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果てなき空の精霊歌⑨

「もったいない言葉です……!」


そう言うサフランくんの目にも、光るものが浮かんでいた。

王様はアリスと向き合うと、心苦しそうに告げる。


「聖女アウリス・リネット。我が息子によって、不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ないことをした」

「こちらこそ、前回の放送では、やりすぎてしまって大変申し訳ございません」


王様の厳かな言葉に、アリスは裾をつかんで丁重に一礼した。


「ご寛大な言葉を頂戴し、感謝する。此度、ジルハルトの廃嫡が決まった。今回の件の片棒を担いでいた公爵令嬢リリア・フェラーリは王宮に出入り禁止となり、公爵家での謹慎を命じている。二人には、相応の罰を与えるつもりだ」

「……ありがとうございます」


王様の言葉に、ようやく報われた気持ちになったのだろう。

アリスの表情はどこか晴れやかだった。

しかし、万事が順風満帆というわけでもない。

魔の手は、そんな美しい光景を引き裂くように迫り来る。


『星を司る大精霊、アウリス・クロエ様。ジルハルト殿下に不審な動きがありました』


その時、テレビの精霊さんが会話に入ってくる。


「不審な動き?」

『こちらをご覧ください』


私は言われるままに、テレビ画面を眺める。

映し出された場所は、ルージュ王国の王都。

そこは王立学園の卒業パーティーが行われた会場だった。


『ジルハルト殿下が謹慎を破り、密かに残った数名の部下たちとともに、機密文書の回収と、アウリス・クロエ様を強引に捕獲しようとしているようなのです』


この報せは、私たちの心に大きく、揺さぶりをかけるものだった。

周囲が、緊張に包まれる。


「なんと愚かなことを……。大精霊様を捕獲しようなど、決して許さないことだというのに……」


テレビの精霊さんの報告に、王様は息子への失望を隠し切れなかったようだ。


ジルハルト殿下との対立。


やはり、どうあっても、その現実は曲げられないんだ。

そんな私は踊り出しそうなくらいに、心が弾んでいる。

その理由は単純。

ジルハルト殿下が、今回の歓迎会の盛り上げ役をかって出てくれたからだ。

思わずこぼれた笑みは、自嘲の色が籠っている。

大変な事態なのに、そんなことを考えてしまうのは、異世界TVのアナウンサー兼レポーターとしての職業病なのかもしれない。

それでも、ジルハルト殿下を、今回の歓迎会を盛り上げる『主賓の一人』として迎えたい。

追い打ちをかけてきたジルハルト殿下に、私たちがするべきことは決まっていた。


「よし。ジルハルト殿下に、勇者の力というものを見せてやろう!」

「我々は、いつでもジルハルト殿下たちを包囲できるぞ!」


勇者リスアと魔王ウリはやる気満々。

どちらも、あらゆる名声を誇る、恐ろしい力の持ち主。

最強の二人が並び立つ姿は圧巻だ。

ジルハルト殿下を追い詰めるくらいで済めば、御の字としよう。


「息子のしたこと、大変申し訳ない。城内から出られないように厳重にしていたのだが、どうやら手引きした者がいたようだ」


王様の言葉に、私ははっとする。

そういえば、前にもジルハルト殿下は、王立学園の卒業パーティーが行われた会場にいた。

恐らく、あの時も手引きした者……、ジルハルト殿下側の派閥の者たちと落ち合っていたのかもしれない。


「この度は、愚息が多大なる迷惑をおかけして申し訳ない。私たちは全面的に、そなたたちに協力しよう」


どんな責め句も、甘んじて受け入れるつもりなのだろう。

事態を重くみた王様はそう口にした。


「なあ、アウリ、アリス。ジルハルト殿下は、今回の歓迎会の主賓の一人だよな?」


勇者リスアが、かなり率直に的を射た質問をしてきた。


「ええ。メインゲストと言っても過言じゃないわね」


ジルハルト殿下たちの動向を見た感想をもとに、所感を述べる私。

すると、勇者リスアは納得したようにうなずいた。

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