果てなき空の精霊歌⑩
「なら、今回の放送のもう一人の主役はジルハルト殿下で決まりだな!」
元使者さんによる目玉イベント、『ルージュ王国の王家のここが変だよ』という、暴露トークショーも控えている。
そのメインゲストが、王都で暗躍している。
そうと決まれば、もはや、迷いはなかった。
ジルハルト殿下の再起の暴挙が、歓迎会を大きく盛り上げていくことになるのだった。
*
新たに、ラトレ村の新住民になった元使者さんの歓迎会。
その放送は、世界中の視聴者たちを次々と虜にしていった。
今回のテレビ番組の受信場所は、ルージュ王国も含めた世界全体、そして、異世界TV推しの女神様がいる転生の間だ。
「今日の放送は、絶対に見逃さないようにしなくちゃ!」
『現地取材版の異世界TV』をすっかり気に入った女神様は、今日も全力で推し活中だ。
『こんにちは。皆様、いかがお過ごしでしょうか』
画面中央にはマイクを持った、異世界TVのアナウンサーの私が映し出された。
今回の番組の進行場所は、ラトレ村の広場にしている。
多くの観光客たちが、今回の放送を見れるように、広場には魔道具を用いた『大型ビジョン』と『特設ステージ』を設置していた。
『今回の異世界TVは、新たにラトレ村の新住民になった元使者さんの歓迎会をお届け! 思わず驚くインパクトのスペシャルゲストや、ちょっとやりすぎてしまっている暴露トークショーなど、楽しい企画が盛りだくさん! さらにその味を求め、観光客が足繁く通う、旬の味が楽しめる屋台もご紹介します! 最後までお見逃しなく!』
「おっ、始まったな!」
その響き渡った声に、放送を今か今かと待ち構えていた人たちが、大型ビジョンに目を釘付けにする。
私はマイクを片手に、丁重に今回のビッグゲストをお招きした。
『それでは、本日のスペシャルゲストのご入場です!』
『私はゼルトリア・フリク・ルージュ。ルージュ王国の国王である。我が息子、ジルハルトの厳重な謹慎を破らせ、王城から王都まで誘導した者たちがいる。その者たちを判明させるために、無理を言って参加させてもらった』
「うわぁ、本物の国王陛下が出てきたよ……」
「ジルハルト殿下、何をやらかしたんだ?」
ビッグゲストの登場に、世界中で大反響が巻き起こった。
『まずは口コミでじわじわと人気が広がる、ジルハルト殿下のサイン入りのルージュ王国の機密文書。ついに明かされる、その内容とはいかに!?』
私が宣言すると、画面がジルハルト殿下がいる王立学園の卒業パーティーが行われた会場が映し出される。
画面端には、『ジルハルト殿下、再起の暴挙の前に、機密文書暴露の危機!』というテロップが表示された。
『それでは、世界中の皆さん、お待たせしました! お待ちかねの機密文書の抽選結果が出ました!』
「待っていましたーー!!」
その一声に、抽選結果待ちの人たちは一斉に歓喜に湧いた。
精霊さんたちも協力して、最高のカメラアングルや「パンパカパーン」とクラッカーを演出する。
『なんだと! もう、抽選結果が出たというのか!?』
会場に配置されていたテレビで、この放送を見たジルハルト殿下は、自分の企みが見抜かれた上に、世界中で見せものにされていると知って怒り狂っていた。
『では、どうぞ!』
『ありがとうございます』
私は順次、当選した人たちに機密文書を進呈していく。
その内容を見た人たちはみな、驚きの表情に染まった。
『なになに……。国の宝飾品を勝手に売り払って、遊興費の足しにしていただと? しかも、その罪を聖女になすりつけていた!?』
『聖女がもらうはずだった多額の報償金を横取りして、想いを寄せる公爵令嬢のためのプレゼントに費やしたらしいぞ!』
『なんと、愚かな行為を……』
国家転覆となりうる証拠の数々に、主賓として招かれていた王様は頭を抱える。




