで、同じ料理を出してもらっていた。
で……結論、肉は固い。
それに味付けはシンプル。
手の込んだ味付けはしていない。
やっぱり、日本にあるものが、この世界にはないからだろうか。
なら、日本の料理を作ったら、一大ブームになるかもしれない。
もっとも、別の私が、既に日本の料理を作って広めている可能性は高いんだけどね。
「こんにちは……ってなんだ? それ?」
その時、サフランくんがお店に入ってくる。
ベストタイミング!
ちょうど、魔道具のことで相談したいと思っていたんだ。
「サフランくん、ちょっと話できないかな?」
「アウリ様が、俺に話?」
私の言葉に、サフランくんが不思議そうに首をかしげる。
「うん。まずは、このクレープを食べてみて」
「クレープ? 食べ物なのか、これ?」
私が手招きすると、サフランくんはまじまじとクレープを眺めた。
「ほら、食べてみてよ、サフラン。絶対に気に入るから!」
「……ああ」
アリスの後押しに、サフランくんは席に座ると、おそるおそるクレープをかじる。
「なんだ!? すごくうまい!」
「美味しいでしょう。愛され食堂の新しいメニューの一つなの!」
サフランくんの瞳がぱあっと輝く。
私は嬉々として、話を進めていった。
「私たち、新しいメニューの追加と、この食堂のことを宣言しようと思っているの。でも、そのためには、サフランくんが造った魔道具がどうしても必要なのよ!」
「俺の……!?」
予想外すぎる誘い。
呆然とするサフランくんに、私は先程、みんなに話した内容を復唱した。
テレビ番組放送による宣言と日本料理のお披露目。
ひととおり話し終わった私が視線を向けると、サフランくんは呆気に取られていた。
壮大な計画になったことで、話についていけなくなったのかもしれない。
動揺をごまかすように、サフランくんはコホンと咳払いして、私たちを見つめてきた。
「思っていたより、話のスケールがでっかくて驚くことの連続だ……。そもそも、大精霊様は希少で、この世界にほとんどいないと聞いている。非常に、高位な存在……」
サフランくんは唸りながらも、さらに言葉を続ける。




